伝承地底世界アガルタII−16


ついに、エルドラドの襲撃が始まった。
イースから鹵獲した魔術仕様の船によって、川の遡上も容易にできる。ジャングルを突き抜けていく道中、いくつか関所はあったが、すべてつつがなく破壊して進むことができている。

やがてジャングルの前方に、黄金郷の巨大なピラミッドが見えてきたときだった。

突然、川の中から巨体が勢いよく姿を現した。全身に押し寄せる緊張感と威圧感、ビリビリと震える空気。
川の水は噴き上げられて雨となって降り注ぎ、太陽を遮る巨体を呆然と見上げるレジスタンスたちを濡らしていく。

それは、ヘラクレスの変質した姿、メガロスだった。不夜城でアサシンを押しつぶした神性だ。


「くそったれが、偶然か!?」


船の舵を取るライダーは悪態をつく。すでに剣を構えたデオンとアーサーは迎撃態勢を整えており、ギルガメッシュとアーラシュも泰然としている。


「こいつどかさなきゃ船ごと沈む。立香、迎え撃とう」

「そうだね。デオン、アストルフォお願い!」


デオンとアストルフォは、立香の指示ですぐに飛び出す。同時に、メガロスはその巨大な腕を川の中から振り上げた。その手には、巨大な円形のチェーンソーのような斧を持っており、腕を振り上げた動きだけで川の水は津波のように波打った。
大きく船が揺れ、唯斗はアーラシュに抱き留められる。揺れをものともせずにアーサーも跳躍すると、その見えない聖剣でこちらに迫る斧を跳ね飛ばした。体格差などまったく関係ない。

いまだ船が上下に大きく揺れる中、ギルガメッシュは空中の門から天の鎖を出現させると、メガロスの斧を持った右手を拘束する。神性が高いほどこの鎖からは逃れにくくなる。
その隙に、デオンとアーサーが腕の上を駆け上がってメガロスの頭に迫った。アストルフォもヒポグリフによって注意を引く。

しかし、メガロスは突然咆哮を上げると、その気迫だけで全員を吹き飛ばした。

アーサーとデオンは船に着地し、アストルフォも空中で体勢を立て直す。
さらに、メガロスは斧を左手に持ち替えると、右手を拘束されたままこちらに振りかざした。

船に向かって振り下ろされた斧を、ギルガメッシュの結界が受け止める。しかし、それでも衝撃が伝わり、船は波によって大きく流された。
それによってメガロスから距離はできたが、力の差に愕然とする。ギルガメッシュも拘束を外した。


「…まずいな、」


唯斗は戦力差に呻くように呟く。レジスタンスの男たちを先に行かせることさえできればエクスカリバーが使えるのだが、そんな隙がない。

すると、ライダーが凪いだような声で立ち上がった。


「…まるで、嵐のような野郎だな。あぁ、知ってる。知ってるぜ、俺は嵐を知ってる。ハッ、おかげで思い出したぜ。俺が何度もそれを何度も乗り越えてきたってことをな!」

『特殊な魔力パターンを感知!これは、ライダーさんが、宝具を!?』


ライダーの周りに魔力が集積されていく。真名を忘れていると宝具は使えないはずだが、これは、思い出したということだろうか。


「邪魔すんじゃねぇ。俺が辿り着くべき新天地は、もうすぐそこに見えてるんだからよォ!見るがいい!こいつが航海の終極にして到達の第一歩!新天地探索航(サンタマリア・ドロップアンカー)!!」


そうライダーが叫んだ瞬間、船の右側に別の立派な船が姿を現した。魔力で構成された近世の長距離用の船だ。
その船から、大量の錨が射出される。禍々しい魔力も帯びて、錨はメガロスに巻き付いて動きを封じていく。

サンタマリア号、それはコロンブスの最初の功績となった船の名だ。


「……コロンブス、」

「あぁそうだ。俺の真名は、クリストファー・コロンブスだ」


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