伝承地底世界アガルタII−17
メガロスとの戦いは、思わぬ形で中断された。
なんと、エルドラドのバーサーカーが急にやってきて、割り込み戦闘を勃発させたのである。
バーサーカー2騎を相手取るという混戦の末、両者の激しい戦いに巻き込まれる形で船は大破。
立香とそのサーヴァントたち、およびコロンブス、シェヘラザード、メガロスは川を流されてしまった。
唯斗はなんとかアーサーに助け出され、アーラシュとギルガメッシュも男たちの半分ほどを船から脱出させてくれていた。
メガロスもいなくなったことで、いったん岸に上がってギルガメッシュの気配遮断の結界によってアマゾネスたちからも姿を隠す。
咳き込む男たちの数を数えながら、唯斗は濡れた礼装が纏わり付く肌を気持ち悪く感じる。
「すまないマスター、君しか助けられなかった」
「大丈夫、助かった。残りの奴らも大丈夫だと思うんだけど…マシュ、聞こえるか」
『はい、先輩とサーヴァントの皆さんの反応は追えませんが、存在証明は問題なくできています。また、バイタルも問題ありません』
「生きてるならなんとかなる。俺たちもしばらくはここで待機だな」
ここまで状況が悪くなってしまえば迂闊に動けない。男たちも疲弊している。
「で、あのバーサーカーはペンテシレイアで確定ってことで良さそうだな」
『そうだね、アキレウス、とはっきり憎悪の対象として述べたし、メガロス…ヘラクレスをアキレウスと誤認するほどの見境のなさだ。逸話から考えればペンテシレイアで確定だね』
ダ・ヴィンチも今度は肯定した。
先ほど、ペンテシレイアはアキレウスへの憎しみを口にしながらメガロスに突っ込んでいった。そのことからも、トロイア戦争の折りにアキレウスに貶められた恨みを持つであろうペンテシレイアがバーサーカーとして現界しているのは自然だ。
「アキレウス連れて来てたらやばかったな…」
「不幸中の幸い、と思おうか。それにしてもマスター、僕らだけで先行しなくて大丈夫かい?藤丸君たちがいつ合流できるか見通しが立たないだろう」
アーサーは対岸の先に見えている黄金のピラミッドを見据えてそう聞いてきた。唯斗も森の向こうに聳える金塊を見ながら思案するが、首を横に振った。
「ペンテシレイアだけなら俺たちでなんとかなるけど、純粋に数が多すぎる。手が回らない。それに、市内には男たちもたくさん幽閉されてるって話だし、迂闊にエクスカリバーで吹っ飛ばすわけにもいかないからな」
「なるほど。確かにそうだ。では待機だね」
「あぁ。そうだアーラシュ、霊体化してこの辺を見てきてくれないか。特に、対岸に渡って市内に進むルートを事前に把握してもらえると助かる」
「お、了解。マスターはここで休んでな」
アーラシュはニッと笑うと、すぐに姿を消して森の中へと入っていった。任せきりなのは忍びないが、唯斗も少し休憩しておくことにする。
それを察したアーサーは、すぐに鎧を消して地面に座る。
「さ、こっちにおいでマスター」
「汚れ…ないか、霊衣は」
「そうだよ。気にせず座るといい」
新宿のときと同様、アーサーは青い霊衣の長い裾を敷物のようにしてくれており、その足の間に腰を下ろす。
アーサーに凭れても、アーサー自身は何にも背を預けていないにも関わらず唯斗の体重を支えてくれていた。
こうしているだけでほっとした。
「随分と傅くのが様になるではないか、騎士王」
それを見ていたギルガメッシュは、木の幹に寄り掛かりながらからかうように言った。実際からかっているが、アーサーは気にしていない。
「確かに私は王だがサーヴァントだからね。何より恋人だ。大事にして何か問題でも?」
「アーサー…!」
いまだにアーサーの口からこういうことを言われるのには慣れていない。
『…?唯斗さん、心拍数が急に上昇しましたが、何かありましたか?』
「なっ、んでもない」
『そうですか、それならいいのですが…』
マシュの後ろでダ・ヴィンチが噴き出すのが聞こえてきた。ギルガメッシュも肩を震わせている。
思わず声が裏返った唯斗だったが、清廉なマシュに無垢な指摘をされてしまうのは、あまりに居たたまれなかった。