悪性隔絶魔境新宿I−14
ジャンヌと合流してからすぐ、ライダーだという巨大なオオカミのサーヴァントとの戦闘となったが、倒しきることはできなかった。
しかしこのサーヴァントが首なし騎士デュラハンと狼王ロボの混成サーヴァントだと明らかになり、ロボは大きなダメージを負ってしばらく動けないであろうことから、他の敵性サーヴァントを倒しに行くことができるようになった。
さらに、ねぐらに戻ったところで再び電話が鳴り、エドモンから立香がまた情報を得た。
その話では、都庁の代わりに立っている巨大な建物は銃身であるらしく、悪性のアーチャーはこれを使って地球を滅ぼそうとしているという。また突拍子もない話で、そもそもあの大きさの銃身など、銃弾やその発砲エネルギーはどうするというのか。たとえ魔力で補うにしても、それこそ聖剣なみの力が必要だ。
とはいえ謎ばかりなのは今に始まったことではない。この特異点はそういう場所だ。
まずは敵を減らさなければ。
「あ、そうだ。あと、新宿のアーチャーは信用するなって」
「なんと!」
「なんて妥当なアドバイスなのかしら。もはや意味深でもなんでもないわ」
「不本意ながら貴様の意見に賛成だ」
立香は受話器を置いて一通り話してから、最後にアーチャーについてそう告げられたことを教えてくれた。
それに対して、ジャンヌもアルトリアも淡々とそう返す。ちなみにジャンヌは新宿という街に合うように服装を変えていた。そもそも人間ではない者も闊歩しているのだ、単にアルトリアのようなロックな服装にしたかっただけなのだろうが、誰もそれは指摘しなかった。
「ま、まぁ、マスターはどうやら私を信じてくれているようだからね、いいのだよ」
「一応ね」
「俺は立香を信じてるだけだし」
「うーんドライで結構!では、信頼を高めるために新宿のバーサーカーを打倒するとしよう」
うさんくさいこの男を信じることはないが、唯斗は彼を信用すると決めた立香を信じている。そしてアーサーはそんな唯斗を信じてくれていた。
アーチャーは特に気にしたようでもなく、バーサーカー、ファントムを倒しに行くにあたり、知っている情報の共有に入った。
「歌舞伎町に常駐するコロラトゥーラは約200体。それとは別に100体が定期的に新宿区を巡回している」
「薄いものだったとはいえ、俺の結界を瞬時に破ってきた魔術人形だ。その物量じゃ、俺と立香が逃げ切るのは難しいな。歌舞伎町は直線の道しかないから逃げ場もない」
三丁目交差点で交戦したとき、コロラトゥーラたちは唯斗の結界を破る程度には強く、バビロニアの魔獣なみだった。
また、歌舞伎町は碁盤の目状の区画であるため、囲まれたら逃げ場がない。
「そういうこと。サーヴァント4体ではマスター君たちを守り切れない。それでは次だ。200体のコロラトゥーラは、歌舞伎町をぶらつきながらスピーカーから流れる歌に聴き入っている。クリスティーヌの歌にね。彼女が歌い終わるたび、コロラトゥーラたちが拍手する。彼らは基本的に、24時間それを繰り返す」
『わお、それはひどいブラック労働だ』
『唯斗さんは、レイシフト直後にコロラトゥーラと交戦しています。アーサー王がそのとき相当数を削っているのでは?』
カルデアのダ・ヴィンチとマシュも一緒になって解析を進めてくれており、マシュは過去のログを確認する。
それに対して、アーチャーは読めない表情になる。
「それが、36時間以内に必ず100体に戻っているんだ。不思議なことにネ」
「100体揃っていることが存在定義だから、っていうなら即座に復帰するはず。36時間ってことは、補充してるのか。魔力はどっから来てるんだ…?」
唯斗はどういうことかと考えるが、アルトリアとアーサーは表情を少しだけ険しくした。アーチャーは咳払いして話を続ける。
「ここでもう一つの情報だ。巡回を任されたコロラトゥーラは、定期的に人を攫っている」
『なぜですか?』
「さあ、まぁ大方想像はつくがネ。さて、作戦についてだが、正面から攻める以外に誰か思いついた者は?」
コロラトゥーラが人を攫っている、という話に嫌な予感がした。殺さないのはそうする理由があるからだが、生きた人間を誘拐するのであれば、十中八九良くないことに使われているはずだ。
だが話は続いているため、とりあえず唯斗は提案する。
「アーサーのエクスカリバーを思い切り解放して、歌舞伎町ごと吹き飛ばすのは?」
「うーん、それでもバーサーカーたちは生き残るだろう。それに、この新宿区は全体的に異常をきたしている。1999年の東京には不釣り合いなほど魔力が渦巻き、今の新宿はビルにすら魔力が籠められている。聖剣でも更地にするのは難しいだろう」
「そうか、そんな気はしていた。私のエクスカリバーでも同じだな」
もはやビルの一つまで宝具のような魔力構造になっているようで、アーサーやアルトリアの聖剣を以てしても破壊できないらしい。これだけ異常が起きているのに街があまり壊れていないことが気になっていたが、理屈は分かった。
「あらー、認めちゃうんだー?自分が弱いって認めるのは勇気がいるものよねぇ?」
「貴様の宝具もボヤ騒ぎを起こすだけだぞ」
「あんた一人を消し炭にするには十分だけどね?」
「「………」」
「はいはいどうどう」
ことあるごとに一触即発になるアルトリアとジャンヌを、早速慣れたように立香が諫める。アーサーも苦笑していた。
アーチャーは二人の火花が収まったところで「私から提案がある」と告げた。
「まずはコロラトゥーラを一体、無傷で持って帰ってきて欲しい。まずは人形を通して、幻想と人形の領域たる歌舞伎町の様子を見てみないとネ」
「ったく、面倒臭いわねぇ」
「私は買い物をしなければならないから別行動だ。商売人がその手のものを売っているのでね」