伝承地底世界アガルタII−18
2時間ほどが経過した頃、おもむろに立香の通信が回復した。
ほぼ同時に、離れた川の中から巨体が立ち上がる音が響いてくる。
全員でそちらに向かって移動を始めながら話を聞くと、なんと立香たちは川を流された果てに竜宮城に辿り着き、そこでミニ聖杯のような魔力リソーズ「玉手箱」を手に入れ、メガロスを制御し、戻ってきたというのだ。
さすがの唯斗も「なんだそれ」と言ってしまったが、立香たちが現れた地点まで到着すれば、確かにメガロスは言うことを聞いて歩いているように見えた。
しかし、そのメガロスの制御権を持っているのはコロンブスだという。
渋い顔をする唯斗に、アーサーは肩を軽く叩いて励ましてくれた。
今はとりあえず、唯斗たちも対岸に渡って立香たちとエルドラドに殴り込むときだ。
アーラシュが事前に見つけてくれていた橋から黄金の都市に向かって走りながら、唯斗は立香と簡単に通信で打ち合わせ、行動を決定した。
デオンとアストルフォが、玉手箱を使って千人のアマゾネスを相手取るとのことなので、唯斗は市内にいるであろう男たちを解放しつつ、二人が討ち漏らしたアマゾネスを叩いていくことになる。
なお、ペンテシレイアにはアーサーとアーラシュもつけている。二人とも単独行動が可能なためだ。
唯斗はギルガメッシュと二人でエルドラドの中を走り回る。
通信で戦闘の状況を注視しながら次々と奴隷の男たちを解放していくと、ペンテシレイアがかなり追い詰められ始めたことが窺えた。
「…そろそろペンテシレイアを倒せそうだ」
「あの戦力であれば当然であろう。で、どうするのだ?」
「いったん戻ろう。多分、コロンブスが…」
「よかろう」
杞憂であればどんなに良いことか。しかし、メガロスを手にしたコロンブスがここで正義の味方として終わるとは、どうしても思えなかった。
ある意味で、それは「彼の在り方ではない」のだ。
唯斗とギルガメッシュは反転し、ピラミッドへと戻る。通信では、ついにペンテシレイアにとどめを刺したのが分かった。
黄金の階段を駆け上がり、同じく黄金の列柱が並ぶ廊下を抜け、巨大なホールに出る。
ホールは、中央奥に巨大な階段があり、その先は丸く壁が切り取られ空が見えていた。広いホールの中央ではペンテシレイアが消失していく。同時に、マシュが焦ったような声を出した。
『ペンテシレイアの消失を確認、ですが、魔神柱の反応はありません…!』
「まだ終わりじゃないってこと…?」
立香が呟いた直後、コロンブスが動いた。
「どうやらそうみてぇだな。ま、すぐに終わるけどよ」
銃を取り出して立香の頭に向ける。同時に、唯斗は結界を展開した。
さらにフェルグスも剣をコロンブスに向けて構え、結界に驚いた様子もなく、また、銃弾が弾かれて目を見開くコロンブスに驚くこともなかった。
「ありがとうございます、唯斗さん。そしてクリストファー・コロンブス、何も終わりませんよ。今だから言いますが、僕は初めから、あなたを仲間だとは一度も思いませんでした」
「ひでェな、一蓮托生の仲間じゃなかったのかよ、俺たち」
『当然だろう、コンキスタドールである君は航海者にして虐殺者。紛れもない悪属性であると事前に言っておいたのさ。ま、言うまでもなかったようだが』
どうやらフェルグスはあらかじめダ・ヴィンチから注意を受けていたらしい。驚いているのは立香だけで、アーサーとアーラシュも、結界を展開した唯斗を見てホッと息をついていた。これで最低限、メガロスと戦う戦力は揃った。
唯斗は立香の隣に駆け寄って、今までとは異なる雰囲気を纏うコロンブスを睨み付ける。
「…ま、善人ばっかりだから黙っていればバレねぇと高をくくっていた俺が間抜けって話か。にしても虐殺者、ねェ…やっぱそういう風に後世には伝わっちまってんのか」
本当は違う、とでも言いたいのか、と思っていると、コロンブスはその顔を醜悪な笑みに歪ませた。
「俺はただ、自分の夢に忠実な頑張り屋さんだったってだけなのによォ!ハーッハッハー!!」