伝承地底世界アガルタII−25
そうして、シェヘラザードとの戦闘が始まった。
クラスはキャスター、アストルフォが有利ではあるが、そもそも単騎である以上こちらは数で非常に有利だ。
戦闘そのものは苦戦するようなものではない、と思っていた。
「…、攻撃が、なんだ…?」
唯斗は長引く戦いに怪訝にする。それに対して、アーサーに剣戟を譲ってこちらに戻ってきたフェルグスが頷いた。
「はい、僕も違和感を感じています。肝心の一撃がことごとく躱されます」
「やっぱり?ボクもそんな気がしてたんだよね」
「私は感じないが…」
アストルフォは頷き、デオンは首をかしげる。
アーサーの戦いを見ていても、アーサーの剣はシェヘラザードの巻物から次々に出てくる魔神などのキャラクターを切り捨てることはできているが、シェヘラザード本人にはなかなか当たらない。
また、フォローのギルガメッシュの光線もひらりと避けていく。
一方で、アーラシュの弓矢による攻撃は避けきれず、出血しながらもすぐにそれを回復させていた。
『なんらかの特防状態か?』
ホームズもおかしいと思ったようで、通信で観測しながら指摘する。
アーサーが一度離れると、シェヘラザードはアーラシュに負わされた傷を回復させながら頷いた。
「ええ。私は王に殺されなかったことが英霊たらしめている要素。ですので、王の攻撃に対して特防効果を得ています。まぁ、王の攻撃には当たらないようにできる、というだけの話なのですが…」
「そうか、それでアルスター王フェルグス、マーシア王子アストルフォ、ウルク王ギルガメッシュ、ブリテン王アーサーの攻撃は躱されたのか…ってことは、まともに攻撃入るのデオンとアーラシュだけか?」
「ええい、攻撃であれど王の施しを突き返すとは不敬!」
ギルガメッシュは攻撃が当たらないことに苛立つ。それでもなお、アーラシュとデオンで倒し切ることもできそうだったが、シェヘラザードもそれは理解したらしい。
「あなた方は私を殺しうる英霊、であれば、あなたに代わります。フェニクス」
そうシェヘラザードが告げた途端、その魔力反応は一気に増大した。急に肌を刺す大量の魔力が湧き上がる感覚は、かなり久しぶりのものだ。
魔神柱フェニクス、フェニックスとも混同される死と再生の悪魔。
『…っ、カルデアの観測を欺いた理由が分かりました。フェニクスは、数値上、死んでいます。死と再生の悪魔であるからこそ、自身の数値を死んだことにすることでうまく隠れていたのです…!』
崩れた黄金のピラミッドの瓦礫の中に立ち上がる巨大な柱。蠢く眼球はこちらを睥睨して何か言っているが、それはあまりに難解な言語であったためにうまく理解できなかった。
しかしやるべきことは一つだ。
「魔神柱は攻撃を避けられない。特防効果は続くだろうけど、まったくダメージが入らないわけじゃないから、デオンとアーラシュを主軸に全員で少しずつ削っていくしかないな」
「分かった。デオンが主力、アストルフォとフェルグスは援護お願い!」
「任されたよマスター。アストルフォとフェルグスも援護よろしく」
「まっかせてー!」
「はい!」
デオンは勇んで剣を構えると、俊敏に走り出す。魔神柱の足下から駆け上がり、目玉の一つをあっという間に切り刻んだ。
そのデオンを払おうと、目から光線を発した魔神柱を、アストルフォが突撃して気を逸らし、フェルグスがデオンと同じように動いて攪乱する。
一方、アーラシュはいまだに残っている中央部の黄金の階段の上から射撃を開始し、次々と目玉を潰していった。
アーラシュを狙う魔神柱の光線はギルガメッシュの結界が防ぐ。
しかし、魔神柱の潰された眼球はすぐに再生していき、あまりダメージを負っている様子はない。
さらに魔神柱は、こちらに向けて一気に反撃を始めた。
魔神柱を中心に、柱のように光線が地面から突き上がり、並び立ってサーヴァントたちに向かっていく。
黄金の階段は半壊しアーラシュも避けきれず吹き飛ばされ、空中にいたアストルフォがデオンを回収するも衝撃波に巻き込まれ落下。フェルグスは光線の直撃を受けて空中に巻き上げられた。
無事だったのは、ギルガメッシュの結界に守られたアーサーと唯斗、立香、ギルガメッシュ本人だけである。