伝承地底世界アガルタII−32


こうして男たちはUFOによってインド領へと降下していき、崩壊したラピュタはチベットの奥地に落下していった。
立香とデオンはアストルフォのヒポグリフに乗って退避し、唯斗とアーサー、アーラシュはギルガメッシュの結界の上に着地した。そのままレイシフトを待つことになるが、ふと、ギルガメッシュは結界から眼下を眺める唯斗を見下ろす。


「此度の任務、大義であった。果たすべき役割をしかと果たしていた」

「え……」


褒められるとは思わず、ついポカンと見上げていると、ギルガメッシュは呆れたように小さく笑う。


「惚けた顔をしおって。して、褒美をとらそう。何が欲しい?ラピスラズリのブレスレットか?アラバスターの杯か?それとも貴様の場合はウルクの粘土板の方が良いか?」


どうやらギルガメッシュは本気らしい。どんな答えを言うのか楽しんでいるようでもある。というか十中八九それだろう。
だが言えば叶えてくれるようでもあったため、唯斗はひとつだけ、お願いをしてみることにした。いつか、第六特異点のあとにも同じやりとりをした気がするが、欲しいものは変わらないのだと我がことながら呆れる。


「あー…その、」

「うむ?」

「……頭、撫でて欲しい………」


唯斗がそう言った直後、いやほぼその直前から、アーラシュが動いていた。アーラシュは唯斗の腕を掴んで、思い切り抱き寄せる。
いったい何かと思ったその直後、唯斗のすぐそばに宝物庫の門が開いており、黄金のさざ波が浮かぶ空中のその穴から伸びた鎖が、唯斗がいた場所を巻き取るように渦を巻いていた。


「おいおいおい、マジで反射で宝物庫に入れようとすンなよ、焦ったぜウルクの兄さん」

「ふむ、無意識だったか。惜しいことをした」

「ギルガメッシュ王、あなたともあろう人がいったい何を…」


どうやら、アーラシュが直前に視ていなければ、唯斗はギルガメッシュの無意識の蒐集欲によって宝物庫に引きずり込まれていたようだ。

ギルガメッシュは自分の行動に少しだけ驚いているようだったが、泰然とそんなことをのたまう。アーサーはため息をついていた。
アーラシュの腕の中、結構危ないところだったと冷や汗をかいていると、ギルガメッシュは乱雑に唯斗の頭を撫でる。


「愛いヤツめ」

「まぁな、今のはさすがに気持ちは分かるけどな」


アーラシュはそう頷くと、ギルガメッシュの手が離れたあとに唯斗の頭を代わりに撫でる。ギルガメッシュの手によって乱れた髪を戻すようなものだ。


「なんつーかあれだな、今回の任務で、改めて惚れ直したって感じだな」

「え、」

「アーチャー!」


ニヤリとしたアーラシュに固まると、ついにアーサーが唯斗を引き取り、自分の腕の中に囲った。
いつものアーサーの腕の中に収まり、唯斗は小さく息をつく。しかし次のアーサーの言葉にまた固まった。


「悪いがこちらは魔神柱(ケーキ)入刀までした仲なんだ!横やりはやめてくれないか!」

「ヴッ」


忘れていた羞恥心が甦る。ばっちり記録に残ってしまっているであろうことから、特異点探索の記録を逐一確認するタイプのサーヴァントたちにはバレてしまうだろう。
管制室にいるスタッフはリアルタイムで知っているし、何なら今のこの会話だってそうだ。


『はーいそこのマスターバカたち〜。帰還レイシフトするよ〜。誓いのキスは帰還してから夜に自室でしっぽり済ませてくれよ〜』

「〜〜〜ッ!離せアーサー!こっから飛び降りる!!」

「だめだマスター!ここは上空5000メートルなんだから!!」

『そうだね、その高さじゃ死ぬまでに戻ってこれるね。諦めて彼氏に抱き締められてなさい』


最後の最後にそんなドタバタを繰り広げ、大笑いするアーラシュ、呆れるギルガメッシュ、唯斗をしっかり抱き締めるアーサーとともに、カルデアへと帰還する光に包まれる。

とにもかくにも、これにて地底伝承世界の幕は閉じた。
大団円と同時に、新たな出会いが、すぐそこに待ち受けている。


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