ぐだぐだファイナル本能寺−9


「では早速評定と行きましょうか?マシュ、唯斗、我々の現在の状況をお願いします」


景虎はさっさと仕切っていく。この決断の早さもまだ大名たるゆえんか。


「はい!カルデア家、マシュ・家老・キリエライト、誠心誠意、先輩にお仕えします!雨宮・グロスヴァレ・家老・唯斗さんも良いでしょうか?」

「いやそうはならねぇだろ…」


張り切るマシュに力なく突っ込む。なんだかもう疲れてしまった唯斗である。
マシュは別の足軽に渡された大きな地図を畳に広げた。全員でそれを覗き込む。唯斗は諦めて、今後の作戦会議に臨むことにした。考えてはいけないのだろう。


「越後は現在、三方を信長さんに囲まれており、兵力・国力ともに乏しく、控えめに言って弱小戦国大名サークルと言って差し支えない状態です」

「越後って、なんていうか尾張のわしからしたらTHE・僻地じゃし、雪ばっかりじゃし、あんまいい土地の気がせんのよね」


なぜマシュはこうもノリノリなのか、と思いながら聞いていると、早速信長が喧嘩を売った。景虎は呆れてため息をつく。


「はぁ、これだから尾張のうつけは…いいですか?越後には青苧もありますし、決して貧しい土地ではありません」

「へぇ〜、お米じゃないんだ」


立香は越後、すなわち新潟と言えば、という名産品ではないことに首をかしげる。唯斗は補足として口を開いた。


「確かに昔から気候は稲作に適していたんだけど、新潟の二つの平野、この頸城平野と隣の越後平野は両方とも湿地帯で、20世紀に入ってから本格的な灌漑が行われたことで初めて水田地帯に生まれ変わる。それまでは確かに、この地域の農家は貧しかったんだ。だから上杉謙信は、青苧の栽培によって繊維素材の貿易を行って利益を上げた」

「ほぉ、越後は後の時代にそのような発展を遂げるのですね。稲作ですか、確かに気候はそうですが、ええ、やはり越後の平野では難しいでしょう」


魚沼を中心に青苧を栽培し繊維素材として生産、それを関川内陸の高田に集積して、関川と街道を経て関川河口の直江津から輸出し京都や全国に運ぶ、というのが近世の越後における経済構造だ。やがて高田と直江津が合併して上越市となった。そのため、現在でも上越市には高田地域と直江津地域という二つの中心市街地が存在する。
頸城平野と越後平野の湿地帯、つまり潟は後に廃藩置県の際に新潟県という名前の由来となっている。20世紀にこれを埋め立てたことで新潟から潟はほとんど消失し、代わりに広大な水田地帯が成立、多くの農家が移住してくることになり、実は日本で最も人口が多い都道府県だったこともある。


「そうですね、いきなり灌漑というわけにもいきませんので、当面は青苧の輸出で財政を安定させましょう」

「そういうのは任せるからよ、とりあえずどこでもいいから攻めようぜ、な、殿様!」


長可はこういう会議自体もつらいようで、ウズウズとして唯斗に後ろから抱きついてきた。大柄な長可にそうされると、完全に抱き込まれる形となる。背中に当たる鎧が少し痛い。
すると、すぐにディルムッドが長可を睨み付けた。


「マスターの邪魔をするな、森殿。待てもできん駄犬なら、マスターのサーヴァントは俺だけで十分だ」

「…あァ?」

「ディルムッドは煽るな。長可もステイ」


バチッと指先から火花を散らして言えば、二人ともすぐに黙った。唯斗のガンドの威力を、特に長可は身を以て知っている。
その様子を見ていた立香は、特に動じることもなくはたと気づく。


「そういえば、森君って唯斗には初めてのバーサーカーのサーヴァントだよね。しかも日本史の英霊としても初めてじゃん?」

「そういえばそうですね、唯斗さんが日本の英霊と一緒にいるのは不思議な感じがします」


マシュも立香に言われて初めて気づいたようで、胡座をかいて唯斗を抱き込む長可を微笑ましそうに見た。二人とも「森君」と気安く呼んでいるのは、長可がどこか精神年齢的に近しいものがあるからだろうか。確かに全盛期の姿のため、少し若く見える。さすが、13歳から森家の家督を継いで信長に仕えていただけある。

信長はというと、長可の様子を見て驚いたようにしていた。


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