ぐだぐだファイナル本能寺−11
大量の信長が群雄割拠している、その状態だけで、立香が言うところの「ぐだぐだ」を理解した気になっていた自分が甘かったのだと、唯斗はその後数日間の戦役で理解した。
まず始めにカルデア家が攻め落としたのは、完全に時代が300年ずれている帝都。江戸をすっ飛ばして文明開化してしまった帝都にて、操られていた沖田を回収し、カイザー信長を討ち取って、これで一挙に武蔵、上野、相模を領地とした。
何度も長可が暴走しては唯斗が慌てて止めるというのを繰り返して戦ううちにいつの間にか終わっていた形である。
その後、メドゥノブと蛇神様という意味の分からないものたちを倒して、メドゥーサこと蛇神様を仲間とした。
ちなみにメドゥーサは、「あなたもついに巻き込まれたのですね」と神妙な目をしていた。どうやら一部の英霊にはよくあることらしい。
カルデア家はその足でついでに甲斐に攻め込むことにした。そこそこ戦力が確保できる状況だからである。
甲府盆地の戦場に立つ真田の幟の合間を歩きながら、唯斗は興味津々であたりを見渡していた。
この時代の甲州と言えば真田家だ。真田幸村はこの時代をまだ生きているはずだが、会えたりするだろうか、という淡い期待を返して欲しい。
「お初にお目にかかる。僕は真田家の当主、真田エミ幸」
「そして私が次男の真田エミ村!」
「いやなんでだよ!!」
「あー懐かしい、俺も唯斗みたいなリアクションしたなぁ、最初の頃」
「おぬしは随分と逞しくなったのう」
エミヤ(アサシン)とエミヤ(アーチャー)である。というかこの特異点の英霊はいったいどういう立ち位置なのか。カルデアと一緒、というわけではさすがにないらしいが、それでも異様な光景だ。
真田幸村に会えると思ったら見知った食堂の弓兵の雑なコスプレ姿だったのだ、唯斗の叫びも尤もなはずなのに、立香はのほほんと笑っている。
確か唯斗の記憶では、エミヤはアサシン・アーチャーともに何やら確執があるのかほぼ会話はないし、アサシン・エミヤはほとんどカルデアで姿を見せない。立香もそのあたりは放置している。
何やら家族ごっこを繰り広げているが、あれはなかなかヘビーな光景なのでは、と思う唯斗である。
とはいえ、真田家を難なく討ち取ったカルデアは、こうして甲斐、信濃、飛騨も勢力下に置くことになったが、肝心の甲斐の信長を倒すことができていないため、人質として預かったエミヤだけを仲間に加えて甲斐の信長の居城を目指した。
現在は山梨県と長野県の県境にあたる山間の峠道を歩いているところである。
唯斗は後ろの行軍を見渡してげんなりとした。
立香とマシュ、唯斗の非戦闘員のほか、信長、沖田、長可、景虎、エミヤ、メドゥーサ、そしてディルムッドである。いったいなんの集まりなのか。
「…ディルムッド、俺はなんか夢でも見てんのかな……」
「マスター…お気を確かに……」
「考えちゃだめだよ〜」
立香は気楽に笑っている。SE.RA.PHやアガルタの探索から考えればあまりに温度差がひどくて風邪を引きそうである。そんな唯斗をディルムッドは痛ましそうに見ていた。ちなみにディルムッドは敵がいれば倒すということしか考えていないため、ある意味こういう状況への耐性があった。
そうして峠道を進んでいたときだった。
唐突に雨が降り出したと思ったら、突然、山の斜面の上から猛烈な勢いで駆け下りてくる軍勢が現れた。
「俺が尾張、いや甲斐のうつけ!織田吉法師よ!敵大将!その首もらい受ける!」
「あっ、これって桶狭間のときの義元状態じゃない、わしら?」
「一番手柄が向こうから来てくれるたァありがてぇ!待ってろよ殿様!今あの生意気な大殿の首刎ねてきてやるからよ!」
ニカッと長可は笑うと、人間無骨を振りかざして山の斜面に分け入っていく。もうバーサーカーは自由にさせておけばいい。
「狙いはカルデアの大将首ただ一つ!進めええええ!!!」
どうやら向こうの狙い立香のようだ。どれだけぐだぐだな有様だろうと、戦いは戦い。唯斗は気持ちを切り替えた。
「立香、ちょっと下がってろ。ディルムッド、山中に入って迎撃。エミヤ…幸村…あーもうアーチャー!挟撃されないよう左翼と右翼それぞれに射撃!」
「ふっ、承知した」
エミ村は小さく笑うと遠距離射撃を開始する。ディルムッドも森の中に入っていき、長可と少し離れた場所で戦闘を開始した。
唯斗は立香とマシュを守れるよう前に立ち、メドゥーサと信長、沖田は斜面を降りてきた者たちから次々と交戦を開始する。そういえば、いつの間にか景虎がいなくなっている。