ぐだぐだファイナル本能寺−13


一気呵成に東日本の大部分を制圧したカルデアは、続いてビッグノッブとやらが支配するという加賀へと向かい、ここで匿われていた土方と合流。
全国の信長の元から逃げてきたというチビノブなる謎の生命体の集団を含めて加賀から越前、越中を制圧した。
もう本当に意味が分からない。

その足で、加賀の客将だという前田セタンタもといランサーのクー・フーリンを仲間にすることに成功した。前田利家と会えるなどという希望は持っていなかった唯斗だったが、これはいったいなんなんだ、という答えの出ない疑問を何度も反芻していた。

そうしていったん春日山城に戻ってきた一同は、久しぶりにこの城で夜を明かすことになった。
長可は李書文らと茶をしばきに行き、立香とマシュももう休んでいる。

基本的に唯斗はディルムッドと一緒にいるが、帰路から城に至るまで、どこか元気がなかったことには気づいていた。
ようやく、宛がわれた部屋にディルムッドと二人きりとなったことで、唯斗は畳に腰を下ろしながらディルムッドを見上げた。


「座らないのか?」

「…、では失礼します。畳とはまだ慣れませんね」

「そっか、カルデアはそれこそ茶室しかないもんな。俺は日本の屋敷が畳だったから懐かしい感じだ」


するりと上等な畳を撫でてから、胡座をかいて座ったディルムッドを見遣る。


「…で、どうした?吉法師たちと戦ってから覇気がないけど」

「マスターは、お気づきになられますよね…いえ、己の不甲斐なさに、自己嫌悪に至っておりまして」


ため息をついたディルムッドの横顔は、さすが輝く貌のディルムッドといったところで、芸術作品のようですらあった。
だがその表情はいただけない。本当に自己嫌悪しているようで、自信のない英霊でこそないものの、他の英霊との力量差は冷静に評価するこのサーヴァントがそういう顔をするのは嫌だった。


「長可のことか?」

「はい。私より先に、マスターを庇ってみせました。粗暴なバーサーカー、マスターには似つかわしくない乱暴者と思っていましたが、やはりこの国の侍なだけあります。その忠義・忠節の強さは、たとえ言動が粗忽であっても本物です」

「それとディルムッドのことは関係ないだろ」

「そう、なのですが…私は、その……やはり、マスターは日本の英霊の方が好ましいのかと…」


言いづらそうに答えたディルムッドに、唯斗は少し目を瞬かせてから、ようやくディルムッドの感情の全容を理解した。
長可に唯斗の庇護で先を行かれたことだけではなく、全体的に唯斗が長可を構ってばかりであることに、ディルムッドは日本の英霊の方がいいのか、と思ってしまったようだ。

恐らく、ことあるごとにディルムッドと長可が対立したときに、比較的にディルムッドの方にしっかり注意してしまったからだろう。長可はバーサーカーであるため言っても聞かないという諦めによるものだ。
だが、ディルムッドはそれを、自分が至らないと考えてしまったのかもしれない。

二人の相性が悪い、などと思っていた唯斗だったが、これは唯斗が下手くそなだけだ。唯斗がそこも含めて指揮するべきなのだ。ようやく最近、いっぱしの人間らしくなれた唯斗には難しいことだが、こうしてディルムッドを暗くさせてしまったのだ、腹を据えるべきである。


「ごめんなディルムッド、俺がちょっと配慮なかった」


唯斗が謝ると、ディルムッドは顔を勢いよく上げて首を横に振る。


「そんな!マスターが謝られることでは!」

「いや、マスターとしてそこも俺の責任だ。これは俺のけじめだ」

「っ、マスター…」


唯斗は畳の上で体を滑らせてディルムッドの隣まで行くと、その右肩にそっと額を乗せた。頭の重さを預けると、ディルムッドは唯斗の背中に腕を回して軽く抱き締める。


「ここに来て最初にも言ったけど、ディルムッドがいてくれて良かった。きっと、他のサーヴァントでも、俺は無事に春日山城で立香たちと合流できたと思うけど、でも、今ここに一緒にいてくれるのはディルムッドだ。それにさ、」

「?なんでしょう」

「…小特異点ならまだしも、このレベルの空間でディルムッドと一緒に探索するって、初めてだろ。いつもはアーサーが一緒だし、SE.RA.PHはガウェイン、アガルタはギルガメッシュとアーラシュだったし。すげぇ新鮮。何より、ディルムッドがその二槍でこの日本の戦国を戦ってるなんて、めっちゃロマンあるだろ」


そう言ってディルムッドの顔を至近距離で見上げると、ディルムッドは呆気にとられた顔をしてから、ふっと破顔する。


「我が主よ、私もあなたを、森殿を抜かせば独り占めできることが嬉しいと感じてしまいます。彼は憧れの日本の英霊として、私は古参のサーヴァントとして、あなたなら的確に使い分けてくださることでしょう。必ずや、あなたをカルデアまで無事にお連れします」

「あぁ、頼りにしてる」


訳の分からないものに巻き込まれてしまったが、こうしてディルムッドとずっと一緒にいるというのもまた珍しいことであり、唯斗はどうせならもっといろいろディルムッドと話してみよう、と思った。


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