ぐだぐだファイナル本能寺−24
「でかした!」
「でかしました!」
それを確認したのと同じタイミングで、信長と景虎は声を揃えた。
信長は火縄銃を構え、景虎は槍をもって悪魔に詰め寄る。そして、信長の一際強い銃弾が頭を、景虎の重い槍が心臓を、それぞれ貫いた。
一際大きな悲鳴とともに、ついに悪魔は力尽きる。
「あぁ…ああ…ッ!神仏など、おらぬ、おらぬのだ…!!」
そんな怨嗟とともに、大僧正は消失し、悪魔も霧散した。あとには炎上する本能寺だけが残っている。
これでようやく、すべての敵を倒すことに成功したのである。
「やりました!先輩、勝ちましたよ!」
「うん!良かった!」
マシュと立香もホッとしており、マックスウェルも息をつく。同時に、マックスウェルの体は光に包まれた。
「…さて、ではそろそろお別れですね。皆さんには大変お世話になりました。どうか良き未来を人が開きますように」
最後にそう言って、マックスウェルは消えていった。マックスウェルの悪魔、それは、物理学を前に進め、来る時代の科学を進歩させた良い悪魔であった。
こちらに戻ってきた景虎の体もまた、金色の粒子に包まれている。
「私もお別れのようですね。短い間でしたが実に充実した家臣生活でした」
「また会えるかな?」
「あははは!もし苦難訪れしとき、毘沙門天に一身にお祈りください。さすればこの毘沙門天の化身、長尾景虎が三千世界を超えてお助けに参上いたしましょう!ではさらばです、私の最初にして最後の主よ!毘沙門天の加護ぞ在らんことを!」
景虎はにっこりと笑うと、そう言って消えていった。性別こそ違ったが、なんだかんだ、長可と景虎の二人だけがまともな武将サーヴァントだった。
会えて良かった、ということくらいは言えれば良かったが、またいつか会えるだろう。立香の縁の強さはそういうところがある。
『もしもーし、聞こえるー?』
「ダ・ヴィンチちゃん!」
すると、立香と唯斗の通信機から声が聞こえてきた。なんと、カルデアと通信が繋がったようだ。
『いろいろ聞きたいこととかあるけど、ちょっと時間がない。なんせその空間は絶賛暴走中だからね、このままだとこちらの世界と対消滅を起こしてしまう!レイシフトは時間がかかるから、先に…そうだね、唯斗君とディルムッドを帰還させるよ』
何やら急いでいると思えば、なんとこの特異点が暴走状態にあるという。逡巡の間に何を考えたのかは分からないが、ダ・ヴィンチは唯斗を先に帰らせることにしたらしい。
その言葉の直後に、唯斗とディルムッドの周りに光の粒子が出現し、感覚が薄れ始める。
「殿様ともお別れだな。俺は残るからよ」
「長可…、」
このおかしな空間で初めて繋いだ縁である長可は、ここに残ると言う。カルデアに連れて行けるのかは分からないが、本人が拒絶するならカルデアの召喚式は無理強いはできない。
「なんつーかよ、殿様の時代ってのは人斬っただけで大変なんだろ?俺は気に入らねぇことがあるとすぐ槍振っちまうからよ、そういうとこは向いてねーんだわ。なんつっても死んだときも味方が喜んだぐれぇだからな、俺は。だから構わず帰れや」
唯斗はなんと言おうか迷ったが、いよいよ薄れる五感に、思ったままに口を開いた。
「たとえどれだけ他人があなたを疎もうと、マスターである俺は最後まで信じて託すよ。そして、託すことができて良かった。ありがとな、長可」
「ッ…、そいつぁ俺の台詞だな。殿様を任せたぞ、ディルムッド」
「もちろんだ」
そして長可はディルムッドにもそう言って、最後に珍しく、粗忽さのない穏やかな笑みで笑った。
直後、視界も消えて、体は感覚がなくなり、意識だけが浮遊する。
とにもかくにも、これでトンチキ特異点とはおさらばだ。