ぐだぐだファイナル本能寺−25
「…っていうことがあった」
「うん、さっぱり意味が分からないな」
食堂に向かう廊下にて、唯斗はアーサーに今回の件の顛末を話していた。ダ・ヴィンチの様子からそこまで心配はしていなかったそうだが、こちらの世界では1日ほど経過していたらしく、久しぶりに会えた、というような感覚だ。
たった1日で久しぶりというのもどうなのか、というのは別の疑問だが、少なくとも唯斗の感覚では2週間以上はあのシミュレーター内部にいたため、本当に久しぶりだ。
カルデアに帰還したとき、ダ・ヴィンチは立香に説明を続けていた。
それを横で聞いた唯斗は、なぜ先に唯斗を帰したのか合点した。
あの特異点の発生原因として、最後に一つ残っていたのが、信長の存在だった。当然だ、天正12年に信長は生きていない。それが甦った霊基を含む姿としてあそこにいたからだ。
そのため、あの特異点で信長とは最後の別れとなることになったため、立香にはそれを理解した上で別れられるようにしたようだ。
しかし、そんなダ・ヴィンチの配慮をまるで笑うかのように、信長はひょっこり戻ってきた。別れにしんみりとしていた沖田は喀血した。
どうやら信長は、最後の最後にセルフ清洲会議を開き、カルデアの信長はそもそも関係がない霊基であるということで、その霊基だけ分離して普通に戻ってきたらしい。
さらに、景虎もやってきた。なんでも、立香が腹痛でトイレに籠もっているときに毘沙門天に祈ったそうだ。そんな祈りで呼び出されるとは思わなかっただろうから、さすがの景虎も動揺したはずだ。
その騒ぎの報告を受けた唯斗は、呆れつつも、アーサーといつも通り昼食にしようと食堂に向かっているところである。
「それにしても、君の初めてバーサーカーがそんなリアルバーサーカーだったとは。いや、スパルタクス殿などに比べれば理性的かもだけど」
「それな。長可が望んだことだからしょうがないけど、せっかくなら俺も日本史サーヴァントと旅してみたかっ…た……」
そこで食堂に到着したのだが、中からとんでもない喧噪が聞こえる。その聞き慣れた怒声に、唯斗の言葉も止まった。
訝しんだアーサーは、食堂の中を覗く。
「おや?あのサーヴァントは見慣れない顔だけれど…」
唯斗もアーサーの後ろから食堂に入ると、そこでは、なぜかディルムッドとメンチを斬って一触即発の森長可がいた。
人間無骨を出現させ、今にも斬り掛かりそうだ。
「っ、ちょっと待て長可!とりあえずステイだ!」
「おっ、殿様じゃねぇか!ご無沙汰!また世話になるぜ!」
けろっとこちらに関心を戻した長可。こんな呆気ない再会があるのか、と唯斗は脱力する。よく見れば、確かに唯斗とパスが繋がっている。唯斗が召喚したわけではないが、しっかりと唯斗のサーヴァントとしてここにいた。
「来てくれたんだな」
「おう!大殿がお前は殿様を守れって送り込んでな。地獄に連れて行ったら成利に嫌な顔されるなんて言われりゃァ断れねぇわ!」
「…そっか。や、でも嬉しい。ありがとな」
「これからは俺が守ってやるぜ殿様!あ、ついでに今晩俺の閨来るか?」
そして続けてとんでもないことを言い出した長可に、先ほどまでにらみ合っていたディルムッドが怒鳴る。
「貴様何を抜かしている!マスター!やはりこの男はいけません!」
「あ!?指図してんじゃねェぞ!!」
瞬く間にけんか腰になった長可に、怒るより先にアーサーは困惑する。
「…これが、サムライ……?」
ドン引きするアーサー、長可と口喧嘩を続けてやはり若干押されるディルムッド、こちらを怒りたいが憧れの日本史英霊に色々聞きたそうなエミヤ、げらげら笑うアキレウスやアーラシュなど、唯斗のサーヴァントたちだけでもこうも多様性が生まれるものか、と遠い目になった。
とりあえず長可を止めるべく、唯斗は足を踏み出す。
とはいえ、こんなカルデアも悪くない。
あんな特異点はもう懲り懲りだが、唯斗は間違いなく、今の状況を楽しんでいた。