サーヴァント・サマー・フェスティバルI−6


ハワイ改めルルハワ到着3日目、夕食はワイキキストリートの和食料理店に行くこととなり、全員で移動した。
人でごった返す賑やかな大通りを集団で歩くが、人数が多く人混みでもあるため、自然と数人ずつに会話主体は分かれている。
唯斗はアーサーと並んで歩きながら、その喧噪を楽しみつつ立香たちについて行っていたが、それは突然やってきた。


「サバフェスモ、注文ヲ無視シ続ける飲食店モ、全部、破壊シテヤル!」


そんな機械音声めいた言葉とともに、前方の交差点で突如として爆発が発生した。
人々は悲鳴を上げて逃げ惑い、飲食店などに逃げ込んでいく。交差点の真ん中で立ち上がったのは、初日に見かけた謎のロボットアーマーのフォーリナーだ。

即座にその前にBBも現れている。BBはルルハワの管理者として、このフォーリナーには一貫して敵対姿勢を貫いていた。


「唯斗、行こう!」

「ああ、被害が出る前にボコす!」


立香と走り出すと、サーヴァントたちは先行して交差点に向かってくれた。同じく非戦闘員のマシュは、交差点の敵性体の観測を行う。


「やはりあのフォーリナーです、BBさんが交戦中ですが、市街地を守るのに精一杯のご様子!」

「アーサー!風王結界の解除を許可する!」

「了解!」


あの装甲の堅さを思い出し、アーサーには最初から聖剣を顕現させた。アーサーは交差点の手前で跳躍し、風王結界が解除された聖剣を思い切りフォーリナーにたたき込んだ。
しかし装甲に弾かれ、フォーリナーは光線を放ってアーサーを遠ざける。

入れ替わりに、俊敏に動く牛若丸が日本刀を関節にたたき込み、ロビンもボウガンでヘルメットの隙間を狙い、ジャンヌ・オルタは炎を日本刀から放って牽制する。
しかしそれでもダメージは通っていなかった。


「…てかあの槍、よく見たら…まさか……」


ふと、フォーリナーが構える槍に既視感を覚え、注視してみる。視界に魔力を展開して見てみれば、やはりそれは以前に見たことがあるものだった。


「っ、あれ、聖槍か!?」

「な、ロンゴミニアドですか!?」

「第六特異点の獅子王のものと、まったく同じってわけじゃないけど…うん、エクスカリバーとガラティーン、両方間近で見てきたし、さすがに間違わない。あの光は聖剣の系譜のものだ」


なんと、フォーリナーが持っているのは聖槍だった。ロンゴミニアドの亜種だろうか。
そんなものを持っているなど、いったいどんな存在なのか。そのような規格外の兵器を持っていながら英霊ではないフォーリナークラスであること自体が不自然だ。


「でもなんだろ、俺、あのフォーリナーにそういう高尚なこと考えちゃいけない気がするんだよね…!」

「奇遇ですね先輩、私もです!」

「…?」


何やら悩ましげな顔をしている二人。いったいどういうことかと聞こうと思ったが、それより先に、まったくダメージが通らないことでサーヴァントたちが膠着状態に入った。

唯斗たち3人も、サーヴァントたちの後ろに到着して交差点の入り口に立つ。いまだに中央で仁王立ちしているフォーリナーは、周りを見渡した。


「…サバフェス、滅ブベシ。覚エテオクガイイ。私ノ名ハXX。フォーリナーハンター、XXダ!」

「うひー!あいつまだやる気だぞ、いったん逃げるか!?」


あのフォーリナーはいったい何を言っているんだ、と思ったが、あふれ出る殺気は本物で、さすがにロビンも厳しそうだと後ずさる。しかし、BBは撤退の意志を見せない。


「いえ。特異点ルルハワの守護者として、これ以上の狼藉は認可できません。こうなったら私も奥の手を出しちゃいます!変身!」


そう言うと、黄色いパーカーを羽織ったスポーティーな水着スタイルだったBBは、光に包まれる。霊基が変化する霊子の光だ。
その光が止むと、その装いは大きく変わっていた。


「アーーロハーーー!!装いも新たに、パンク・コケティッシュ・ワイルドに!我こそはハワイ島の女神ペレの神核をインストールしたnewBBちゃん…そう!BBペレでした!」


日に焼けた小麦色の肌に際どいパンクめいたビキニスタイルになったBBは、なんとハワイ神話のイシュタル的女神、ペレの核をインストールしているとのことだ。
活火山キラウエアの象徴であり、愛や暴力を司る女神である。

その神性は本物で、XXとやらはびくりとする。


「っ、銀河警察法第1234条、現地の人類保護機構との衝突は減俸100年…やべ。すみません、この戦いはなかったことで一つ、お願いします。それじゃ、よろしくルルハワ!」


唐突に普通の女性の声で言ったXXは、そのまま流星のごとくジェットによって空高く飛び上がっていった。いったい何なのか、と呆然としてしまうが、BBはじめ立香たちは何事もなかったかのようにしている。トンチキ特異点の経験値の差が歴然と出ていた。


「ふぅ、なんとか一件落着、ですね!皆さんのおかげです、ありがとうございました〜☆」


珍しく普通に礼を言ったBBに、ジャンヌ・オルタは呆れたようにため息をついた。


「はぁ、ま、あんたの加勢のおかげだけどね。それで本当にペレの力を持ってるの?」

「はい、もちろん」


BBの語るところでは、今年のサバフェスの主催者となることになったBBがハワイで開催しようと思い立ち、1ヶ月前にハワイで調査していたところ女神ペレと意気投合、いろいろあって弱っていたというペレから権能を譲り受けて特異点ルルハワを構築したのだそうだ。なんでもありなのか。


「ちなみに女神ペレというのはですね」

「あ、いいわよ。大体知ってるから。てっきりポリアフの方かと思ったけど…ま、それならあんたがこちら側ってのも納得ね」

「あれ、オルタ詳しいんだね」


立香の言葉にジャンヌ・オルタはまたも「呆れた」という顔をする。空港での言動もそうだったが、ひょっとして、ガイドブックに付箋を貼りまくって頭にたたき込んでくるタイプの人なのだろうか。


「観光客のたしなみよ。説明とかは面倒だからそこの歴オタに頼んで」

「それでは私も復旧作業があるのでこれにて!サバフェスまで残り二日、頑張ってくださいね?」


ジャンヌ・オルタはスタスタと和食レストランに向けて歩き出し、BBもおもむろに消える。戦闘の形跡は忽然となくなっており、通りの喧噪も元に戻っていた。お得意の虚数処理だろう。


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