サーヴァント・サマー・フェスティバルI−11


初めてルルハワにやってきた7日間を1週目とするならば、2週目が終わった。
やはりこのループで1位をとるようなことはできず、新刊「演劇的魔人のメランコリー」は、とりあえずオフセット本として出せただけでも及第点というところで落ち着いた。
とてつもない力を持つ魔人と少女の物語だったが、ストーリーはまとまりがなく、全体的にとっちらかった印象だが、素人からすれば、こういうものを作り出したというだけでとてつもない功績のように思う。

そして刑部姫のBLコピー本「甘いエスプレッソ」は、大企業の社長のアーサーとカフェ店員の唯斗が恋に落ちてしまう話で、これにはアーサーもニッコリしていた。
クオリティはコピー本らしからぬハイレベルだったが、唯斗は羞恥心のあまり死ぬかと思った。

そうして3週目を迎えた一行は、また同じように黒髭と接触してホテルを取り、刑部姫と合流し、XXも撃退し、初日から同人誌制作に取りかかった。すでに2週目の最終日からジャンヌ・オルタはネームを考え始めていたため、大筋はできているそうだ。

そして、作業ペースも各自把握できていたことから、初日は前周の慰労もかねてバーベキューを行うことになり、ホテルの目の前のビーチに繰り出した。


「すごい人数だな」

「ビーチで遊んでいたサーヴァントたちも加わっているようだね」


アーサーと二人、賑わうビーチを見渡す。水着姿のサーヴァントたちが多く、匂いを嗅ぎつけて参加してきたようだ。
人数が増えたため、なぜかホテルの食堂で働いているブーディカやタマモキャット、さらには休日として来ているエミヤも参加してくれていた。

エミヤはこちらに気づいて手招きする。


「ちょうど焼けたところだ。持って行くといい」

「お、ありがとな」

「ありがとう、エミヤ殿」


アーサーと二人でエミヤが管理しているコンロ台に加わり、紙皿に肉や野菜を乗せられて渡される。
水着になってアーチャークラスになったアルトリアは大量に肉を重ねて持って行った。食い意地は相変わらずのようだ。
同じく水着になったことでアーチャークラスとなっているジャンヌも、野菜をメインにしつつ立香たちと話している。前の周では、1位はメイヴ、2位はジャンヌとマリーのサークルだったという。超えるべき相手だが、ジャンヌ・オルタはもともと、ジャンヌが描いたという同人誌を超えるモノを作りたいという個人的な願望も持って臨んでいるそうだ。

楽しげな喧噪の中、唯斗も割り箸で肉を食べ始める。なかなか良い肉のようで、エミヤが管理していたこともあり、火加減も油の落ち具合もすべてちょうど良い。


「うま。バーベキューって初めてだけど、普通に焼くのとはやっぱ違うもんだな。雰囲気のせいか?」

「もちろんそれもあるだろうが、炭火焼きというのは屋外ならではだからね」


エミヤは新たに乗せた鶏肉の焼き目を確認しながら答える。確かに、屋外ならではの調理法ということであれば、味の違いも納得だ。
いったん菜箸を置いたエミヤは、こちらを見て、ふと何かに気づいたように近づいた。


「マスター、もう一つボタンは留めておかないと火の粉で火傷してしまう。サーフパンツの紐もきちんと結びなさい」


そう言いつつ、エミヤは唯斗のリネンシャツの下のボタンを留めて腹を隠し、サーフパンツの紐を手早く結び始める。確かに皿と箸で両手が塞がっているが、そこまでしてもらわなくても、と少し気恥ずかしくなる。


「…子供扱いかよ」

「うん?大人として扱っていいのかね」


恥ずかしさを誤魔化すように言うと、エミヤは色を乗せた声で言うなり、するりと唯斗の耳元を撫でた。思わずびくりと肩が跳ねる。


「……エミヤ殿」

「しっかり見ていてやった方がいいぞ騎士王」

「言われなくとも」


アーサーが低い声で牽制すれば、エミヤは肩を竦めて調理台に戻った。
すると、背後から刑部姫が「あ、あ、あの」と声をかけてきた。


「もしかしなくても…二人って…そういう…」

「あ……」


唯斗は、このループでも何かに目覚めた様子の刑部姫に、早速頭痛がし始めたような気がした。オタクは理解が早すぎる。
アーサーも、ループで刑部姫は記憶が引き継がれないことを思い出し、ニコリと笑う。


「ええ、お察しの通りです」

「はわ…で、でも、赤いアーチャーさんも同じ感じだったよね、つまりそれって、唯斗君の総受けってこと?姫、名探偵だから分かっちゃうんだけど」

「……?」


二人揃って、新たなワードに首をかしげる。いったい刑部姫が何の話をしているのか、すぐに理解することはできなかった。だが刑部姫の行動ですべて理解する。


「あーこれ来ました、来ましたわ。姫これ書く。絶対にだ。コピー本出すわ」

「…え、ちょ、何言って、」

「うーん、王道で騎士王×マスター君でもいいけど、ここはあえてアーチャーさん×唯斗君ってことで」

「プリンセス、それはいただけない。せめて私とマスターにしていただきたい」

「ごめんなさい、姫決めたら曲げないの、それが姫の忍道なの。じゃ、そういうことで」


なんと、新たな展開である。刑部姫はBLコピー本を出すと決めたが、そのテーマはアーサーと唯斗ではなく、エミヤと唯斗になったらしい。アーサーの制止も聞かず、刑部姫は「時間ないから!」と言ってホテルに戻っていった。


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