サーヴァント・サマー・フェスティバルI−13
本格的な原稿作成が始まった頃、「体を動かした方が良いです!」という牛若丸の案で、立香たちはビーチバレーをしにビーチへと向かった。
唯斗は誘いを断ってホテルに残っていたが、ジャンヌ・オルタに「ちょっとマスター連れてきて」と指示され、一人でビーチに降りてきたところだ。
さすがに危険などはないということで、アーサーは残って作業をしている。
ビーチバレーをしているマルタたちを見て、その中に立香がいないことに気づいた唯斗は、立香もどこか別の場所に向かったのかとさらに足を進める。
ストリートの歩道からビーチを見下ろしながら歩いていると、かなり前方、ビーチの端にある岩場に向かって立香が向かっているのが見えた。いったい一人であんな岩場に何の用だろう。
唯斗は歩道から跳躍してビーチに着地すると、立香の後を追いかける。
すると、岩場に着いた立香が、何やら男たちに囲まれたのが見えた。ルルハワになぜか存在している海賊たちだ。大半は、黒髭など海賊サーヴァントの宝具として出現する船の船員であり、エーテル体である。
どこか剣呑な雰囲気に見えた唯斗は、すぐに足に強化をかけて走り出す。
僅か数秒で岩場に到着した唯斗は、海賊たちと立香の間に割り込んだ。
「あんたら、立香に何の用だ」
「うお、どっから来やがった!」
「いきなりイケメンがイケメンな登場の仕方しやがって!」
「分からせてやろうか!!」
「…?」
なんだこいつらは、と立香を振り返ると、立香も戸惑ったようにしていた。
「なんか難癖つけられて…」
「じゃあ気絶させるくらいならいいな?」
ガンドを放とうと右手を構えたが、海賊たちは焦ったようにこちらに詰め寄る。
「うおおいおい、魔術は良くねぇなぁ!」
「そ、そうだぞ、もしもなんかすんなら、お前らの同人誌のデータ、ホテルごと吹っ飛ばすぞ!」
本当にそんなことができるのか、と思わずジト目を向けてしまったが、その一瞬の隙がいけなかった。
「おとなしくしろ!こいつがどうなってもいいのか!」
「うわっ」
「っ、立香、」
なんと、男の一人が立香を羽交い締めにしたのである。人質に取られてしまい、唯斗はどうしようかと思考を巡らせる。
ここでボコボコにするのは簡単だが、立香に怪我をさせたくはない。いや、回復させられるが、こんなことで痛い思いをさせたくなかった。
「ひひひ、おとなしくしてれば、こいつに危害は加えねぇ」
「よく見りゃ、お前もオケアノスで俺たちをボコしたヤツじゃねぇか。お前の方が見た目いいし、お前にしてやる」
「抵抗するなよ…」
動きを止めた唯斗にニヤリとした男たちは、おもむろに、唯斗の着ているシャツの隙間から手を差し込んできた。するりと肌を撫でられ、ぞっとする。まさかそういう意図か。これは本当に抵抗するべきだ、と思ったその瞬間、立香が先に動いた。
「やめろ!!」
珍しく怒声を上げた立香は、男の拘束を力尽くで抜け出すと、唯斗を男たちから引き剥がし、抱き締めるようにして庇った。
立香の腕の中に閉じ込められるようにして男たちと距離を取られた唯斗は、思わずポカンとして立香を見上げてしまう。
「てめぇ、おとなしくしろっつったろ!」
「よっぽど痛い思いしてぇようだな!」
「失礼、ちょっといいかな君たち」
逆上した男たちだったが、そこに、別の落ち着いた低い声がかけられた。立香と二人、男たちの背後に立つ背の高い男前を見上げる。
「なんだてめぇ!パープルのラメ入った海パンとかマジでなんだてめぇ!」
「ちょっと捜し物をしていてね。この辺りに落とし物はなかったかな?ない?困ったな。君たちの良心、あるいは正義感のようなものなんだが、ないなら仕方ない。更生の余地はないんだろう?なら一瞬で終わらせよう」
日に焼けた肌、紫色のサーフパンツ、黒い薄手のカーディガン、カジュアルにワックスで流された紫色の髪。
その変わりように愕然としている間に、まさに一瞬で、海賊たちはその長い足の一蹴りで海に吹き飛ばされた。
「怪我はないかな?立香、唯斗」
「う、うん、ありがとう、ランスロット」
「や、やっぱランスロットか…」