サーヴァント・サマー・フェスティバルI−15


ループは5周目に突入し、なんだかんだこのルルハワの日々は1ヶ月分に相当する時間を過ごしていることになってしまった。

ちなみに、4周目で出稿した同人誌はアーサーがシナリオの原案を出している。ジャンヌ・オルタの無茶ぶりに、意外としっかりアーサーは応え、「セイバーアーツオンライン」という同人誌が作成された。オンラインゲームの世界に閉じ込められてしまった主人公たちが、円卓というギルドを組んで生き残るために戦うというストーリーである。
この男からそんなアイデアが出てくるとは思わず、全員で驚いたものだ。お前はバスターだろう、とは言わないでおいた。

ただ、世界観の説明などで幅を取られてしまったことで不完全燃焼なものとなり、ジャンヌ・オルタは「異世界モノはまだ早い」と漏らしていた。

そして刑部姫のコピー本は「パリの歴史軸」というタイトルで、サンソンと唯斗がパリでデートする話だった。意外とパリの街並みがしっかり描かれていたのが印象に残っている。

そんなこんなで5周目も同じように最初の体制整備を終えて、刑部姫ともコンタクトを取り、2日目の夜のXXとの戦闘も終えたときだった。

そういえばまだ刑部姫が覚醒していない、と思ったちょうどそのタイミングである。


「おや、戦闘音がしたと思ったのですが」

「ディルムッドも来てたんだな」


メインストリートをホテルに帰ろうとする唯斗たちの前に現れたのはディルムッドだった。水着でこそないが、上半身に霊衣を纏わないケルト兵の装いになっている。


「はい。マスターが戦闘に出られているのかと思い、駆けつけたのですが遅かったようです」

「そうだったのか、ありがとな」

「いいえ、私こそ、このルルハワであなたにお会いできた運命に感謝せねばなりますまい」


唯斗が礼を言うと、ディルムッドはふわりと微笑んでその場に跪く。いつものやつだが、道行く人々は「プロポーズか?」と二度見している。
さすがに悪目立ちしてしまうと、唯斗はディルムッドに立つよう促す。


「さすがに目立つから、な?」

「あぁ、これは失礼いたしました。当世の倣いではありませんでしたね。分かってはいたのですが、我が主とお会いできたというだけで舞い上がってしまうのです」


ディルムッドはすぐに立ち上がったが、逆に唯斗の腰を抱き寄せて至近距離で微笑んだ。色めいたものではなく、むしろ大型犬がすり寄るようなものに近いため、アーサーも我慢しているようだ。


「ったく、大げさだろ」

「大げさなものですか。ふふ、それにしても、水着もとてもお似合いです」

「ん、ありがと」

「はい。とても魅力的で…騎士王がいることを忘れて、今晩の誘いをしてしまいそうになるほど」


しかし、突然妖艶な声で囁いたため、唯斗は耳元から広がるぞわぞわとした感覚に声が出そうになるのをすんでで耐えた。
アーサーは盛大に「ん”っん”ー!」と咳払いをしている。

すると、刑部姫からも「はわ…」という鳴き声が聞こえてきた。


「ま、まさか、もう一人のマスター君、本当は騎士王とステディな関係だけど他のサーヴァントたちにも言い寄られる魔性のマスターってこと?」

「解釈が早すぎる」


やはりこのループでも一瞬で(魔性かどうかは別として)関係性を見抜いた刑部姫は、その目をギラリとさせた。


「これはコピー本決定ですね!姫いっちょやるわ!」

「あんた懲りないわねぇ毎度毎度…」

「え、こんな無茶さすがに姫も初めてだけど…あ、嘘、前もやったかもだけど、オルタちゃんたちこれが初めてだよね?」

「あー、まぁね」


毎度のやりとりに、ジャンヌ・オルタもあきれ顔を隠さない。この1ヶ月、刑部姫から教わる内容も周を重ねるごとにレベルの高いものになっているが、刑部姫のこの衝動は毎度変わらない。


「じゃ、コピー本はディルムッド×唯斗君で決定!書くぞー!!」

「?姫君が私とマスターを題材に本を出されるのですか?では私もサバフェスを見に行くとしましょう」


アーサーにディルムッドから引き剥がされながら、ディルムッドは唯斗に微笑んだ。そこで刑部姫を見ないあたり唯斗しか眼中にないが、刑部姫はそれにすら興奮していた。


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