サーヴァント・サマー・フェスティバルI−20
ロビンが一人になってしまったことや、唯斗も思いついた内容を話しながら整理したかったこともあって、唯斗はアキレウスと別れロビンと買い出しに付き合うことにした。
ロビンと並んで歩きだすと、すぐにその新鮮さに気づいた。
「なんか、こうやってロビンと二人で歩くの、すげぇ新鮮な感じする」
「確かに。たまーに食堂で二人きりってことはあるかもですけど、基本は誰かいますもんねぇ。そもそも、俺たちはサーヴァント契約のある間じゃねぇですし」
「マスターじゃない俺のことまでいつも気にかけてくれるもんな、ロビンは。ほんと面倒見いいよな」
「……ま、下心もありますがね」
小声で言った内容が聞き取れずロビンを見たが、肩を竦めるだけで言い直すことはしなかった。
そこに、風が吹いてロビンのパーカーが揺れる。前をいつも開けているため、割れた腹筋や逞しい胸筋が見えている。
「…なーに見てんすかぁ?」
「あ、ごめん。これが着瘦せってやつかって」
「オタクんとこは見るからにムキムキな正統派英霊ばっかりですもんねぇ」
見た目に細く見えるサーヴァント、というのは、確かに唯斗のサーヴァントではサンソンくらいだ。サンソンとて、先日の軽装姿でやはりサーヴァントだなと感じさせる体つきなのがうっすら分かったほどである。
ボウガンを安定させて連射するだけでなく、木々を渡り山を越えて川に入るその泥臭い戦い方は、やはり体幹が重要になる。腰回りの太さはそういうことだろう。
「…なんか、マジでロビンみたいなサーヴァントが聖杯戦争で一緒だったら恋に落ちそうだよなぁ……」
「な、なに言ってんすか急に」
ロビンは動揺しているが、こんなこと言われ慣れているだろうに、律儀なことだ。
「面倒見よくて、彼氏力高くて、男前で、でも飾らなくて、肩も張らないし、それで格好いいじゃん?アーサーに『君を守る』って言われたときもこいつやべぇなって思ったけど、同じくらい罪なサーヴァントだと思う」
「…、あんたも夏だと浮かれることあるんですねぇ」
唯斗の言葉への返答としては少しずれた内容に、唯斗はどういうことかと不思議に思って隣の男を見上げる。
しかしその寸前で、ロビンは唯斗を建物の間の路地に連れ込んだ。一気に日陰になり、そして距離が縮まって目の前にロビンの精悍な顔が迫る。
「っ、ロビン…?」
「いつもよりガード緩んでますよ。態度も、言葉も。あぁ、夏だからってのもあるだろうけど、ここのところ、唯斗さんもだいぶ普通の少年っぽいところ出てきましたし。それもあってってことか」
そのオレンジの髪の合間から見える瞳は、気の抜けたたれ目ではなく、濡れた男の目をしていた。じっとこちらを見つめる目線には、明らかに獲物を狙う者の鋭さがある。
「どういう、」
「手の早い男には警戒しろって話です」
そう言って、ロビンは唯斗の頬に顔を寄せた。まさか、と思った瞬間、唯斗の頬には、ぷす、と指が差される。
「ったく、俺があんたを連れ込んでから、少なくとも10回はキスできてましたよ。油断しすぎだっつの」
その呆れた声音によって、一気に空気が弛緩する。
さすがに唯斗でも、これがロビンの自制による「許し」だと気づく。そして、たとえばこれがアキレウスであれば、本当に手を出されていたことも理解する。
ロビンは己の欲よりも唯斗を大事に思う気持ちの方を強く優先させてくれたのだ。
「…、確かに気ぃ緩んでた。気を付ける」
「そうしな。あんただけじゃない、みんなここじゃ緩んでる。自信ないならなるべく騎士王と一緒にいるこった」
「…そうだな」
「ん。じゃあ、デートの続き戻りましょうや」
ニヤリとして言ったロビンに、唯斗も苦笑して頷いた。