サーヴァント・サマー・フェスティバルII−3


翌日、マシュが考えたストーリーとジャンヌ・オルタの作画スケジュールがまとまった。今回は作品柄、作画領域が少なくなると考えられており、かなり余裕ができそうとのことだ。
そのため、この日は午後がまるごと自由時間となるとロビンから告げられた。

とはいえ、もはや2ヶ月もこの特異点に滞在しているため、大半の場所にすでに行き尽くしている。今さら自由時間を与えられても、というのが正直なところで、立香も「もうロコモコも飽きたよね」なんてマシュと話している。

ふと唯斗は、今こそ考えていたことが実行に移せるのでは、と思い立つ。それは、つい先月(感覚としては3ヶ月前)に誕生日を迎えていた立香とマシュのことだ。
去年の二人の誕生にあたっては、唯斗は「何気ない普通の時間を過ごすこと」をロマニから提案されて実行に移した。
今年はサーヴァントたちが立香とマシュのことを盛大に祝っていたため、唯斗もそれに加わるに留めていた。ちなみにその前月の唯斗の誕生日でも同じことが起きている。

外の世界であれば、立香は修学旅行を控えているはずの学年だ。しかし、そこに戻れるかどうかは分からず、恐らく叶わない夢となるだろう。
私立であればハワイに修学旅行に行くこともあるというため、それに近いようなことができるのでは、と唯斗は考えていたのだ。


「立香、ちょっと午後付き合ってもらっていいか。マシュも」

「うん、いいよ。どうせやることないし」

「了解です!」


二人が応答したのを確認してから、唯斗は集まっていたジャンヌ・オルタたちの部屋を後にする。アーサーは唯斗に何か考えがあると理解していることと、アーサーにお供を頼まなかったことから、静観してくれるようだ。少し気恥ずかしいため、一人にしてくれるのは助かる。

そうして唯斗がやってきたのは、ルルハワで陽キャを振りかざしているという二人のサーヴァントが宿泊しているコテージだった。
若干緊張しつつ、どこにいるのかと探し始めると、すぐにそのでかい声が響いてきた。


「超映えるじゃーん!さっすがパイセン!」

「焼きマシュマロはJKの基礎教養だし!」


コテージの庭でマシュマロを焼いてスマホで写真に収めているのは、鈴鹿御前と、今年の2月にカルデアにやってきた清少納言である。
バレンタインのとき、唯斗は特に問題なくサーヴァントたちと交流を深めていたが、立香はまたトンチキなことに巻き込まれていたらしく、その際に清少納言と紫式部の二人がカルデアにやってくることになった。
紫式部はカルデアの地下に巨大な図書館を構築しており、話題になっていた。

まだ縁がなくて唯斗は挨拶しかできていないが、本当は色々話してみたかった。ただ、それを躊躇うほどのパリピっぷりなのである。ただ、今回はそれが重要だ。


「あー…ちょっといいか」

「ん〜?うわっ、もう一人のちゃんマスこと唯斗っち!!」

「ほんとだ、珍しいこともあるもんだね。どうかした?」


まさにギャルな風体の清少納言、セーラー服を着ている鈴鹿御前。日本史サーヴァントが一番とっちらかっている。
清少納言からマシュマロの刺さった串を手渡され、「へいよーカルデラックス」と謎の挨拶をされた。


「…っ、その、折り入って頼みがあるんだけど」

「頼み〜?うちらに?」


二人揃ってキョトンとする様子は、本当に女子高生のようだ。正直、唯斗としてはワイバーンの方が慣れていると言えるくらい異種族ですらある。


「今日の午後は、俺も立香もマシュもフリーなんだ。それで、一緒に出掛けようと思ってるんだけど、二人にも来て欲しくて」

「全然いいけどさ、なんでうちら?」

「…へぇ、唯斗、だっけ?そういう気遣いとかするんだ」


清少納言は不思議そうにしているが、鈴鹿御前はすぐに唯斗の意図に気づいたらしい。そのあたりの機微の汲み取りができるあたり、このサーヴァントの神性を感じてしまう。


「外の世界に戻れないマスターのために、普通の高校生っぽい時間を過ごせるようにしよう、ってわけっしょ?いいじゃん!かしこまり!」

「なるほ!うわ気遣いまでイケメンじゃん!やば!」

「まぁ、そういうこと。俺は…そういうの、分からないし、分かろうとしないまま過ごしてきたから。それがもっと早くにできてたら、グランドオーダーで最初からあいつのこと、支えてやれたのにって、今でも思うんだ。それが良い悪いじゃないってのは分かってるけど、今はそうじゃないのも事実だ。だから、少し時間くれたら嬉しい」


清少納言と鈴鹿御前は顔を見合わせ、先ほどまでのパリピらしい表情から、どこか大人な穏やかな笑顔に変わる。


「…君のそういうところ、ちゃんマスはずっと救われてたと思うよ。あたしはカルデアに来たの最近だけど、すぐ分かったもん」

「あたしも来たばっかだけどさ。あんたら良い組み合わせだよ。まっ、ちょうどあたしらもプロJKとして遊ばなきゃって思ってたから、渡りに船だし!そうと決まればすぐ凸ろ!」

「うえーい!!」


再びからりと切り替えた二人は、早速焚き火を消してマシュマロを一息に食べ尽くし、勇んで唯斗を連れて歩き出した。行動も切り替えも早すぎる。だが、二人はしっかりと唯斗の気持ちまですべてくみ取ってくれて、その上での切り替えだ。
たとえどんなにイメージとかけ離れた姿でも、母国のサーヴァントにこうしてもらえていることが、思いのほか嬉しいことだった。


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