サーヴァント・サマー・フェスティバルII−4
清少納言、鈴鹿御前とともにワイキキストリートを闊歩してホテルに向かっている途中、珍しい組み合わせに視線を浴びる中、意外な人物に声をかけられた。
「おや、これはまた不思議な組み合わせですね」
「天草か、お前もルルハワに来てたとは」
「うわ出た、胡散臭いヤツ!」
「聖杯オタク君さぁ〜」
途端に清少納言も鈴鹿御前も天草を弄り始める。初対面かは分からないが、一瞬で二人はそういう言動でいけると見抜いたらしい。事実、天草は苦笑する。
「日の本が誇る枕草子の作者と鈴鹿山の天女にまで言われるとは、さすがに傷つきますね」
「絶対嘘だし」
「はい、嘘です」
「うわやば〜」
ギャルと天草が喋っているところを見るだけでなんだか面白くなる。天草もこれでコミュニケーション能力は鬼だ。どんな相手でも動じずに会話できる。
ただ、年功序列が是となる日本だけあって、より時代が古い二人に、天草も多少は頭が上がらないようなフリをしていた。
そんな天草も思えば立香とは年相応なやりとりをしていたような気がする。もちろん、天草は受肉してから数十年を生きているが、それはあくまで「生き返った死者」としての時間であって、「生者」のものではない。生者の頃の性質が変わらないことから、天草の基本的な人格は少年のものだ。
それならば、と唯斗は天草も誘ってみることにした。正直、この二人を制御できる自信がない。
「そうだ、天草も誘っていいか」
「え、マ?りょ」
僅か3音で驚きと了解を示した清少納言。17音でひとつの物語を構築する歌人なだけある。
鈴鹿御前も「あんたが言うならしょうがないし」と受け入れてくれている。
「何のお誘いでしょう?」
「一言で言えば、高校生ムーヴに付き合ってくれって話」
「はぁ…」
よく分かっていないながら、天草は特に断ることもせず同行してくれた。
道中、唯斗が事情を説明すれば、いよいよ納得した上で応じてくれる。
「なるほど、そういうことであれば。お力になれるかは分かりませんが」
「そんな固くなるなって天ちゃん」
「連続テレビ小説みたいな呼び方はやめてください」
「草」
「それは私を呼んでいるんですか、ただ草を生やしているんですか」
最初は僅かに警戒していた清少納言と鈴鹿御前だったが、天草が意外と話しやすいことに気をよくしたのか、けらけらと笑いながら会話を楽しんでいた。
そうしてホテルに着き、ジャンヌ・オルタの部屋を勢いよく開けると、やはり清少納言も鈴鹿御前も同じく室内に突入した。
「たのもー!!」
「華のJK参上だし!」
「えっ!?」
中にいた立香は驚愕して、真ん中にいる唯斗を見てさらに唖然とする。ジャンヌ・オルタやロビンも驚いてこちらを見ていた。
「おや、清少納言殿に鈴鹿御前殿まで」
「あ、牛若丸君やっほー」
牛若丸だけは泰然と出迎えているが、立香とマシュはこちらに駆け寄って、唯斗と鈴鹿御前たちを交互に見る。
「……え、どういうメンツ?」
「私もいますよ」
「うわ天草までいる」
「うわ、とは失礼ですね」
天草まで出てきたことで、いよいよどういうことだという雰囲気になる。
そこで、唯斗が口を開いた。
「よし、じゃあ出掛けるぞ立香、マシュ」
「え、このメンバーで?すご!」
「これはなんとも愉快な一団になりそうです…!」
立香とマシュはよく分からなさそうにしながらも、陽気なギャル二人と、朗らかにそれをいなす天草というメンバーが刺激的であることを理解して、ワクワクとする。
アーサーはこのメンバーを見て唯斗の意図を理解したようで、微笑んでいた。
「楽しんでくるといい」
「水分補給しっかりな〜」
「夜には戻ってきなさいよ、明日からの作業分配するから」
アーサー、ロビン、ジャンヌ・オルタにも見送られ、立香とマシュも加えた6人でホテルを後にする。
さすがというか、通りに出る頃には立香はすでにテンションを上げており、清少納言とともに先頭を歩いて「どこ行く?!」と話している。マシュも鈴鹿御前にJKの流儀を教わりながら、前の二人と一緒に騒いでいた。
「いいマシュ、マジ?はもう古いから。今は一言、マ?だけで事足りるから」
「そうなのですか?」
「あー長い長い、もう長いし。7文字とか多過ぎだし。今のもマ?だけでいーの」
「なぎこさん、あそこに呪いの人形みたいなの売ってるよ!」
「マ!?ちょっと見に行こちゃんマス!」
「今みたいにね」
真面目に「マ?」と言う練習をしているマシュ、土産物店のショーウィンドウに鎮座する禍々しい木製の人形を見るため走り出す立香と清少納言。
唯斗が思っていたよりもずっと、彼らの修学旅行生感がすごい。