サーヴァント・サマー・フェスティバルII−5
「マジで高校生みたいだな…」
「微笑ましいですね」
そしてそれらを後ろから見守るのは、唯斗と天草だ。4人が暴走しないように見守る役目として二人は加わっているようなものである。
しかし、傍観は鈴鹿御前に許されない。
「引率の教師か!あんたらもテンアゲでキメるし!」
「ではテンションを上げるためにここはひとつ、あそこの屋台のクレープなどいかがです?」
「え、クレープあんの?マ?」
「あっ、あそこに屋台があります、鈴鹿さん!」
マシュが指さした先には、お洒落な建物の軒先でクレープを売っている屋台があった。鈴鹿御前は目を輝かせ、呪いの人形と自撮りをしている立香たちに声を張り上げる。
「マスター!なぎこー!クレープ食べるし!!」
「「クレープ!?」」
声を揃えて喜色を浮かべた二人は、前方の土産物屋からこちらに走り戻ってくる。
「いやクレープ屋あっちだし」
「早く言ってよ鈴鹿〜」
「そうだよ、あたしら無駄に走っちゃったじゃーん」
「はは、それなら競争しますか?負けた人の奢りということで」
すると、天草はそんな提案をした。サーヴァントが何を言っているんだ、と思った唯斗だったが、立香を含め全員が乗り気になる。
「いいこと言うじゃん。ま、あたしの一人勝ちだろうけど」
「あたしちゃん走るのとか向いてないけど、サーヴァントになってからのが体調子いいからいける気がする!てかさすがにちゃんマスたちには勝てるっしょ〜」
「我々サーヴァントはハンデありですよ」
乗り気のサーヴァント3騎だけでなく、立香とマシュも軽く準備体操している。
「やるからには負けないよ、マシュ!」
「はい!私も今はデミ・サーヴァントとしての性能はほぼありませんので、人間としての脚力での勝負です。良い勝負ができるかと!」
これは確定してしまった流れだろう。そしてやるからには負けたくない、と唯斗も思ってしまう。これは最下位にさえならなければ奢らずに済むものであるため、負けないことを考えればいい。
それはつまり、誰かを負かせばいいということだ。
「では、マスターたちがスタートしてから5秒後に我々もスタートということで」
「かしこまり〜」
「りょ!」
サーヴァントたちは人間勢のスタートから5秒で出発となる。なお、ここから屋台までは100メートルちょっとある。100メートル走の高校生男子の平均タイムは12秒半ほどであるため、素の脚力が高いマシュ、強化がかけられる立香と唯斗であればもっと早くにゴールするだろう。
まずは唯斗と立香、マシュが並んで、その後ろに天草たちも控える。
天草はニコニコとしながら号令をかけた。
「それでは位置について、よーい、ドン!」
掛け声とともに、唯斗は魔術で強化した足によって即座に1着に出るが、立香は元の足が速い上に強化もかけているため、すぐ追いつかれた。マシュも速度が落ちないためすぐ後ろに食いついている。
そして5秒後、立香に追い抜かれたところで、サーヴァントたちがスタートした。
僅か1秒で鈴鹿御前は50メートル以上、天草と清少納言もすぐ後ろにつけている。さすがサーヴァントだ。
「ヴィアン!」
しかしそこで、唯斗は後ろを振り返って召喚術式を起動した。直後、天草と鈴鹿御前の足下に、少し離れた場所で写真撮影会をやっているメイヴの大量の日焼け止めオイルを転移させた。
二人は避けきれず、コンクリートを濡らすオイルに足を滑らせる。
「な…っ、!」
「うおっ、」
二人はまさに絵に描いたように尻餅をつき、その横を颯爽と清少納言が追い抜く。
ちょうどそこで、立香とマシュ、続いて唯斗もゴールした。
鈴鹿御前はすぐに立て直して一気に跳躍し、清少納言とほぼ同じタイミングで到着する。
その2秒後に、天草も屋台に辿り着いた。
「まさかの妨害でしたね」
「マジずりぃし!まぁでも策を弄するのも賢い手よね」
「あたしにはトラップしなかったんだねぇ」
「やっぱあんたは貴族だしな」
唯斗の忖度に、「ずるい」と鈴鹿御前と天草は不満を漏らすが、クレープの美味しそうな匂いにすぐ関心を切り替える。
「では負けた私が奢りましょう。言い出しっぺですからね」
「じゃあ俺チョコバナナね!」
「マスターは遠慮がないですね」
「天草ならいっかなって。ほらマシュは?」
「では私はイチゴを」
立香とマシュは特に憚ることなく注文する。一度裏切っている天草であるため、二人とも扱いが雑だった。そうなる相手も極めて珍しいのだが。
清少納言も少し迷った末に、「あたしちゃんブルーベリーチーズね」と天草に注文を告げる。メニューには和風の抹茶などもあったが、見向きもしなかった。
「じゃああたしはバニラアイスにするし。唯斗は?」
「俺もチョコバナナにする」
「はいはい、承りましたよ」
天草はまとめて注文してお金を払う。それにしても、このルルハワでは独自の通貨が流通しているが、どうやって金銭を手にしたのだろうか。唯斗は汚いお金じゃないか聞きたくなったが、さすがに失礼かと踏みとどまった。