サーヴァント・サマー・フェスティバルII−6
できあがったクレープを渡されて、それぞれワイキキストリートに向けて歩きながら食べ始めるが、唯斗は天草がただのアイスを食べていることに気づく。
前を自撮りしながら食べ歩く4人を見つつ、唯斗は右隣で涼やかにアイスを食べる天草に少し呆れた。
「クレープ屋でアイス頼むって…」
「ふふ、情緒がないのもまた趣があるというものですよ」
そう言ってバニラアイスを食べ進める天草は、今は赤いカソックを来ていない。先ほどのオイルに汚れた服は、鈴鹿御前も天草も霊衣であるため纏い直して綺麗にしていたが、その際に天草は黒い神父服だけにしたらしい。
「なんかそれでもなお暑苦しいな」
「この格好ですか?ふむ、では私も霊衣を変えてみましょうか」
「えっ」
「ルーラーですので自分でできるんです」
天草はおもむろに、光を纏って霊衣を変更した。自分でこんなことができるとは、この男なんでもありである。
そうして新たな装いとなった天草は、完全に現代風になっていた。
黒いブーツとズボンに、白いシャツと黒いジャケットという格好で、暑苦しさは依然としてあるものの、その端正な顔に似合った格好いい仕上がりとなっていた。
「どうでしょう」
「…センスいいのが腹立つ」
「お褒めにあずかり光栄です」
ニコリとして、天草は再び歩き始める。隣を引き続き歩きながら、ふと、唯斗は食べ進めていたクレープの、まだ口をつけていない片側を差し出す。
「一口食うか?せっかくだし。ま、お前の金だけど」
「おや、いいのですか?では」
すると天草は、唯斗の手を掴むと、なんと今まで唯斗が食べていた方をわざわざ自分に向けさせて、そこから一口含んだ。
「甘いですが、悪くないですね」
「え、なんで」
思わず聞いた唯斗に、「聞いたな」という表情を浮かべる天草。これは間違えた、と思った瞬間、天草はこちらに顔を寄せて耳元で囁く。
「あえて間接キスを選んだ方が、俺のこと意識してもらえるかと思って」
「ば、か言ってんじゃねぇ…!」
「さぁ、どうでしょう」
天草は相変わらず食えない笑みで顔を離す。そこに、遅い二人に気づいたのか、鈴鹿御前と立香がやってきた。
「あんた、そうやってハニトラで聖杯手に入れる気?見え見えだし」
「おや信用がないですね。唯斗さんはこんなことで絆される人じゃないですよ。あぁ、聖杯については、というだけですがね」
「うっわ、ちょっと気をつけるし唯斗。こいつ、本気じゃないけどあんたが落ちたら本気でかっ攫う気よ。まだ聖杯目的のが健全な気ぃするし」
天草は、当然ながら本気で唯斗に気があるとか恋愛感情を抱いているとかではない。相手にしろと言われれば相手に出来る、という程度だろう。ただ、それで唯斗が本気で天草に思いを寄せるようになってしまったというのなら、応じてもいいというような感じのようだ。
それに対して、立香はニヤニヤとからかうような笑みを浮かべる。
「えー?実は天草、何か企んでるとかじゃないの〜?そんな服までキメキメにしちゃってさぁ〜」
「そんなことありませんよ。暑苦しいと言われたので変えてみただけです」
「ほんとにござるかぁ〜?」
「ほんとにござるよぅ」
クスクスと笑う二人。鈴鹿御前も呆れたようにしつつ、表情は柔らかい。そこに、清少納言とマシュもやってきた。
「ねぇ見て見てちゃんマス〜!あたしちゃんのクレープ鳥に持ってかれた衝撃のシーン!」
「ちなみに泥棒鳥はなぎこさんが撃ち落としていました…さすがキラキラのアーチャーです」
「へっへーん。焼き鳥にしよ」
清少納言が差し出したスマホには、突然上空から滑空してきた鳥にクレープを奪われ、その鳥を撃ち落とすところまでしっかり映し出されていた。今のこの一瞬でそんな劇的なことが起きていたとは。
特異点で生じたエネミーだったため、焼き鳥にする前に消失してしまったが、特に気にせず、一行はその後もワイキキストリートを中心に歩き回った。
アロハシャツを選んだり、雑貨屋で謎の置物の用途を予想したり、変なサングラスをかけて回ったりと、もう慣れきってしまった通りのはずなのに、こうして回ってみると新しい発見ばかりだった。
立香とマシュも、ギャルな二人のノリにずっと笑っている。
そうして、鈴鹿御前がマシュに服を選ぶと言ってレディースのブティックに入ると、同じく女子である清少納言だけでなく、マシュの服ならばと立香も入っていった。
あまり広い店ではなさそうだったため、邪魔にならないよう、唯斗と天草は外のベンチで座って待つことにする。