サーヴァント・サマー・フェスティバルII−9
ループ11周目は、「悪役令嬢は悪女をぶち抜きたい!」という体育会系を拭い去れない悪役令嬢モノになったが、かなり部数が捌けて終わった。極めて完成度も高く、もう自信を持って売れると判断して販売できるようになっている。
ただ、それでもメイヴには及ばず、ループは12周目に入ってしまった。
なお、刑部姫のコピー本「失楽園」は、マーリンにアヴァロンへと連れられて閉じ込められるという話だった。ギルガメッシュのときといいガウェインのときといい、たまにこの手の薄暗い話が出てくるのは彼女の性癖だろうか。
初日のタスクをこなす片手間に次の同人誌のネタや構成を考えるのも慣れたもので、一通り終わる頃にはすでに大体の構成はできあがっていた。あとはこれをネームの形にするだけだ。
いつも通り、ジャンヌ・オルタと立香で話し合いが始まった頃、いつもと違うことがあった。買い出しに出た先で刑部姫が目覚めるというのがいつもの流れだが、それより先に内線が鳴ったのだ。フロントからの電話である。
マシュが出ると、どうやら来客とのことで、信長と長可が来ているそうだった。
部屋に通すよう伝え、5分もしないうちに扉がノックされる。
マシュが扉を開けば、水着にダサいバスタージャージを羽織った信長と、同じくバスターシャツを着た長可が立っていた。
「よう立香、マシュ!わしが来てやったぞ!」
「信長さんに森君まで!ルルハワにいらしてたんですね」
「夏がわしを呼んでおった」
マシュと立香が信長を出迎えると、後ろから長可も入ってくる。長可は部屋をぐるりと見渡してから唯斗の姿を見つけると、パッと顔を輝かせた。
「殿様!」
「うおっ、」
そしてとてつもない勢いで突っ込んできた。慌てて立ち上がって衝撃に備えたが、こちらに突っ込んできた勢いのわりに、唯斗を抱き締めたときの衝撃はほぼなく、完璧に直前で制止して唯斗を抱き留めたようだ。
「水着か!?侘びてんなァ!」
「長可も今風でいいな。似合ってる」
「あんがとよ!にしてもシャツは閉じてて正解だぜ、開けてたら連れ去って襲ってた」
「森殿、あまりマスターを困らせないでくれ」
快活に笑うわりに言っていることはえげつない。苦笑いしていると、アーサーが見かねて長可に苦言を呈するが、長可は唯斗を抱き締めたままアーサーを睨み付けた。
「あァ?うるせェなぶっ殺すぞ」
「…ほう、なら試してみるかい?」
「上等だぶっ飛ばしてやらァ!!」
「ああもう、長可。俺といるときは俺のことだけ見とけ」
いちいち他のサーヴァントに突っかかられては面倒なため、もう他のサーヴァントに意識を向けずにいろという意味で言った唯斗だったが、言った直後にちょっと意味合いが変わってくることに気づいた。
言葉のチョイスを間違えた、と思ったときには時すでに遅し、長可はやたら嬉しそうに唯斗をさらに深く抱き締めた。筋肉で圧死しそうだ。
「殿様ァ〜!くそかっけェこと言うじゃねぇか!さっすが俺の殿様だぜ!」
「……マスター?」
「アーサー、1000年くらいお兄さんなんだから我慢できるな?な?」
頼むからこじれさせるな、とアーサーを必死に止めれば、アーサーは憮然とした様子ながら黙っていてくれた。一方、例の姫に何も起こらないはずもなく。
「あ^〜いいですわゾ^〜」
「な、何を言っておるんじゃこいつ…」
突如として発作を起こした刑部姫に、信長はドン引きする。立香も例のが始まったと苦笑した。
「おっきーの持病だから…」
「む、こやつは例の、姫路城のオタク姫か?」
「そう、刑部姫。おっきー、コピー本出すの?」
「よく分かったねマーちゃん!これはもう、忠犬猛犬大型犬なバーサーカーとのハートフルBLコピー本出さないとバチが当たるってもんよ!」
やはりこうなったか、と思っていると、長可も刑部姫を見て珍しく引いたようにしていた。
「あー、あの播磨の。黒田の城だよな?殿下が築城した」
「そうじゃ。サルが築いた名城、姫路城の主。まぁ、わしや勝蔵が生きている間に完成した城ではないが…わしが言うのもあれじゃけど、日本サーヴァント、イロモノ多過ぎ?」
「ちげぇねぇ!」
豪快に笑った長可。笑う度に動く胸筋にそろそろ本当に死にそうだったため、さすがに唯斗はアーサーに救難信号を送ったのだった。