サーヴァント・サマー・フェスティバルII−10


12周目で発行した同人誌「カレー×ライス」はインドがテーマになっており、そのスケールの大きさとクオリティから、過去最も売り上げたタイトルとなった。
しかし、ここでいよいよメイヴのことが無視できなくなってくる。どうやっても勝てないのだが、その原因が作品そのものだけでなく、メイヴがサバフェス直前に行っているメイヴコンテストなるふざけたコンテストによって客寄せが行われ、その前評判によって数が増やされているのだと判明。

またそれだけではなく、BBのことも考えるようになってきた。彼女の本当の目的はなんなのか、本当に善意でペレを復活させるために聖杯を必要としているのか、そうしたことが疑問視されたのだ。これも、サバフェス優勝が視野に入ってきたためのことである。
この問題については、不審者のように徘徊している巌窟王からXXを味方につけておいた方がいいとアドバイスを受けたため、XXと話し合いで決着をつける方向で話を進めている。

そこで今回は、同人誌制作に並行して、メイヴ対策とXXとの交渉、BBの目的の調査を行うことになった。全員、この周で終わらせるという意志がなぜか共有されていた。

BBについては巌窟王が暗躍しているため、メイヴ対策とXXとの交渉については立香がルルハワにいるサーヴァントたちの力を借りて行うことになる。
一方、唯斗は唯斗のサーヴァントたちを動員して、できる限りの単純作業をやっておくことで、立香たちがいない間に少しでも同人誌を進めておくことになった。


「と、いうわけで集まってもらった」


ジャンヌ・オルタの部屋のシッティングスペースに鎮座するテーブル、そこに並んで座った男たちを見渡すと、アーラシュが楽しそうに笑う。


「まっさか同人誌制作なんてことやるとはねぇ」

「絵心が期待できる者はいなさそうだがね」


エミヤはいつも通り皮肉を言うが、それは皮肉というより端的に事実でもあった。
並んでいるのは、アーサー、ガウェイン、エミヤ、アーラシュ、ディルムッド、アキレウス、サンソン、マーリン、長可というメンバーである。全員見るからに駄目そうだ。
なお、そもそも印刷会社の経営者であるギルガメッシュと、こんなこと頼めないオジマンディアスはここにはいない。

そして立香たちも、メイヴやXXの対策で外に出ているため、ここには唯斗とそのサーヴァントしかいなかった。


「僕はジャンヌとマリーの手伝いをしていたので、大まかなことは知っていますが、実際にやったことはなく…」

「バーサーカーに事務仕事とか正気か殿様!」


力になりそうなサンソン、最も人選ミスな長可と続けて言うが、今はバーサーカーの手も借りたい時なのだ。ちなみに刑部姫のコピー本は、長可の唯斗に対する独占欲を描いた「狂犬注意!」というものだった。


「安心しろ、まずは経験があるアーサー以外の全員の実力を測る。目の前のタブレットに表示してある枠線をなぞって、指定した形にカットして張り付けて、色を塗りつぶす。それだけだ」

「それだけであればいけそうな気がしますマスター。我が王と私だけで事足りたのでは」

「おいおい、バスターのセイバーが何言ってんだ」


余裕をぶっこくガウェインに、アキレウスは呆れた声を出す。見るからにこういうのが苦手そうなアキレウスは最初から諦めムードだった。


「よし、じゃあ始め」


とりあえずものは試しだ。屈強な男たちがタブレットにペンを走らせて操作しているのを見ると極めてシュールだが、今は選り好みしている場合ではない。
5分後、全員の作業が終わったのを確認して、それぞれの出来栄えを順に確かめていく。

まず大口を叩いたガウェインだが、枠線とトーンは駄目だった。ベタ塗り要員に決定である。そのベタ塗りもそこそこ雑だ。


「…、まぁお約束だな」

「申し訳ありません…」

「いいよ、初めてだし。ガウェインはベタ塗りな」


続いてエミヤとアーラシュを見てみると、エミヤはすべて可もなく不可もなくという出来、アーラシュは枠線とトーンは綺麗だがベタ塗りが雑だった。こういうところはアーチャーならではだろうか。


「お、二人ともいい感じだ。後のメンバー見て決める」


この二人であれば、人手の薄いところにアサインすることができる。
次にディルムッドとアキレウスを確認する。ディルムッドは枠線はよくできているが、他は微妙だ。真面目だが不器用なため、枠線に集中させるのが良いだろう。アキレウスは意外にも、枠線とベタ塗りがそれなりにできていた。何より、終わるのが一番早かった。


「よし、じゃあアキレウスが枠線を一気にざっとやってから、ディルムッドがその調整をする形にしよう」

「やればできるモンだな」

「アキレウスができたってのはぶっちゃけ意外だった」

「俺も自分でそう思うわ」


そう言って笑うアキレウスの端末から、今度はサンソンと長可のタブレットを確かめると、唯斗は驚いて目を丸くした。
両方とも、極めてよくできていたのだ。


「いや、サンソンはまぁ一番期待してたから、期待通り全部よくできてるけど…長可も全部できてんじゃん…やっぱ書道も茶道も嗜んでるだけあるな」

「おうよ!意外と楽しかったぜこれ!」

「期待に添えて良かったです」


サンソンはホッとように、長可は楽しそうに答えた。バーサーカーなのにこんなこともできるのか、と唯斗は感心しつつ、なかなか戦力があるものだと安心した。
そして最後にマーリンのものを見たときだった。


「うわ…」


マーリンはまったく言うことを聞いておらず、課題はいずれもやっていなかった。代わりに、やたら上手い花の絵やティーカップの絵などを描いていた。


「だってつまんないんだもーん」

「かわいこぶるな殴るぞ。でもうまいな」

「だろぅ?なんせ1500年幽閉されているからね、いつも見ているものはなんか描けたよ」

「…なるほど。いや、これをトーンやブラシとして登録すれば、背景や効果の負担減るか…よし、マーリンは想定してなかったけど素材役に抜擢する」


こうして分担は決まった。枠線はアキレウスとディルムッド、トーンはアーラシュとエミヤ、ベタ塗りはガウェイン。サンソンと長可、アーサー、唯斗はすべてできるため、交代して休ませる役目だ。マーリンは後ほど素材の登録を行わせる。

そして、まさかこんなことになるとは、というのは、何も唯斗だけに限った感想ではなかったようだ。


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