悪性隔絶魔境新宿II−6


その後、立香は無事に戻ってきた。アルトリアとジャンヌが説教をしながら地下に降りてきた立香を出迎えた唯斗は、その後ろにいる人物に、やはりか、と納得した。
その人物はシャーロック・ホームズ、第六特異点のアトラス院で出会って以来となる。
立香に電話をかけてきた巌窟王は、ホームズが変装していた姿だったらしい。

ホームズ、そして立香の端末から繋がったカルデアとで改めて合流と顛末の報告が行われ、モリアーティの真名をアルトリアとジャンヌにも明かした。
やはりモリアーティを許して信じることを決めた立香に、モリアーティは再度、サーヴァントとして力を尽くすことを誓い、アルトリアたちは呆れつつも、立香らしさに絆されている。

これまでの状況の共有は済んだところで、次はホームズの番だ。


「さてホームズ君、あれだろ、情報を持ってきてくれたのだろう?恐らくは…」

「あぁ、この星を破壊するという言葉についてだが…結論から言うと、十分にあり得る」


モリアーティが切り出すと、早速ホームズは、幻影魔人同盟の目的である地球の破壊は可能だと断じた。
すかさずダ・ヴィンチが異論を口にする。


『待った待った!そんなの不可能だ!この星にはいくつもの安全装置がある。それらすべてをくぐり抜けて星を破壊するなんて、あり得ない』


そう、地球には抑止力と呼ばれる大いなる力が存在する。あらゆる形で、星ごと命を失うような場面ではその安全装置が働くはずなのだ。

ホームズは壁に凭れて立ちながら静かに頷く。


「その通り。だから、星を破壊するためにはまず根底から覆すしかない。それは獅子王が聖都でやろうとしたこと。そして、エジソンが聖杯の力でなそうとしたこと」


それを聞いて唯斗はハッとする。抑止力が働かない場所、それは、そもそもその必要がない場所ということだ。


「まさか、ここはもう、人理から、歴史から完全に外れた世界なのか?」

「さすがミスター雨宮、ご名答だ」

「そっか、歴史から外れたら歴史に影響しないから、地球を滅ぼすなんてことができちゃうんだ」


唯斗の思い至ったことは合っていたようで、立香も合点がいったようにする。


『あーそうか!そういうことか!スタッフ全員集合!』


通信でもダ・ヴィンチが同じ結論に至ったのか、システムでの検証を開始する。置いてけぼりにされたからか、ジャンヌは不機嫌そうにして唯斗に突っかかってきた。


「ちょっと、あんたらだけで合点してないで説明しなさいよ」

「第五特異点で、エジソンは聖杯を使って特異点のアメリカを歴史から切り離して、永遠に続く国にしようとした。第六特異点では、獅子王が聖槍ロンゴミニアドに人間の命を格納して、これを独立した世界の理に昇華することで歴史から離れるつもりだった。そうやって歴史から切り離された空間であれば、もうそれは歴史ではなくなる。つまり、地球上の事象ではなくなる」

『そういうこと!この世界はもう切り離されている!つまり、そちらの新宿で何が起ころうと人理には影響がないんだ!』


唯斗の説明に重ねて、ダ・ヴィンチが観測された結果を照合する。やはり、すでにこの新宿という特異点は完全に歴史から切り離されており、もはや歴史に影響を与えることがない。だからこそ、地球を破壊するだなんてことができるのだ。


『そこまで切り離されていれば、強制的にレイシフトして君たちを帰還させることも可能だ。歴史に影響はほぼない、戻ろうと思えば戻れる』

「でも…」


立香は帰還しても問題ないという言葉を聞いて、表情を曇らせた。モリアーティは分かっていたように頷く。


「そう、影響はないが、その代わり、この新宿は悪徳の都と化したまま、もう一人の私によって破壊される…星もろともにね」

「そんな…!」

「だが君たちさえ残れば何も問題はない。私もサーヴァントたちも新宿とともに死んでしまうけれど、それも問題ではない」

「いや、それは間違ってるよ」


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