禁忌降臨庭園セイレムI−11


メディアがカーター家を工房化したことで、ある程度の認識阻害から放たれた。

やはり唯斗がずっと感じていた変な感覚は、認識が阻害されていたことによるものらしい。恐らく、まだ思い出せていないことがある。それはメディアが言っていた、まだ解析できていない因果によるものだろう。

それでも、ホプキンスの正体は思い出すことができた。
ホプキンスはイングランド東部、ノーフォークやサフォークで魔女狩りを職業的に行った人物で、三十年戦争期間中に300人もの無実の人々を処刑に導いた。
当時のイングランドはすでに拷問を禁じていたが、ホプキンスは拷問スレスレの方法で自白を強要し、イングランドで処刑されたすべての「魔女」のうち3割をたった一人で処刑させたという。

しかしホプキンスがでっち上げた多くの罪はすぐに明らかになり、1646年を最後にホプキンスは公の場から姿を消す。その後、彼がどうなったのかは記録に一切残されていない。
1692年でも生きていた可能性はゼロではないが、相当に高齢のはずだ。
そしてホプキンスの引退をほぼ時を同じくして、17世紀末から欧州全体で魔女狩りは著しく衰退していき、多くの魔女裁判や関連法が形骸化していく。

どういう存在は定かではないものの、ホプキンスがセイレム魔女裁判にやってくるなど悪夢もいいところだ。
ティテュバはアビゲイルにとっても大切な人物であるため、早く助け出さなければならない。

そこで、今度は立香とマシュ、メディア、サンソンでホプキンスに面会を求めることにした。
認識阻害を使ってか、姿を誤魔化しているティテュバをメディアはかなり警戒しており、ティテュバが少女に渡したという人形についても明らかにするべく、メディアを立香たちが連れて行く形だ。

しかし、事態はさらに悪化する。
怪しまれた旅一座は、ホプキンスを納得させるため、演目を一つ演じるように言われたのだ。夜の公演までの間、人質としてメディアも拘束されることになる。
ティテュバの体が保つかも不安だったが、ホプキンスにいたずらに逆らうわけにもいかないため、一同は再び公演を行うことを決めた。

夜、ジャンヌ・ダルクの火刑というテーマでの喜劇はつつがなく演じることに成功して、立香たちと一緒に留置所に向かう。


「俺たちでメディアのところに行くから、ここで待ってて」


立香に言われ、唯斗とサンソン、アーサー、哪吒は建物の外で待つ。立香、マシュ、ロビンが拘置所に入った。


「サンソン、診察してきたんだろ。村人たちの様子はどうだった?」

「ちょっとしたことで魔女の仕業ではないかと怯えている様子でした。表向きは平静を保っているようですが…」


サンソンはホプキンスに許可を得て診察を行っている。村人たちの様子も直接分かる上に信用も得られる。
そのサンソンが感じたところで言えば、やはり村人たちの間では徐々に心に秘めていた猜疑心が表に出ようとしているようだった。

するとそこに、慌てた様子でロビンが建物から出てきた。


「唯斗さん!ティテュバ含め、他の囚人が処刑場に連れて行かれた!先行してくれ!」

「っ、分かった。行くぞアーサー、サンソン」

「了解、抱えるよマスター」


すぐにアーサーは唯斗を抱え、サンソンとともに一気に走り出す。哪吒も横を浮遊しながらついてきた。
ロビンも立香を連れて後ろから追いかけてくるだろう。


「くそ、演目をやれなんて全部罠か…!馬鹿正直に従ってるのがアホらしいな」

「殺すか?塵も残さず焼き消そう」

「最後の手段として持っておこう、哪吒」

「マスター…いや、分かった。今回ばかりは仕方ない」


あまりに悪質なようであれば、暗殺も吝かではない。せめて無力化するくらいのことができるメンバーではある。

数分後、サーヴァントの足で駆け抜けたため、すぐに丘へと到着した。
しかしそこには、絞首台でロープに首をくくられた、ティテュバを含む数名の死体がぶら下がっていた。


262/314
prev next
back
表紙へ戻る