禁忌降臨庭園セイレムI−12
ティテュバを含む数名が処刑され、その遺体は丘の麓の墓地に埋葬された。そこは村の共同墓地ではなく、処刑された者だけの場所だ。
アビゲイルはショックで部屋に籠もってしまい、助けられなかったカーターも苛立った様子だった。
一刻も早く事態を解決しなければならない、という気持ちで逸りそうになるが、今は様々な確認を行うべきだ。
カーター家に戻り、ダイニングにカルデアメンバーだけになると、メディアが早速話し始めた。
「時間をもらえて、ようやくカルデアとの通信不能の原因を特定できた。認識が阻害されていることとも直接関係がある。現状は、霊体化が阻害されているのではなく、逆。霊体のまま、肉体の制約を課されている。仮の肉体を構成する霊子構造は異常な励起状態にあり、しかもそれを保つだけの魔力が常時供給されている。最初に森の中で唯斗が指摘したこととほとんど同じね。さすがの洞察力だ」
「本来、エーテルとして構成されるサーヴァントの構造が、肉体を得ている状態に近い形でいながら霊子が励起している、それをもたらしたのはこの空間の因果構造そのものであり、同時にそれは魔力供給源でもある。その魔力供給が干渉していることで、カルデアとも通信ができない、ってわけだな」
「その通り。私たちの体は独自性を失い、セイレムを顕現させている魔術体系に組み込まれてしまったんだ…」
なかなかの異常事態だが、それを聞いている英霊たちはあっさりとしている。特に慌てた様子もない。さらにロビンは飄々としつつ、重大なことを指摘する。
「ってことは、最大の問題点は…」
「ここでの死は、霊基消滅、となる。だな?」
言葉の続きは哪吒が引き継いだ。
特異点で英霊が死んでもカルデアで再構成できるのは、それが情報としての霊子で構成された状態で死んでいるからだ。しかし、この空間では半ば肉体を得ている状態に近く、死が死として確立されてしまう。
そしてそれは、人間である唯斗たちにも同じだ。マシュは慌てて声を上げる。
「待ってください、それでは先輩は?唯斗さんも、お二人の身の安全は?」
「そこは俺たちとマシュの3人、でしょ?」
「あ…はい、そうでした。すみません、慌ててしまい…」
「ま、十中八九、俺たちも影響は受けてる。けど、死ねば死ぬのはこれまでも一緒だった。特異点を修復しないと帰れないってのもな」
そう、状況は悪いが、とはいえこれまでと条件は同じだ。マシュはようやく落ち着きを取り戻す。立香も、恐らく物事をシンプルに捉えるため、これまでと条件そのものに大きな違いはないと理解しているだろう。
「唯斗の言うとおり、魔神柱をどうにかすれば帰れるはずだよ」
「そうだな。もしかしたら、サーヴァントだけじゃなく、セイレムの住民もすべて同じような霊体かもしれない。最悪、この村の全部をエクスカリバーで吹っ飛ばせば、セイレムがセイレムである定義を失って魔神柱も顔を出すだろ。魔神柱はセイレムがセイレムであることを重視しているから、こんな偽物を作ったわけだしな。とはいえ、この空間の構成理論を破綻させれば、俺たちの存在の構成理論も破綻するかもしれない。リスクとしては極めて重大だから、もはや魔神柱と共倒れする覚悟じゃないと村を吹っ飛ばすなんてできねぇな」
「それを選択肢として検討しているのは唯斗さんだけかと思いますが…」
いつも通りの唯斗にマシュは苦笑する。唯斗の言葉を聞いていたメディアは呆れたようにした。
「あなた結構脳筋ね…いずにれせよ、手詰まりになりつつあるのは確かよ。ウェイトリー家の魔術師が何か打開策を握っているかも…」