禁忌降臨庭園セイレムII−3
ひとしきり集落での鎮圧にあたってから、唯斗とアーサーは森に紛れ、キルケーが残した魔力による目印を強化術式のかかった視界で見つけながら進んだ。
その先で、驚きの人物と合流する。
なんと、ティテュバ、ことシバの女王だった。シバの女王はサーヴァントであり、どうやってかこの空間に召喚されるも、ティテュバという「配役」を宛がわれて記憶をなくしていた。
処刑され、グールとしても倒されたことで完全にその役を降りることに成功して、ようやくサーヴァントとしての自我を取り戻したものの、今度は魔力供給が絶たれていることで消滅の危機に瀕していた。
そこで、時間流の流れに阻まれてカーターとはぐれ、グールに追われていたマシュと合流。シバの女王に保護されたマシュは、彼女が用意していた強固な結界に身を隠していた。
森の中で哪吒とアビゲイル、立香とキルケー、ロビン、マタ・ハリが合流したところでシバの女王が迎えに来て、そこに唯斗とアーサーも合流することができ、結界というセーフハウスに入ることができた形である。
そしてマタ・ハリだが、彼女はキルケーから仮死の薬を渡されており、処刑される直前にそれを飲んで仮死状態になっていた。あとは縄抜けのようにロープと頸椎の位置を調整して窒息を避け、ロビンに下ろしてもらってから、なんとか蘇生した。
矢継ぎ早に事態が進展する中で、シバの女王は新たな情報を提供してくれた。
それというのも、セイレムの1日は日増しに短くなっているとのことだった。あっという間に1日が終わるようになっており、それはセイレムにいては知覚できない。こうして結界にいるとよく分かるという。
何より最も重要な発見は、この結界の中であれば認識阻害を受けないことだった。これまで阻害されていたすべての認識が復活して、唯斗はいかに自分が異常な状態の中で平然としていたのかに気づいて愕然としたものだ。
とりあえず、カーター家が焼失した以上はこのセーフハウスを拠点とすることになり、シバの女王とマタ・ハリが残って他のメンバーでセイレムの探索を行うことになった。記憶が復活した今、改めて村を調査するのだ。
唯斗はアーサーと二人で森を抜けて、迷彩術式で姿を隠しながら村を歩き回る。
その途中、人がいないのを見計らって、唯斗はアーサーと状況を確認することにした。
「…アーサー、俺が全部思い出したことと、このセイレムとの対比を聞いてもらってもいいか」
「もちろん。藤丸君たちに話す前に、僕と二人で整理しよう」
当然、快く頷いたアーサーに、唯斗はこれまでの違和感をすべて整理する。
「本来、3月に始まる魔女裁判は、遅れること1ヶ月、4月に始まった。もともと魔女裁判では、アビゲイル・ウィリアムズを中心とする少女たちが告発を行っていくんだけど、この空間ではアビゲイルは告発どころか擁護に回っている」
「そうだね。アビゲイルに不審な点はないように見える。ランドルフ・カーターは?」
「いない。そんな人物はセイレム魔女裁判には登場しないんだ。本来、アビゲイルの伯父はサミュエル・パリス。カーターなんてのは名簿になかった。ラヴィニア・ウェイトリーもな」
「では、彼らは完全に作り物ということかい?」
「それが…多分、そうでもないんだ。正直、俺の専門じゃない領域だから、自信ないけど…」
煮え切らない返事になってしまったが、アーサーは落ち着かせるように唯斗の頭を撫でる。
「大丈夫、どんなことでも聞くために僕がいる。もちろん、なぜかホプキンス判事のところに居座っているサンソン殿の代わりに君を守る役目も大いに負っているけれど」
アーサーが珍しく刺々しく言ったのは、サンソンがホプキンスのところにいる、と哪吒に聞かされたからだった。先ほど町の外れで一瞬だけ話をして、再び別れて探索をしている。
どうやらサンソンは昨晩の暴動鎮圧のあと、ホプキンスの屋敷にいるようだ。ずっとホプキンスの警護に当たっているらしい。もちろん、二人ともサンソンのことは信じている。何か考えがあるのだと理解しているため、怪しむようなことはない。ただ、アーサーはそれでも、唯斗を守ること以上に優先するべきことはないと考えているのだろう。