禁忌降臨庭園セイレムII−7


相手が反論できなくなればこちらの勝ちだ。唯斗は後一押し、と思い口を開きかけたが、それより前にサンソンが言葉を発した。


「判事殿。あの通り、マスターは敬虔な方だ。おかげで、私は傍にいるのが苦痛で仕方なかった。だからホプキンスの傍に行き、この事態を招いた」

「な…にを、言ってるんだ、おまえ……」


一瞬、本気でサンソンが何を言っているのか分からず、唯斗は二の句を継げなくなる。まるで自分が魔女だと自白しているかのようなものだ。
さらに、カーターが立ち上がった。


「それならば納得だ。私は、実はとんでもない罪人を匿ってしまったのではと思っていたのだ」

「カーター氏、続けて」


判事に言われ、カーターは言葉を続ける。ここに来て突然カルデアを裏切るような発言を始めたカーターに、立香たちも呆然とする。


「彼らは森に罪人を匿っている。それも死人…ティテュバをその手元に置いているのだ」


村の有力な人物であるカーターの言葉だからか、判事はようやく、唯斗に論破されかけたのを取り直した。


「もはやサンソンの罪は疑いようのないものとなった!丘へ連行せよ!!」


こうして、サンソンの処刑が確定した。
アビゲイルも必死に止めようとしたが誰も止まることはなく、サンソンの身内であるという理由で、このあとの裁判への出廷が義務づけられた一同も同じく処刑場へと向かう。立ち会いという名の見せしめだ。

暴れるわけには行かず、とりあえず処刑台まで来たが、やはりサンソンはおとなしく処刑を受けようとしているようにしか見えない。
アーサーは唯斗の肩を抱き続け、メディアに扮したマタ・ハリ、キルケーも心配そうにした。


「唯斗さん、これでいいの?このまま彼が死ねば、あなたから契約解除されるのよ?」

「召喚されてからの記憶も失われる。それを許せるのかい?強引に事を起こすなら、今しかない」

「…そうだな。サンソンに考えがあるのかも、って思ったけど、そうじゃないなら…」


まずは処刑台の上部を転移させて機構を無力化した上で、サーヴァントたちの力を借りてこの場の全員を昏睡させ、その隙に逃げる。どのみち、カルデアは全員このあとの裁判にかけられるのだから。

左手をかざし、その召喚術式の刻印に魔力を籠めようとした、そのとき。
唯斗の左腕を、ロビンが掴んだ。


「だめだ、手を出すな唯斗。シャルルの坊ちゃんに最後までやらせてやれ」

「は……?」

「あんただって理解してるだろ、この空間の因果を、この法廷の在り方を。坊ちゃんの代わりに誰かを処刑するなら、それはあんただ、唯斗。あいつはそれだけは避けたかった。だからこの結末を選んだ」

「…俺に、他ならぬサンソンが処刑されるところを、見てろって言うのか……?」


ロビンを壁に叩き付けて怒りを示したあの日以来、ロビンとはまともに会話していなかった。そのときから蓄積されていたものが、今、爆発しようとしているのを感じた。


「一人の犠牲も出さずに済ませるつもりで魔神柱の懐に飛び込んだんですかい?」

「ッお前…!!」


ついに、唯斗は静かに声を荒げて、ロビンの胸ぐらを両手で掴み上げた。ここまでの怒りを感じたことなど、今までなかった。
頭にカッと血が上って、もはや隠すこともなく殺意を滲ませる。


「なら、やっぱりこの空間の全員を殺せば解決するだろうが…っ!」

「それはシャルルの望んだことじゃねぇっしょ!!」

「じゃあお前から殺してやる!!」


バチッと魔力が漏出して火花が散る。集団から外れたところにいるため気づかれていないが、声をこれ以上大きくすれば気づかれるだろう。そうなったら殺せばいい。気づかれてもいい、どうせ作り物のこの世界の人間を殺しても現実には反映されないのだから。

しかしロビンは唯斗が何を言っても、凪いだ表情のままだった。そして、キルケーに視線を向ける。


「キルケー、頼む」

「…分かった。彼の自己犠牲に何も思わないでもないが、次は誰になるはずだったか、それも理解できる。騎士王、後は頼んだよ」

「なにを、」


一体なんのつもりだ、と思った直後、唐突に意識が薄らいだ。瞬時に、昏睡させる術式をかけられたのだと理解する。ノーモーションでこの瞬間的な魔術の発動を行ったのは、さすがキルケーといったところか。
力が抜けて倒れる前にアーサーに支えられた気がした。そこでいったん、視界はブラックアウトした。


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