禁忌降臨庭園セイレムII−10


唯斗とアーサーは、マシュとロビンがラヴィニアから聞いたというこのセイレムの真実の一端を教えてもらった。

まず、やはりカーターが魔神柱であるそうだ。魔神柱はセイレムを構築し、そこにラヴィニアたちウェイトリー家を呼んだ。それは6度目、という話で、もしかするとセイレムは魔女裁判を何度か繰り返している可能性がある。
カルデアとホプキンスは7度目の客であり、この魔女裁判をさらに混沌とさせる役回りだった。

ウェイトリー家は本来、錬金術に端を発する魔術師の家系であり、「外なる神」を降臨させるために研鑽を続けてきたそうだ。
それを知る魔神柱はウェイトリー家をここに連れ込み、認識を改変し、ウィリアムズ家と確執があるという記憶を強引に植え付けられた。次第にラヴィニアも記憶が狂っていき、アビゲイルとの関係は様々な感情を包含するようになっていった。ラヴィニア自身も、相当に追い詰められていたことだろう。

さらに、マシュたちはラヴィニアと合流する直前、突如として姿を変化させたアビゲイルと交戦したのだという。タイミングとしては、アーサーが唯斗を連れて離脱した直後だ。
霊基の発現によって、アビゲイルはとてつもない魔力を持った魔女へと変化した。いったんは戦闘によって収まって、カーターに保護されたものの、その本性はすでに明るみに出ている。

しかし、魔神柱はカーターであり、アビゲイルはこのセイレムのキーになる人物であるとして、いったいカーターはアビゲイルを使って何を企んでいるのだろう。
いまだそれは確信には至っていない。魔神柱は人類救済という原初の目的は変わっていないと牢獄で立香に述べていたようだが、その方法などについてはいまだ分かっていないままだ。

そうして、ついに裁判が始まった。

傍聴席は生者も死者も入り交じり、異様な雰囲気の中で粛々とキルケーに絞首刑が言い渡される。
さらに、立香も被告人台に立たされる。毅然と判事を見上げているが、判事は複数の容疑を読み上げ始めた。

いつまでこの茶番が続くのか、と思ったそのとき、アビゲイルの声が響いた。


「もう…もうたくさんだわ!座長さんに、何か重い咎があったとしても、それは座長ご自身のせいじゃないわ!誰かのために、私のために立ち上がってくれたのよ!?それより…それより、私なのでしょう…?私が魔女よ?みんなだって見たでしょう?」


アビゲイルは自ら魔女だと告げる。当然、こんなことは史実では起きていない。
それに対して、カーターは静かに立ち上がった。


「いや、それでは困るのだ。そこに歴然とした動機がなければならない。それでは我が目的は達せられない。贖罪を。真の贖罪を、私は求める」

「カーター…伯父様……」

「判事殿、しばし法廷の進行を私に任せて欲しい」

「…分かった。あなたは弁護士の資格もお持ちだ、お任せしよう」


普通の判事がこんなことを言うわけがない。魔神柱として、住民の意思もコントロールできるのだろう。

アビゲイルですら、その目は虚ろになり、ぼんやりとしていた。もはやこの場は、魔神柱とカルデアとの対峙に他ならない。セイレム村は完全にただの舞台となり、司法などではなく、魔神柱の企みだけが正しい理論として存在する異形の空間である。

カーターはここに至ってついに、自ら魔女裁判を取り仕切ることにしたということだ。それに足る要素がすべて揃い、魔神柱にとって舞台が整ったのである。

まさに最後の審判、アビゲイルを巡る、セイレム最後の裁判の始まりだった。


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