禁忌降臨庭園セイレムII−11


「まず一つ目の罪状について記憶を新たにしよう。それは、アビゲイルの両親に起きたことだ。最初のセイレムは、特に念入りに造られた」


カーターは傍聴席の村人などどうでもよく、語りかける相手はカルデアだ。その話す内容も、カルデアにしか理解できない領域のものだった。

カーターが最初に語ったのは、最初に造られたセイレムでの出来事だった。
時間神殿から逃げ出した魔神柱は、セイレムで17世紀末に起きた出来事に着目し、この町をまるごと再現、さらにそこで起きた出来事も忠実に再現しようとした。
しかし、人間が描く模様は複雑で、大小様々な相違点が発生。特にその中心にいたのがアビゲイルだった。

本来、アビゲイルの両親は先住民に殺害される。しかし、この空間、最初のセイレムでは、死因はアビゲイルの幼い行動によるものだった。


「アビゲイルの両親は、幼いアビゲイルの行動による銃の暴発と、それによって暴れた馬が馬車を転倒させたことが原因となって死亡した。そうだね、アビゲイル」

「……はい……伯父様……」


アビゲイルはやはり虚ろな様子で答えた。先ほどまでの善良な意志はそこにはなく、ただ、人形のように答えている。


「二つ目の罪状を述べよう。二つ目のセイレムでは、カルデアの侵入を許した」


そしてカーターが語る二つ目のセイレムで発生した出来事。それは、カルデアから最初の侵入があったこと。それはカルデアの指揮下で行われたものではなく、近未来観測レンズ・シバがこの地を観測し、送り込んだものだった。

ずっと疑問だった。なぜレフ教授ことフラウロスは、カルデアにレイシフトを可能にするシバをわざわざ与えたのか。
それは、魔神柱がゲーティアの総体意志を離れて自発的な行動を行わないようにするための監視装置としての機能を持っていたのである。
シバは魔神柱の暴走を探知すると、自動的にその魔神柱の空間を観測し、そこにサーヴァントを送り込むことができるようになっていた。さすがは古き情報室を司る魔神柱だったと言える。

そのサーヴァントこそ、この装置の名称の由来であるシバの女王だった。


「ゲーティアなる存在が、唯一信頼を寄せた相手がシバの女王だとするならば、唾棄すべき感傷だ。シバが自らを触媒に英霊を送り込んだとき、すでにセイレムという現象は、5万人の市民の魔力を吸収し、10万5000倍の速度で進行していた。それは英霊によって大幅に緩和させられた。しかしこの妨害のための負荷はことのほか大きく、英霊の能力を大幅に降下させたようだ。そうだ、本来の使用人ティテュバはどうなったのだったかな?アビゲイル」

「はい…グールとなって、今も森の中にいます……」

「そうだね、君の発案だ。大変に素晴らしい」


シバの女王が発動する結界は、その場所を彼女の支配領域として法体系・ルールを改変するものだ。唯斗たちが認識阻害から逃れられたのは、あのセーフハウスの結界がシバの女王のルールによってセイレムのルールを弾いていたからだ。
砂漠の交易路を思うままに支配し繁栄した南方の王国、それを統べる女王としての権能である。

魔神柱は、セイレムで数ヶ月にわたって行われた魔女裁判を効率化するべく、時間の進みを早めた。その魔力として、セイレム市民5万人の魔力を利用した。


「三つ目の罪状を述べよう。この英霊の働きによって、セイレムの試みの効率は大幅に落ちた。私はすでに5つのセイレムを消費してしまっていた。有限の魔力と時間の中で、私は焦っていた。そこで私はアビゲイルに相談を持ちかけた。君はなんと言ったのかな?」

「はい…親友が欲しいと…神の愛が届かない、可哀想な子を…でも、私なら愛することができます…」


市民の犠牲によって時間効率を早めていた魔神柱だったが、シバの女王によってそれは妨げられ、セイレム魔女裁判は5回の失敗を重ねてしまっていた。
この空間を維持し魔女裁判を繰り返す力そのものは魔神柱の残り滓のような力によるもの。魔神柱には後がなかったのだ。

魔神柱がいったい何をしてきたのか。概ね分かってきたところで、突然、公会堂の扉が音を立てて開け放たれた。
その音に一斉に目線が向かう。


「む…?ラヴィニア・ウェイトリー!」


判事がその名を呼んだ通り、扉を開けたのはラヴィニアだった。アビゲイルは初めて、動揺を滲ませる。


「あ…ラヴィニア、だめ、来ては駄目!」

「…いいえ、まだ、出廷したばかりよ…」

「逃亡を断念し、自ら罪の告白に来たのなら、我が法廷は甘んじて受け入れよう」


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