禁忌降臨庭園セイレムII−12


ラヴィニアは堂々と通路を進み、立香が立たされる被告人台を通り過ぎ、判事席に立つカーターの前に立った。


「ラヴィニアさん、来てくれてありがとうございます…!」


どうやらマシュが説得していたようで、ラヴィニアはマシュにちらりと視線をやってから、カーターを見上げる。


「わ、私も、証拠を持ってきたわ」

「ほう、裁判を円滑に進められるためのものなら歓迎しよう」

「これよ…っ!」


次の瞬間、ラヴィニアは何かの粉をカーターに向けてふりかけた。もろに粉末をかけられたカーターは驚愕する。


「れ、霊体を物質化するイブン・グハジの粉末よ…!」

「ぐ、ぎ、がぁあああ!!」

「こうしなければ、裁判は、対等じゃない…一人だけ、マスクのままでは、フェアじゃ、ないわ…」


ラヴィニアがふりかけた粉末は大層な代物で、カーターは呻きながらその正体を現した。
男性の姿から、頭が烏のような鳥頭に変化したのである。スーツ姿の鳥人間が、判事席で呻いている。

さらに、別の声が公会堂に響く。

「はあい、助かっちゃいましたぁ!おかげで、この裁判劇という結界に素の状態で乗り込めます!」


そんな言葉とともに、窓を突き破って女性が現れた。シバの女王だ。隠れながら様子を窺っていたらしい。


「魔神ラウム!あなたがその本性を露わにするのなら!私も遠慮なく、交渉の範囲を広げましょう!この私がいる限り、この法廷で戒律破りはあり得ません。フェアなトレードをお約束します」


シバの女王が現れたことで、この空間の支配理論は魔神柱ラウムのものから通常のものに変化している。
魔神ラウム、序列第40位の悪魔であり、財宝を任意の場所に転移する力や都市を破壊する力、そして人間の尊厳をとことん貶める力を持つとされる。

ラウムはなおも呻きながら、烏の嘴から声を発する。


「四つ目の罪状…!それは、罪人たちの魂をセイレムに招いたことだ…密告者、扇動者、背信者、偽証者…彼らは貪欲だった!この私でも御しきれないほどに!死してなお贖罪を望んだ!」


セイレムの住民として招かれた者たちは、かつて魔女狩りに加わった者たちだったらしい。
ラウムの言葉とともに、判事や残っていた生者も、すべての村人たちが一斉にグールと化した。いや、もともとグールだったのだ。何者かが魔術などによって死体をグールにしたのではなく、最初からグールだった村人が、処刑されたことで本性を現していたということだ。
ラウムによって甦った、魔女狩りの加担者たち。神の意に反して罪なき人々を虐殺したことを許されようと、偽りのセイレム魔女裁判を何度も繰り返してきた。

アビゲイルはシバの女王の姿にティテュバを重ね、ラウム同様うめき声を上げる。


「あ、ああ…ああああ!!また、またなの?!もう嫌、こんなのはもう嫌!!」


アビゲイルの姿は変化し、大きなつばのハットを被った魔女の姿と化した。

グールと化した村人たち、魔女の姿となるアビゲイル、もはやまともな人間はカルデアのメンバーとラヴィニアだけとなっていた。


「…狂っているな、すべて」


この惨状を見て、アーサーは聖剣を出現させながら吐き捨てるように言った。サーヴァントたちも各自戦闘態勢になっている。


「…本当にな。ここで、終わらせる。立香、アビゲイルを頼む。俺はラウムを牽制する。グールはそれぞれ近づいてきたら払う形で」

「了解!」


立香はマシュとともに、マタ・ハリ、ロビン、哪吒を連れてアビゲイルに対峙する。一方、唯斗はアーサー、シバの女王とラウムに相対した。

隣に立った唯斗を確認してから、シバの女王はラウムに呼びかける。


「閉廷の刻限です。都市セイレムそのものを触媒とした膨大なる霊体群の降臨…すでに5万の市民の魔力は枯渇しつつあります。時間はもうありません。ソロモン王の指の隙間から零れた砂金のひとつまですべてが彼の元へと還るまで、私は見届けましょう。英霊として顕現した私は、私自身にそう誓ったのです!」

「還るとも…だがそれは今ではない…!五つ目の罪状!それは人を信じたことだ!アビゲイルはその無垢な善良性によってセイレムの罪を覆った!私すら唾棄するほどの悪に、魔女狩り将軍に救いを見出すほどに!セイレムの罪人たちの魂は、アビゲイルの無垢によって救われることも裁かれることもないまま、贖罪の機会も与えられず、ここに閉じ込められたのだ!それがアビゲイルの罪だ!!」


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