禁忌降臨庭園セイレムII−16


アビゲイルは、蠢く大量の触手を一斉にこちらに向けて差し向けてきた。
瓦礫や長椅子を吹き飛ばしながら迫る触手の第一波は、まずキルケーの強固な結界で防がれる。
その結界を超えてさらに迫る第二波は、哪吒、ロビン、マタ・ハリで焼き払い、先端を吹き飛ばす。
続く第三波はついに唯斗たちまで迫ったが、今度は唯斗の結界とアーサーのエクスカリバーによる魔力光線が対処する。


鉄の人よ、天より来たれ(ドント フアラン デン ガント ネヴ)!」


結界に弾かれた触手の群れは、アーサーの剣から放たれた光線によってかき消されていく。これで大量の触手の大部分は消滅できた、そう思われた。


「っ、いけません…!」


しかし、シバの女王が焦って言った直後、一同の足下に鍵穴が出現し、そこから串し刺すように触手が飛び出してきた。


「うぐっ…!!」


足下から突き上げる触手の攻撃によって、サーヴァントたちは全員が弾き飛ばされ、思い切り壁や床に叩き付けられる。
キルケーの結界によって、なんとかマシュと立香、唯斗は致命傷は防がれたが、衝撃で吹き飛ばされ、三人揃って床に倒れた。


「げほっ、っぐ…ッ!」

「ッ、マシュ、!」

「せ、んぱい…!」


内臓が潰れたかと思うような衝撃だったが、なんとか無事だ。瓦礫の山に落下したため、体のあちこちに傷ができて礼装に血が滲むが、どれも致命傷ではなかった。
立香とマシュも、顔や腕、足、脇腹に血が滲んでおり、マシュの眼鏡も右目のレンズに罅が入っていた。

さらに、アビゲイルは自身の前に大きな鍵穴を出現させると、鍵を模した大きな杖から禍々しい黒色の光線を穴の中に向けて放った。
そして、アーサーと哪吒、ロビンのすぐ近くに同じ大きさの鍵穴が現れたかと思うと、アビゲイルの放った光線がその穴から現れた。あの鍵穴を通して空間が繋がっているのだ。


「ぐぁあ…ッ!!」

「アーサー…っ!!」


アーサーは光線をもろに浴びて吹き飛ばされ、床に倒れる。蒼銀の霊衣がボロボロになっており、顔や鎧が外れて肌が見えているところには火傷を負っている。全身あちこちから血を流しながらも、剣を床に突き立ててなんとか立ち上がった。

哪吒とロビンもそれぞれ光線によって重傷を負っており、床に倒れている。マタ・ハリとキルケー、シバの女王は最初の攻撃ですでにかなりのダメージを負い、立つことも難しそうだった。

一瞬にして追い詰められ、唯斗は愕然とする。空間を繋ぐというアビゲイルの超常的な能力を前に、防御も攻撃も極めて難しかった。
アビゲイルは倒れ伏すカルデアのメンバーたちを見て、相変わらず醜悪な笑みを浮かべる。


「立香さん、まだ足りないわ。この程度の苦痛では、世界はもう、救えない。あなただってもう分かっているでしょう?世界のすべての人々の救済を望んだ。だから、この土地へ招かれたの。あなたの罪悪感が、セイレムを求めたの」

「俺の、罪悪感…」

「立香、聞くな。耳を貸すな」


近くに倒れていた立香は、上体を起こしてアビゲイルの言葉に目を見張る。
唯斗もなんとか起き上がりながら、動揺する立香にこれ以上聞かないよう言ったが、立香は魅入られたようにアビゲイルを見つめている。


「だって、こんなに恐ろしい罪ってあるかしら?地上の人々は、裁かれる機会を逃した。その魂は救われないまま…サンソンよりも、ホプキンスよりも、カーター伯父様よりも、ずっと重い罪だわ…でも、もういいの。乾きに苦しまなくていいの。私が、赦してあげるから…」


罪。罪だったというのか。このグランドオーダーにおける特異点修復の旅が、そこでの出来事すべてが、罪であったと。
このセイレムで何度も唯斗は怒りと悔しさを感じてきたが、今まさに、怒髪天を衝くといったところだ。カルデアの、ロマニの、唯斗たちの思いを、努力を、なんだと言うのか。

衝動で立ち上がった唯斗だったが、それを制するように、ロビンの声が響いた。


La mort est l’espoir(死は明日への希望なり)!!」


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