禁忌降臨庭園セイレムII−20


セイレムに存在したすべての敵性体を倒すことに成功したカルデアは、封鎖結界を段階的に解除しつつあり、同時に、ミストが消えて徐々に消滅しつつあるセイレムが完全に消えるのを待っていた。

朝日が昇り、珍しく快晴の青空がセイレムを照らしている。この時期にしては珍しいほどの晴天だった。

廃墟となった公会堂から場所を移し、村の北側にある牧草地にラヴィニアを埋葬。セイレムがほとんど消失して結界を解除してから、カルデアへの帰還レイシフトが実施される予定だ。

夜の間に一通り手当ても済ませてあるため、もう唯斗も立香もマシュも怪我は負っていないが、アーサーはいまだに唯斗の肩を抱いたままだ。
海からの風を浴びながら、お祈りの方法を哪吒に教える無邪気なアビゲイルを見つめている。


「…マスター」

「うん?」

「また君に守られてしまったな。SE.RA.PHに続いて、これが二度目だ」

「たった二回だろ。俺ずっとアーサーに守られここまで来たわけだし」


唯斗の右隣に立って肩を抱くアーサーに言われ、唯斗は苦笑する。数え切れないほど守ってもらっているのに、たった二度のことを言われても、と思ってしまうのだ。
しかしアーサーは「いや」と否定する。


「自分で言うのもなんだけれど、僕は騎士王、ブリテンの王だ。騎士として、将として、王として、サーヴァントとして、誰かに守られるような立場でもなければ、そんなことになるような半端な実力でもないと自負している」

「あぁ…まぁ、それはそうだな」

「そんな僕が、守るべきマスターである君に守られてしまった。いや、それがどうこう、というわけではないんだ。自然なことでもある。なぜなら君は最初から、僕と共に戦うと言ってくれた。守るべき人、ではもちろんあるけれど、精神的には、共に戦う戦友だ」


確かに、アーサーは立場からしても実力からしても、誰かに守られるような柄ではない。二度とはいえ、そもそも人間である唯斗に守られること自体、そう経験がないのだろう。
しかしアーサーにとっては、それは不自然なことでもないのだという。何度も今まで伝えてきてくれた通り、唯斗を隣で一緒に戦う仲間だと思ってくれているからだ。


「それに…」

「…それに?」

「あー…」


なぜか言いあぐねるアーサー。何かと首をかしげていると、キルケーがニヤニヤとしながら声をかけてきた。


「それに、『恋人を守るのは当然だ』なんて男前なことを言われてしまって、惚れ直したってところだろう?」

「は……」


思わず唯斗は動きを止める。アーサーは気恥ずかしそうにしながらも「まぁ、そういうことだ」と頷く。
そんなキルケーの言葉を聞いていたマタ・ハリとロビン、立香もニヤついた。


「あれはとても素敵だったわよ、唯斗さん」

「さっすが唯斗さん、男前っすわ〜」

「俺も痺れたよ唯斗」

「〜〜〜!!」


つい啖呵を切ってしまったが、冷静に振り返ればとんでもないことを言っていた。
急に顔に血が上り、火照ったように熱くなる。


「顔赤いよ唯斗〜」


楽しげな立香に、ついに唯斗は降参した。


「……忘れろ………」


恥ずかしさのあまり、唯斗は顔を隠そうとアーサーの肩口に顔を埋める。アーサーは気をよくしたように唯斗を抱き締めて、唯斗の頭に頬をすり寄せた。


「かわいいし格好いいね唯斗、僕の最愛」

「追い打ちやめろって……!」


思わず情けない声が出ると、キルケーやロビンは楽しそうに腹を抱えて笑った。シバの女王も「お熱いですね〜」とからかってくる始末だ。

マシュと哪吒がアビゲイルとともに海を眺めて話しており、こちらに気づいていないことだけが救いだった。


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