旅の終わり−19


「グランドオーダーでの君の成長は、レムナントオーダーで実践する機会となった。喜怒哀楽すべて、その感情を得たのがグランドオーダーの旅なら、この1年間はそれを実践的に発露してきたんだ。もう君は人間1年生じゃない、立派な人間だよ」


言われてみれば、そういう見方もできるかもしれない。

カルデアに来たばかりのときはすべてがどうでもよく、冬木にレイシフトしたときも、基本的にはすべてをおざなりで、立香たちにもぞんざいだった。

第一特異点、フランスではマリーとジャンヌによって初めて世界を肯定的に捉えられるようになり、嫌いだったフランスに対して、彼女たちが担った国ならば守ってもいいと思えるようになった。

第二特異点のローマでは、立香との衝突が顕在化しつつも、アーサーとの関係が深まることになり、初めて自分の感情や想いを客観的に捉えるようになった。フランスで得た感情を、少しずつ咀嚼できたのがこのときだ。

第三特異点、狭い船上という環境では立香との衝突がより一層多くなり、立香が自分の身を危険に晒す提案をしたときには、大声で叫ぶほどに反論した。自分が身代わりになってでも立香を元の世界に帰さなければならない、その思いが殊更強かったのがこのときだったからだ。

しかし続く第四特異点において、ロンドンの魔霧によって動けなくなった唯斗に対して、毒への耐性がある立香は問題なく動けたため、立香がほとんどの作戦行動を担った。それがつつがなく進んでいるのを見て、初めて唯斗は、自分が本来不要な存在だったのだと気づいた。むしろ、グランドオーダーには、立香のような人間こそが必要なのだと知った。

それが焦りとなって、第五特異点では自分がより働かなければと積極的になった。しかし、クー・フーリン・オルタとの戦いで敗走し、ネロたちを犠牲にすることとなり、初めて強い悔しさを感じた。悔しいと思うほど何かに本気になったことがなかったのである。
同時に、アメリカでは自分たち人間こそが戦わなければならないのだと初めて自覚した。

第六特異点の中東に来る頃には、唯斗はかなり人間的な成長を遂げていた。オケアノス、ロンドン、アメリカとさらに複雑な感情の数々を経験していたからだ。立香たちとも良好な関係になり、アーサー不在の不安はあれど、アーラシュなどと戦いに集中できていた。
しかしガウェインとの戦いにおいて、ここに来て初めて立香の身代わりとして死ぬことを覚悟し、それに恐怖した。何よりも、この死が、自分はいなくてもいい存在だと示すことになってしまうのが怖かった。

帰還後、それはガウェインを巡る一連の騒動で表面化したが、だからこそ唯斗は本質に気づけた。今まで自分に居場所をくれた歴史を繋ぎたい、恩返しがしたい、だからこそ自分も命がけで戦えるのだと気づいたのだ。

そして第七特異点では、史実でも滅びる文明であるというどうにもならない滅びの定めと、ティアマトという圧倒的な滅亡の力に己の無力を感じながら、それでもなお正しかったのだと肯定される誇りを知った。ギルガメッシュという最古にして最高の王の隣にいる中で、唯斗は人類文明においては避けられない「滅び」に、正しいかどうかなど関係がないのだと気づくことができた。

グランドオーダー最後の戦い、時間神殿でのゲーティアとの邂逅。たくさんの星の力が開いてくれた道の先で、唯斗と立香は、マシュ、そしてロマニとの別れを経験した。
それでもなお戦わなければならない絶望に挫けずゲーティアに殴りかかった立香の言葉は、唯斗に当たり前で大事なことを気づかせてくれた。
死にたくないから生きているのではなく、生きたいから生きているのだという、人間としての当たり前の願いだ。


「…確かに、グランドオーダーは俺にとって、成長の糧になるものを獲得していくような旅でもあったんだな。知らない感情ばっかりでしんどかったけど、そういうものを向き合えるように、アーサーがずっと隣で見守ってくれてた」

「そうだね。君なりに世界にぶつかっていくといい、そう言って君を傍で見守っていた。そして実際、君はきちんと正面から体当たりしていった。つらいことも苦しいことも、全部大事にしてきたんだ」


そうやってアーサーが傍にいてくれたからこそ得られたものは、レムナントオーダーによって実践されることになった。


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