悪性隔絶魔境新宿II−18
残念なことに、その予感は当たってしまった。
『!?霊基出現を確認!これは…このパターンは…!?』
『そんな馬鹿な!?』
肌が急速な魔力の集積を感じる前に、カルデアでマシュとダ・ヴィンチが驚愕する声が立香の通信機から響いた。
アーサーはすぐに唯斗の前に立ち、アルトリアは警戒して剣を構える。
その正体はすぐに、先ほどまで悪のモリアーティが立っていた場所に現れた。
「来たな!!カルデアのマスターどもよ!!」
「な…ッ!?ゲーティア…!?」
「…いや、ゲーティア本体じゃないぞ、立香。あれは多分、魔神柱だ」
突如として現れたのは、つい最近のようで遥か昔のような、そんな時間神殿で相対した姿。いや、それによく似ているが異なるものだ。
ゲーティアのような人型をとった、魔神柱である。その唯斗の推測にダ・ヴィンチも肯定する。
『ああ、人化したようだが、その霊基パターンは間違いなく魔神柱だ!』
「そんな、魔神柱は滅んだはずじゃ…!?」
愕然とする立香を嘲笑うように、魔神柱はゆったりとその両足で立ち上がる。
「あぁ滅んだとも!3000年の計画はまさしく完全に失敗した!それでも我はこうして無様を晒している!すべて、すべて貴様らを殺すため…!!」
魔神柱の言葉に、アルトリアはエクスカリバーの実体を出現させながら、冷徹に笑う。アーサーもエクスカリバーの風王結界を解いていた。
「フン、何かと思えば残党か。それも、藤丸と雨宮を殺すだと?逆恨みもいいところだ」
「知っている!!その通りだとも!!この胸を掻き毟る苦痛、じりじりと身を焦がす熱!ああ忌まわしい!!憎悪、憎悪だけだ!!憎悪だけで、貴様を殺すためだけに…!!」
なんと、魔神柱はアルトリアの言葉を肯定し、そう返した。それは自然なことのように思えるかもしれないが、魔神柱とはあくまで術式の受肉体に過ぎない。それが感情を持っている。
神のように超越した視座から地球を焼き払ったというのに、今この個体が言っていることは、まるで人間のような感情だった。
「世界を滅ぼすためにお前らを殺すのではない、お前らを殺すために世界を滅ぼすのだ!」
その言葉に、ホームズはようやく合点した、とばかりに目を見開いた。
「なるほど…!3000年前から、カルデアのマスターを殺す計画を練り続けていたのか!バベッジ卿が計算結果から摘出した人類史の揺らぎ、人理焼却の端にあった異物の正体がこれか!」
ホームズの話では、第四特異点にて魔術王の配下として現界したバベッジは、その関係性から得たデータによって、人理焼却を破却したあとの未来を計算した。そこでは、人理焼却がなくとも2017年から先の未来は存在しない、というものだった。
人理焼却を破却しても発生する人理の揺らぎ、特異点の発生。その要因として、時間神殿から逃げ帰った個体による3000年間の復讐計画があったということだ。
「その通りだ!応報の情熱、復讐の誓約。それが、この魔神バアルの構成要素だ!」
バアル、悪魔学ではバエルと呼称する方が一般的で、序列第1位の大悪魔だ。もともとアダトという古代メソポタミアの神と同一視されることがあり、アダトはイシュタルの兄弟だとすることも多い。
特に、オジマンディアスの時代のシリアではバアルとアダトは完全に同じものとして高位の神だった。
ホームズは情報が確定したことで問いかける。
「ならば問おう。君とモリアーティは、どこまで関わっている?」
「それを私が答える必要はない。なぜなら、もう答えは出ている」
「―――すべてだよ、ホームズ君」