砂糖は不要−15
オジマンディアスは唯斗から袋を受け取り、早速中からチョコレートを取り出す。それを眺めながら天蓋付きのベッドに腰掛けたオジマンディアスは、大きな口でぱくりと口にした。
一口で食べたものの、しっかりと味わってくれている。
「……ふむ」
一応、味は保証できるのだが、口に合うだろうか、とドキドキしていると、ふっとオジマンディアスは優しく笑った。
「…これは、そうだな。ネフェルタリの喜ぶ味だ」
王妃ネフェルタリ、比較的女性の地位が高かったエジプト文明において、なおファラオに寵愛され影響を持った人物だ。世界最古のおしどり夫婦であるラムセス2世とネフェルタリの関係は、世界史的にも極めて珍しいものだった。
「甘いものが好きだったんだな、王妃は。ナツメヤシとか?」
「あぁ。現代で言えばカロリー、というものがある故に、あまり食べ過ぎるなと言いつけてはいたが、この余を丸め込んであの手この手で食べていた。ザクロでとりわけ酸っぱいものが当たったのだと言ったこともあったな」
中東のカロリー爆弾ナツメヤシは、重要な栄養源として重宝されてきたものであり、非常に古い歴史を持つ食べ物だ。
ネフェルタリとの思い出を語るオジマンディアスの表情は柔らかく、自分の作ったものがこの古代王にそうさせているのだと思うと、唯斗は感慨深くなる。
「…俺が作ったもので、あなたが最愛の王妃を思い出してくれたなら、それだけで勇気出した甲斐があった。他ならぬ、オジマンディアスだから」
「相変わらずだな、お前は」
呆れたように笑いつつ、オジマンディアスはいつの間にかペロリとすべてを食べ終わっており、ベッドの縁から立ち上がって唯斗の正面に立つ。
「よし!!褒めてつかわす!!!」
「うわびっくりした…」
唐突な声量にびくりとした唯斗だったが、オジマンディアスは気にせずに言葉を続ける。
「貢ぎ物、余は大いに気に入った。これには貴様の想いが込められていると認めよう!大義であった。故、褒美を取らす」
そう言って、オジマンディアスは突然手をかざした。その手の下、床に黄金の光が輝いたかと思うと、魔力が放出され収束されていくことが肌に突き刺さる感覚で分かる。とてつもない魔力量だ。
若干唯斗からも取られている気がするが、そもそも契約しているサーヴァントであるため当然のことである。
いったい何をするのか、と思って見ていると、光が収まり、床にころりと3匹の小動物が転がった。
ぱっと見、猫に見える3匹の動物は、体がまるで宇宙のようになっており、頭に黄金のヘルメットのようなマスクをつけ、背中から小さな黄金の翼を生やしている。
まさか、と思って愕然としていると、オジマンディアスはニヤリとする。
「かつての昔!ここでなき場所、今でなき時代!貴様の預かり知らぬ異世界での死闘があった!すなわち、聖杯戦争である!」
オジマンディアスが語っているのは、アーサーやアーラシュが参加していたという、異世界での聖杯戦争の話だ。いったい何を言うのだろうか。
「余は大神殿最奥に座して二騎の英霊と相まみえた。片や、当代の聖剣使いたる蒼と銀の騎士!片や、東方の大英雄たる赤き剛弓使い!……良き、戦いであった」
奇しくも、その二人とオジマンディアスは揃って唯斗のサーヴァントになっている。それ自体が縁になっていたのかもしれない。特に、本来なら何の縁もなかったオジマンディアスが召喚された理由は、もしかしたらアーサーとアーラシュの縁によるものだった可能性もある。
「あの死闘の折、余が放った神獣スフィンクスの群れ。これは、それらを統率する王種、スフィンクス・ウェヘムメスウト!」
「な…ッ、」
「…まあ、それの仔だ。愛らしいであろう!」