砂糖は不要−20
「別に変な意味じゃねぇんだ、ただ、このアウラードたちがオジマンディアスの魔力と俺の魔力で構成されてるから、なんか俺とオジマンディアスとの間の子供みてぇだなってバカなこと言っちゃって…それでオジマンディアスが、ファラオなら孕ませることもできるとか言い出して…でも、ギルガメッシュが来たからなんとも、」
「ギルガメッシュ王が割り込んだから事なきを得たのであって、そうでなければ今頃ライダーに何をされていたか、分からないわけではないだろう?」
「それは…、」
言い淀む唯斗に、アーサーはアウラードの顎をひとつ撫でてやってから、唯斗から強引に奪って床に戻した。
「アーサー…?」
「ここだとこの子たちがいるからね、僕の部屋に行こうか」
「え」
そう言うと、アーサーは唯斗の手を引っ張って扉までつかつかと歩いた。
そのまま部屋を出ると、まっすぐ廊下を歩きだす。ほど近いところにあるアーサーの部屋には1分もせずに到着し、前と変わらず、何もない殺風景な部屋に招かれる。
「ちょ、アーサー?」
「僕も怒りたいわけではないからね。ただ、きちんと分からせてあげなければね」
言葉通り、アーサーの言葉尻には怒りの感情はない。しかし含みのある言い方に、だんだんと嫌な予感がし始める。
自分のベッドの縁に腰かけたアーサーは、自分の膝をぽんと叩いた。
「さ、ここに座って。こちらを向いてね」
「…、わかった」
怒ってはいないが、反発が許される雰囲気でもないため、仕方なく唯斗は正面から向かい合うようにしてアーサーの膝の上に座った。ほんの少しだけ、唯斗のほうが視線が高くなる。
「はい、じゃあこれ」
「え?」
「君が食べさせて?」
唯斗を至近距離で見上げるアーサーは、おもむろにチョコを手渡してそんなことを言い始めた。なんともあざとい角度である。
まさか自分で作ったものを自分で食べさせることになるとは、唯斗は数分前の自分を呪う。恥ずかしさに動揺して口を滑らせた結果、もっと恥ずかしいことになってしまった。
唯斗はラッピングを外してチョコを一つ取り出すと、アーサーの口元に運ぶ。
それを、アーサーはぱくりと口にした。この距離で人が咀嚼するところを見るのは初めてだが、何をしてもイケメンはイケメンである。
飲み込んだアーサーは、「おいしいよ」と欠かさずに感想を述べた。だがそれで終わるはずもなく、次を要求される。
次の一粒も同じようにアーサーの口元に持っていくと、今度はアーサーは大きめに口を開けて、唯斗の指ごとチョコを口に含んだ。
びくりと肩が震えたが、気にせずアーサーは唯斗の指を舐めとってからチョコを嚥下する。
ちらり、と唯斗の指を舐めてからこちらを見上げた翡翠の瞳には、明らかに色が浮かんでいた。どくりと唯斗も自身の心臓が鳴る音を自覚する。
「じゃあ次は、口で運んでくれるかい?」
「っ、アーサー、」
さすがに、と思って呼びかけた唯斗だが、アーサーはすかさず悲し気な顔をする。
「恋人の日に別の男たちとイチャつくことを許して待っていた僕を、甘やかそうとは思ってくれないのかな」
「…、ずりぃだろ……」
アーサーも王様だったな、と今更ながら唯斗は思い至る。人に言うことを聞かせる天賦の才でもあるのだろうか。
余裕で負けた唯斗は、チョコを一粒、自分の唇で挟むと、アーサーの口元に近づける。顔を寄せることになり、目の前に端正な顔立ちが迫った。
そして、アーサーは唯斗の唇からチョコを自分の唇で受け取って口に含んだ。顔を離した唯斗を満足そうに見上げる。
「よくできました」
「このやろ……」
「唯斗、こっち向いて」