深海電脳楽土SE.RA.PH−2
レイシフト開始とともに、体の感覚がなくなって、浮遊するような引っ張られるような感覚になるところまでは一緒だった。
しかし意識が覚醒する直前、BBの声が乱入してきた。こんなことは初めてだ。霊子化されている唯斗たちの意識に直接声を届けているのだ。
「ちょろすぎますセンパイ、唯斗サン!あなたたち人類にイージーモードなんて与えるわけありません。容量1GB未満の人間しかゲートには通れないのです!お供のサーヴァントとはここで……あら?あぁなるほど。小賢しいですね。これだから夢魔は…」
BBのそんな声が響いた直後、レイシフトが完了し、意識が急激に浮上して覚醒した。
ハッと目を覚まし、すぐに周囲の状況を確認する。
「大丈夫かい、マスター」
「アーサー…あぁ、俺は大丈夫だけど…ここは」
そこは、全体的に青白く、まるでゲームか何かのような場所だった。機械的で無機質な、青白く輝く電子回路のような通路が延々と続いているのだ。
そこに降り立っているのは、唯斗とアーサーの二人。立香たちやガウェインの姿もなかった。
すぐに念話を試みるが、ガウェインとは意思の疎通ができない。
「…だめだ、ガウェインはどこにいるか分からない。この空間にパスが繋がっていることは分かるんだけど」
「それだけ分かれば十分だ。今は周囲の状況把握と、藤丸君たちとの合流に努めよう」
アーサーはすでに見えない聖剣を構えている。この不思議な空間はどう見ても油田のそれではなく、何が起こるのか、まったく予想もつかなかった。
とりあえず、警戒しながら通路を歩き回ることにした二人だったが、10分以上経過しても通路が途絶える気配はなく、いくつか分岐があったがどの道も同じようにしか見えなかった。本当にどんな場所なのか分からない。
とにかく立香が心配だったが、ふとアーサーが足を止めた。
「…マスター、人の気配だ」
「っ、生存者か」
どこか怪訝な顔をするアーサーだったが、そこに女性の声が聞こえてきた。
「誰か助けてーー!!!」
そんな声は近くの分岐の先から聞こえてきて、急いで二人はその分岐点へと向かう。
するとすぐに、その曲がり道から女性の姿が現れた。
「きゃっ?!」
「大丈夫ですか、」
唯斗が声をかけると、眼鏡をかけた女性は目をパチパチとさせたあと、パッと顔を輝かせる。
「カルデアの制服!救援が来てくれたのね!良かった!そして早急に助けてください!!」
「落ち着いてレディ、何から逃げているのです」
アーサーが落ち着かせようと尋ねると、女性はアーサーを見上げて頬を赤らめる。
「わ、国宝級の顔面!?良い男すぎない!?あの、ご結婚とかされてますか!?」
急いで逃げてきたわりに顔を見てすぐナンパとは、見た目に反してなかなかアグレッシブだ。ついイラっとした唯斗だったが、アーサーは眉根を寄せて女性から体を離して唯斗の肩を抱く。
「失礼、私には愛する人がいる」
「残念!でもそれはそれで良し!私はマーブル・マッキントッシュ、セラフィックスの職員です。ちなみにオープンリレーションシップについてどう思いますか!?」
勢いだけで生きているのか、というほどの会話の飛び方である。なおもマーブルという女性に迫られるアーサーだが、珍しく、声をやや荒げた。
「っ、触らないでくれないか」
「アーサー…?」
礼節重視の騎士の王とは思えないほど、アーサーは強い拒絶を示した。距離を取って、マーブルを睨み付ける。
その直後、自らの失態に気づいたのか、目を見開いて焦りを見せた。
「っ、あぁ、いや、大変な失礼をレディ」
「あ、いえ、私もすみません…」