深海電脳楽土SE.RA.PH−3
唐突に微妙な空気になってしまったため、唯斗はアーサーの前に出てマーブルとの間に立ちつつ、状況を整理することにした。
「俺は雨宮唯斗、カルデアのマスターの一人。こっちはサーヴァントのアーサー・ペンドラゴン。情報交換をさせて欲しいんだけど、それより前に、差し迫った危険があるのか?」
「アーサー・ペンドラゴン!?あの!?やだ、すっごい失礼なことしちゃった!ごめんなさい!そして危険ね、ええそう!いるのよ!すぐ近くに!アルターエゴが!!」
マーブルは勢いよく謝罪してから、ようやく敵性体の存在を告げた。アーサーが警戒を高めていないことからも、すぐに会敵する距離ではなさそうだ。
しかしマーブルはやたら焦っており、しかも、アルターエゴという名称を口にした。意味するものは分からないが、固有名詞だろうか。
「アーサー、近くに敵性反応はないんだな」
「あぁ、接近しているようではないけれど…」
そう言ったところで、突然、水中に浮かぶ気泡のようなものが漂う空に、輝く流星が現れた。時間神殿でも見た、サーヴァントたちの光だ。
今この空間に、大量のサーヴァントが出現しようとしている。しかもその数は100を超えていた。
「あぁ…!またサーヴァントが…!」
マーブルは声を震わせる。いったい、ここで何が起きているというのか。しかも100を超えるサーヴァントが一気に召喚されるなどあり得ない。
と、その直後、流星が着地しようとしていた空間が、突如として「消失」した。
まるで圧縮されるようにキューブ状の物体に変化し、その空間は真っ白な空白と化す。それによって、100を超えるサーヴァントの光はまるごとすべてかき消えた。
「アルターエゴが…!」
「…、今の、そのアルターエゴとやらの力なのか」
「ええ、この辺り、ブレストと呼ばれているのだけれど、ここを徘徊するアルターエゴはああやって空間を凝縮して消失させる恐ろしい力を持っているの。あれによって、ほとんどのスタッフは殺されたわ。今、新たに召喚されたサーヴァントたちも…」
「…なるほどな。アーサー、あの有効範囲はでたらめだ。早急にここを離脱しよう」
「同意するよ。レディ、ここを離れます。道は分かりますか?」
アーサーは唯斗の後ろからマーブルに話しかける。どうやら本当に近づきたくないらしい。いったいなぜなのか、アーサー自身が困惑している様子から、本人も分かっていないようだ。
「どこも安全な場所なんて…でもとりあえず、ヘアの方へ続く道へ行きましょう。すぐにブレストを離れないと」
マーブルの案内で、唯斗たちは「ブレスト」と呼ばれるらしいこの区画を離れることになった。通路を走り出しながら、唯斗はマーブルに状況を尋ねる。
「アルターエゴというのは?」
「サーヴァントのクラス名、らしいわ。あまり詳しくないけれど、オリジナルの人格からコピーされた存在によるものらしいの」
「オルタの『Alter』ってことか。誰がそれを言っていたんだ?」
「BBよ。あなたも知っているでしょう?ここに入れたのだから、管理者であるBBとコンタクトしているのよね?」
「あぁ。BBがセラフィックスをこうしたわけではないんだな?」
「分からないの。いったいなぜこんなことになったのか…でもはっきりしているのは、BBはこの電脳空間、電子化されたセラフィックスをSE.RA.PHと呼んで管理していること、SE.RA.PHでは常に128騎のサーヴァントが擬似的に聖杯戦争という戦いをしていること、そしてBBからコピーされたアルターエゴが他に2騎いて、センチネルという防衛機構になっていることよ」