深海電脳楽土SE.RA.PH−5


「この人は生存者のマーブル。ここの状況は一通り聞いた。アルターエゴから立香も話は聞いてるな?」

「うん、一応。こっちはメルトリリス。で、このトリスタンはSE.RA.PHに召喚されたサーヴァントの一人で、黒幕のBBを追ってる」

「私はとても驚いています…まさか男性の我が王に出会うことがあろうとは…」


やはり立香の引きの良さというのは別格だ。ガウェインだけではなくトリスタンまで味方にしているとは。また、このアルターエゴ・メルトリリスもとりあえず仲間であるらしい。


「BBのコピーされた存在ってのは聞いてる。こっちのブレストの方にも、とんでもない力を持ったアルターエゴがいて、そっちは敵性体なんだ、けど…」


突然、背後から女性の声が響いてきた。かなり距離は遠いはずだが、あの攻撃範囲を思えばまずい。


「しまった、追いつかれた…いや、転移したのか」


アーサーも焦ったようにしたため、悪い事態であることは立香とガウェインには分かったようだ。また、もともとブレストのアルターエゴを知るトリスタンも表情を険しくする。


「まずいわね、パッションリップが移動してきたわ。センチネルはルートがなくても移動できるから」


メルトリリス曰く、ブレストのアルターエゴはパッションリップというらしい。

そして、後方の通路についに、その姿を現した。
上半身の外見はBBやメルトリリスと同じ様子だが、顔には拘束具がされており、そして腕は金属のショベルカーのような巨大な金属でできている。
何よりも、どうしてもその豊満すぎる胸元に目が行った。メルトリリスと間を取ることをしなかったのだろうか。

立香も目を見開く。


「な、なんだあの胸は!?」

「おい立香」

「ええ、あれほどのものはブリテンにも例を見ません!自由に豊満にあればあるほど良いのは確かですが!」

「おいガウェイン」


こんな状況で、と呆れつつ、唯斗は急いで離脱の指示を出す。


「アーサー、頼む。ガウェインはマーブルを、トリスタンは立香を頼む。攻撃範囲が広すぎる、すぐに離脱するぞ」

「承知しました」


トリスタンは心得たように立香を抱き上げ、唯斗もアーサーに抱えられる。ガウェインはマーブルを姫抱きにして、一気に全員走り出した。
後方では一瞬にして、管制室へと通じる道が圧縮されて消失する。やはりとても勝ち目があるようには思えない。正攻法では勝てないだろう。

走りながら、メルトリリスは前方の道の先を指さす。


「あっちに行くとサイに出るわ。その先のドックには管制室とは別に情報化されていない空間、礼拝堂がある。情報化するには解析できない要素が多い場所だから」


職員のために作られた礼拝堂はメルトリリスの話では安全地帯ということらしい。どういうことかと思っていると、立香が思い出したように唯斗に説明する。


「そうだ、唯斗はBBの説明受けた?」

「いや、カルデアでBBの声聞いて以来、なにも」

「俺たち、あまり電脳空間に長居すると情報化されちゃうんだって。だから、情報化されていない安全地帯をベースに探索することになりそう」

「マジか、なんか体がだりいと思った」

「大丈夫かい、マスター」


唯斗を抱えるアーサーは心配そうにこちらを見下ろす。なぜか疲労を感じると思ったら、そういうことだったようだ。探索時間に制限があるというのは、第四特異点の魔霧に包まれたロンドンを彷彿とさせる。

なお、BBは立香にはイントロダクション的な説明をしてくれていたらしい。唯斗にはなかったのは、マーリンに邪魔をされた腹いせか、アーサーと最初から一緒にいられるからか。
とにもかくにも、あの破綻したAIにまともな感性を求めるのがお門違いであることは、もう十分に理解していた。


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