深海電脳楽土SE.RA.PH−13


話すべきことも話し終えたところで、背面の残り、そして恐らく真相に至るであろうコアの探索を次の行動として決めて、それまで休憩となった。
再び6時間の仮眠となり、場の空気も弛緩する。そこで、唯斗はガウェインに声をかけた。


「ガウェイン、ツラ貸せ」

「うっわ呼び出しじゃん…」


立香が憐れみの目をガウェインに向ける。ガウェインも観念したように立ち上がり、アーサーも伴って三人でいったん礼拝堂の二階、唯斗に宛てがわれた個室へと入る。

三人だけになったところで、ガウェインは即座に床に跪いた。
左手を床につき、右手を立てた右ひざに添えてこうべを垂れる。


「あなたのご指示に反した行動を取り、パッションリップの制止を試みたこと、深くお詫びいたします。弁明の余地はありません。あなたをお守りしたかった、という思いは私だけでなく他のサーヴァントにも通ずること、私の非をなかったことにするものではありません」

「ガウェイン卿、マスターの言葉の前に隙のない謝罪をすることは、マスターから話す機会を奪うことと同義だ。謝罪を押し付けて相手を黙らせる行為だ。アルトリアや円卓の騎士とは違う、マスターの性格を鑑みれば容易に分かるだろう」


すると、ガウェインの謝罪に対して、意外にもアーサーが先にそう返した。
事実、ガウェインの謝罪を聞いて、説教する機会をなくした唯斗は何を言おう、と戸惑っていた。
確かに、アーサーやアルトリア、円卓の騎士たちであれば、ガウェインが今しがたしたような方法でも躱せるだろうが、唯斗には無理だ。アーサーはそこを考えろと言っているのである。

ガウェインはハッとしたように顔を上げてから、眉を下げてさらに申し訳なさそうにする。


「…、確かに、異世界の我が王のおっしゃる通りでした。非礼に非礼を重ねるなど…申し訳ありませんマスター。この期に及んで、あなたに見限られたくないという保身に走ってしまったようです」


しゅんと項垂れるガウェインに、アーサーもさすがにとりなす方法に舵を切ったのか、唯斗の方を優しく見下ろす。


「マスター、ガウェイン卿が今言った通り、彼も君に嫌われたくなくて焦っていたんだ。まずは彼の無礼を許してあげて欲しい。その上で、先ほどの戦闘のことを言ってやればいい」

「……ガウェインは、これくらいのことで俺がお前を見限ると、そう思ったのか」


そんなに保身に走るほど信用がないのだろうか、と思って、つい先にそれを言ってしまった。思ったよりも自分の声が沈んでいて、情けないな、と内心で自嘲する。
ガウェインはそれを聞いて、焦ったように立ち上がった。

いきなり大柄な体が目の前に立ちふさがり驚く。


「そんな!そういうわけではありません!」

「っ、」


目を丸くしている唯斗を見て、ガウェインは咳払いをしてから、自身を落ち着かせるように呼吸をして言葉を続ける。


「…あなたを疑っているわけではないのです。本能、原始的な反射と言っていいでしょう。頭では、この程度でマスターが私の評価を変えることはないと分かっていても、感情が言うことを聞かないのです。私があなたを、心から慈しんでいるがために」


その感覚はなんとなく分かる。唯斗がサーヴァントたちに対してよく思っていたことだ。大丈夫だと分かっていても不安になってしまう。
ガウェインも同じだと聞いて、唯斗は安心して息をつく。同時に、先ほどの戦闘のことも言ってしまうことにした。


「…俺さ、別に命令違反で怒ってるわけじゃないんだ。咄嗟のことだってあるし、俺の指示に固執するより合理的な方法を選んでもらってもいい」

「そう、なのですか」


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