深海電脳楽土SE.RA.PH−16


長い髪をひらめかせて現れたのは、なんとBBだった。ここにきて敵かと体の内側がスッと冷える感覚になり、アーサーも目を見開いてすぐに戦闘態勢になろうとしたが、BBはそれをすべて制する。


「そこまでです。まぁ、咄嗟に結界を張って耐え凌いだことは評価してあげましょう。それに免じて、あなた方をここから離脱させます。私の利益になるからであって、決してあなたのためじゃないんだからね!なーんて虫唾が走るツンデレムーヴはBBちゃんのキャラじゃないんですが、事実そうなので仕方ないですね!さぁさぁ、都合の悪い強キャラはここでいったん退場です」


一息にそう喋り倒したBBにポカンとしていると、突然周りが光に包まれる。
同時に、一瞬の浮遊感と眩い光ののち、体が別の場所に着地した。

恐る恐る目を開けて周囲を見渡すと、そこは、なぜか学校の教室だった。

日本の学校のようで、並ぶ椅子と机、窓の外には夕焼けという、放課後の学校のような光景。いや、学校そのものだ。
そこには唯斗とアーサー、ガウェインしかいないが、依然としてガウェインは倒れ、アーサーは失った右腕から血を流し続けている。


『ちょっと処理があるのでBBちゃんは後でここに戻ってきてあげます!それまで精々、回復できる範囲で回復することです。それでは〜』


そんな校内放送がしてすぐにぶつりと放送が途切れる。本当にBBが、唯斗たちを礼拝堂からこの謎の空間に転移させてそれで放置に入ったのだと理解した。


「…くそ、何がどうなってんのか分からねぇけど…」


今はまず、二人の回復が最優先だ。
唯斗はアーサーの右肩に左手をかざして回復させつつ、ガウェインの頬を叩く。


「ガウェイン、聞こえるか、ガウェイン!」

「…ぅっ、マ、スター…!」

「ッ、マスター、僕はとりあえずいい、ガウェイン卿を…!」


アーサーはガウェインに集中するよう唯斗に指示する。確かに、アーサーはエクスカリバーによってしばらく保つ。
唯斗はいったんアーサーに治癒術式を展開するのをやめて、ガウェインのそばに移動する。
なんとか意識を取り戻したガウェインは、体に力が入らないのか、床に伏したままこちらをぼんやりと見上げる。


「ご、ぶじ、ですか…」

「っ、あぁ、ガウェインが庇ってくれたから…今、傷口を、」

「…いえ、もうじきに、消失しましょう…あなたも、わかっているはず」

「…ッ、」


そう、もうガウェインは現界を維持できない。完全に致命傷、いや、ここまで保っているのが不思議なほどだ。


「…もう、しわけ、ありません…約束、したばかり、ですのに……」


確かに、心まで守る、と先ほど約束してくれたばかりと言えばそうだ。しかし、こうして現界を維持してくれていることが、それを果たすためだと唯斗は理解している。


「…俺に、最後にちゃんと言葉を残すために、踏ん張って現界を維持してくれてんだろ。それで十分だ、ありがとう、ガウェイン」

「…ふ、お見通し、でしたか……我ら騎士が、血を流すのは、主君のためと、もうひとつ、理由があります…」

「理由…?」

「…愛する者のため、ですよ、唯斗」

「ッ!」


ガウェインはそう言って微笑む。かろうじて上がった左手で、唯斗の頬に付着したガウェインの血を拭う。


「…我が王と、同じ気持ち、ではない愛ですが…騎士の本懐にてここを去るのだと、知ってください」

「……あぁ、わかった」

「…では、ご武運を……」


その言葉を最後に、ガウェインは光に包まれて消失した。恐らくカルデアに戻っただろう。
愛する者、というのが、アーサーと同じ恋愛感情ではないとは言っていたが、いずれにせよ、仕える者はアーサー王で変わらないからこそ、愛する者として唯斗を守ったのだと言ってくれたのだ。


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