深海電脳楽土SE.RA.PH−20
BBがいなくなってから少しして、アーサーがもぞりと動いた。
目線を落とすと、アーサーは目を覚まして、膝の上で唯斗を見上げる。
「…、マスター…?」
「起きたか。調子は?」
「……うん、だいぶマシになったよ」
そう言ってアーサーはゆっくりと体を起こす。足にかかっていた体重がなくなったことで、一気に足が痺れるが、治癒術式によってすぐにそれも回復させた。
体を起こしたアーサーは、霊衣に戻っていなかった剥き出しの右腕に青い服の袖と防具を出現させる。
「何事もなかったかい?」
「BBと話した」
「…、なぜ起こしてくれなかったんだ」
「助けた相手を殺すほどあいつはイカれてない。合理的じゃないからな」
アーサーのため、ではなく必要がなかったから、という唯斗の言葉に、アーサーはため息をつきつつ納得していた。
「…少し不甲斐なくなるな」
「仕方ないだろ。相手はビーストなんだから」
「…、やはりそうか」
どうやらアーサーはあれがビーストだと分かっていたらしい。あの一瞬で、アーサーはそこまで理解したのだろう。
「マーブルに対して、なんであんな拒否反応示してのか不思議だったけど、無意識にビーストに反応してたんだな」
「恐らくね。あいつは巧妙に獣の臭いを隠していた。ガウェイン卿と僕を切りつけたあの一瞬、ようやくその片鱗を見せたが…あれはまだ完全体じゃない」
「あぁ。BBから、そのあたりの話を聞いたんだ」
唯斗はそこで、BBから聞いた話をアーサーにも共有した。
キアラの目的が地球を使った自慰である、というあたりは、アーサーもポカンとしていたが、遅れて「なるほど」と頷いた。
「ビーストIII、愛欲の獣。IIIはLとRに分かれるが、あれはRの方だろう」
「R指定…?」
「…、まぁ、それもあながち間違いではないけれど…僕が追っているビーストVI同様、対の概念となるナンバーがIIIなんだ」
愛欲の獣、まさにその名の通りの所業である。
そうやって情報共有をしながらアーサーを休ませ続けていた、そのときだった。
「死んだかと思ったーー!!!」
「いえ、死んでたでしょ、バッチリ跡形もなかったっしょ!?どうなってんのこれ!?」
「私は嬉しい…生きていれば勝ち組ですね……」
唐突に、静かな教室に賑やかな声が響くのと同時に、複数人が出現した。
アーサーはすぐに臨戦態勢に入り、唯斗も瞬時に立ち上がったが、教室の後ろに現れた人物たちにホッと息をつく。
そこにいたのは、タマモキャットやトリスタン、ロビンフッド、メルトリリス、そして立香と礼拝堂以来となる者たちだった。
もう一人、女子高生のような格好の女性の英霊もいる。恐らく、立香が言っていた鈴鹿御前だろう。
「立香!」
「えっ、唯斗!?アーサー王も!!良かった、無事だったんだね!!」
立香はぱっと顔を輝かせた。そのままこちらまで駆け寄ると、唯斗を抱き締める。普通に力が強い立香に思い切り抱き締められるのは苦しかったが、カルデアの観測もない状況では互いの無事を確かめられないため、確かにひどく安堵した。
立香の抱擁を受け止めていると、ロビンフッドが口を開く。
「どうなるかと思ったが、デタラメにはデタラメだもんな。助かったぜBB、あんたでも役に立つことがあるんだな?」
その視線の先にいたのは、BBだった。どうやらBBが立香たちを助け出したらしい。
「当たり前です。そしてロビンさんは対象外とすべきでしたと反省中です。ま、それはともかくとして…どうでしたかセンパイ、暑苦しい再会の喜びより先に、この認めるしかないBBちゃんの可愛さへのお礼の一つもないのでしょうか!」
「ありがとうBBちゃん、でもいったい何がどうなって…?」
「仕方ないですが、時間もあまりありませんのでスパーっと説明してあげましょう!」