人智統合真国シン−15


こちらの軍勢は、立香のサーヴァントとしてマシュと陳宮、そして陳宮に赤兎馬と呼ばれた馬、荊軻、ホームズ、ダ・ヴィンチ。唯斗はアーサーに指示を出して、コヤンスカヤも人間の兵士やオートマタを相手にしている。
ダ・ヴィンチたちはスタッフの保護に専念しているため、唯斗は一人召喚しておくことにした。


「ディルムッド!」

「ディルムッド、ここに」


呼び出せばすぐ隣に現れるディルムッド。ランサーであるため、蘭陵王はアーサーや荊軻たちに任せておくことにする。


「俺たちの傍でオートマタや兵士を薙ぎ払ってくれ」

「承知しました」


ディルムッドは2本の槍を構えると、すぐに周辺のオートマタを一気に破壊した。横方向の一振りで薙ぎ倒されたオートマタはバラバラになって地面に散らばる。
さらに、接近する兵士たちを吹き飛ばし、あっという間に包囲網を瓦解させた。

こちらが押している状況に、蘭陵王は突然令呪による強化を受けた。どうやら、姿は見えないがヒナコが後方支援をやっているらしい。
それに気づいたコヤンスカヤはニヤリとする。


「柄にも無く後方支援なんてやっているから、陣取る場所が丸わかり♡はいどーん!」


そう言った直後、突如として爆発音が響き、兵士たちの後方の建物が一部崩壊して粉塵が舞った。どうやらヒナコを爆破したらしい。
マシュと立香が息を飲むが、唯斗はむしろ、これで死んでなどいないとすら思った。


「おいコヤンスカヤ、火薬量が足りない!こんな爆発じゃ真祖は死なないぞ、聖堂教会だってこれで死ぬなら苦労しない!」

「ヤバ、マジですの!?」


コヤンスカヤは見立てが甘かったらしく、唯斗の言葉に慌てる。一方、ダ・ヴィンチとホームズは驚愕の声を上げた。


「なに?!真祖と言ったかねミスター!?」

「えっ!芥ヒナコって、吸血種の真祖ってこと!?」


この二人がここまで動揺することも珍しく、コヤンスカヤですら慌てていることから、立香とマシュは分からないながらも警戒心を強める。そういう危機意識の高さは長年の経験によるものだ。

そして、爆煙が晴れると、血を流したヒナコが立ち上がっていた。

さらに、蘭陵王がそちらに向かって走り出す。


「っ、蘭陵王、あいつ…!アーサー!蘭陵王を止めろ!」


アーサーはすぐに蘭陵王に向かい、マシュも続くが、蘭陵王の気迫は凄まじく、先ほどの令呪もあって二人を弾いて跳躍した。
そのままヒナコの隣に跪く。


「我が主よ、かくなる上はお覚悟を。どうか、この私を贄に!」

「い、や…それだけは……」

「お嫌でしょうとも。他者を喰らって生きる、それはあなたが嫌悪してやまなかった人間の行いそのもの。それでも今は、その汚辱に身をやつさねばならない。あなたは、再び彼を会えたのだから!」


どうやら蘭陵王は、ヒナコの正体を知っていたらしい。その上で彼女に付き従った。中国を中国たらしめた漢王朝の創設にあたって、劉邦に立ちはだかって歴史を前に進めた項羽を、その妻である虞美人を、蘭陵王はともに守ろうとしているのだ。
その信念、その覚悟、敵うわけがない。


「生きるのです、我が君よ。今度こそあの男と、項羽と共に生きるのです。今度こそ、互いの行く末を見届けるのです!」

「…う、うぅ…ッ!」


ヒナコは、一筋の涙を流してから、蘭陵王の肩に噛みついた。途端に鮮血が夜空に舞い、大量の血液が地面に流れ出る。同時に、莫大な魔力が解き放たれた。
嫌だと言ったのは、きっと、人間のような行いだからではない。蘭陵王にそのような終わりを与えることを、彼女は本当は嫌がったのだ。


「唯斗、芥ヒナコ、って…」


燃えさかる焔を伴って立ち上がる姿に、立香は声を震わせる。唯斗は、なんとかそれに応えた。


「…あれは星の内海から現れた精霊、吸血種の中でもより神仙に近しい種…真祖だ。実質、不老不死の存在で、吸血によって生き長らえる。あの個体の真名は、虞美人。古代から生き続け、項羽に出会い、妻となった人だ」

「そ、そんな、本当に虞美人…」


蘭陵王は消失し、その代わり、長い髪が下ろされた女性が現れる。芥ヒナコという人間の皮をうち捨てて、本来の姿となったのだ。


「私のこの姿を暴いた以上は、もはや寛恕の余地はない!怨敵、カルデア!我が呪詛にて滅するがいい!」


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