人智統合真国シン−24


ギルガメッシュは唯斗を抱き上げると、アキレウスの戦車を飛び降りた。唯斗の足下に取り付けた浮遊礼装が2人を支えている。さすがにアキレウスの宝具による攻撃は人の体ではついていけないため、いったん降りた形だ。
ギルガメッシュの腕に抱かれながら空中に飛び出ると、眼下に5000メートル下の広大な大陸が見えて竦むようだった。

しかし今はそんなことを気にしている場合ではない。

立香と視線を合わせ、そして、声を揃えた。


「「宝具解放!!」」


その指示を受けて、全員が一斉に宝具攻撃を行った。


「地飛爽霊 火尖槍!!」

我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)!!」

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

疾風怒涛の不死戦車 (トロイアス・トラゴイーディア)!!」

王の財宝 (ゲート・オブ・バビロン)


燃えさかる炎の車輪となって落下する哪吒、赤黒い光線を剣から放つモードレッド、聖なる輝きの光線を同じく放つアーサー、戦車で流星のように駆けるアキレウス、そして無数のゲートから魔杖の破壊光線を放つギルガメッシュ。
集中砲火によって、アーサーとモードレッドが放った光線が空想樹上部を焼き払い崩壊させ、ギルガメッシュの魔杖の光線によって切断された部分から倒れると、それが哪吒の打撃によって下方へと押しつぶされる。

それによって、空想樹は上部から崩れ落ちるように消失し始めた。


「魔力反応減衰、伐採成功です!」


マシュの声を聞くまでもなく、空想樹は内側に崩れ落ちていく。ギルガメッシュの腕に抱きかかえられながらそれを眺めていると、アキレウスが駆けてきた。


「ちと呆気ないが、これで異聞帯攻略完了だな、マスター」

「あぁ、ありがとな。ギルガメッシュも助かった」

「この程度で疲れる我ではないわ」


そう言ってギルガメッシュはアキレウスの戦車に唯斗を乗せると消失した。

そのままアキレウスは降下を始めるが、浮遊して降りてきたアーサーの横を素通りする。


「…え、アキレウス?」

「んー?」


しらばっくれたような声に、完全に確信犯だと理解した。
しかしアーサーもすんなりと戦車に降りて唯斗を抱き締めながら着地すると呆れたように口を開く。


「嫉妬は見苦しいよ」

「よーし振り落としてやるからマスターはこっち来い」

「あーもういいから早く降りるぞ」


二人を諫めてから数分、戦車は崩壊した阿房宮に戻ってくる。ボーダーのところで着陸すると、アキレウスは戦車とともに退去する。
少し遅れて立香たちも無事に着地した。


「空想樹伐採成功だ、お疲れ!」


ダ・ヴィンチはそう言って華やかな笑顔で出迎えたが、一方、空想樹の方からゆらりとゆらめく影が現れた。あれは生命力を空想樹に奪われ怨霊と化した虞美人だ。
見る影もない亡霊のような姿に、始皇帝は眉をひそめた。敬意を示すこともあった真祖の姿が見るに堪えないのだろう。


「……あぁ…こうなると、あの方は分かって…怨念と成り果てるこの末路を…あぁ…私は一度ならず二度までも、あの方を嘆かせた…」

「なんだ末期の悔悟が何かと思えば。項羽の嘆きを止めることなど造作もないことではないか。あれはそなたの行く末を儚んだ。なれば、あれの嘆かぬような結末をそなた自身が選べばいい」

「な…に……」

「英霊になれ、仙女よ。真祖ならば抑止力に鞍替えすることも可能であろう」


なんと、始皇帝はとんでもないことを提案した。人類を憎む彼女に、人類を守る英霊になれと言ったのだ。
しかし、始皇帝が語った理由は道理に適っていた。英霊として人理を守るのならば、それは項羽が嘆く結果にだけはならない在り方でいられる。さらに、暴虐の楚王として記録された項羽の「真実」を座が知れば、英霊となって再会することが叶うかもしれないというものだった。

実は項羽は、歴史に刻まれた暴虐さを持っていた人物ではない。機械であった項羽は、劉邦が国を平定できるよう、自ら国を平定して抑圧し、反乱させ、漢成立を遠回しに手助けしたというのだ。


「まぁ即断を要することでもない、しばらくは妄念として彷徨い、じっくりと検討するのもよかろう」


その言葉を聞いて、怨霊と化した虞美人は消失した。

こうしてすべての戦いは終了し、嵐の壁も消えた。始皇帝は早速、嵐の向こうにあった元の領土を確かめると言って踵を返す。


「大義であったなカルデア。さあ征け、その肩に背負うものの重みを忘れるな」


そう言って阿房宮に消えた始皇帝を見送り、陳宮と赤兎馬も消失してから、カルデアの英霊である哪吒とモードレッドを連れてボーダーに戻る。
そこにはコヤンスカヤの置き土産として解毒薬があり、無事に立香の解毒も済んだ。

これにて、中国異聞帯すべての目標を完了し、ボーダーはシオンの助けで再び彷徨海のカルデアベースに帰還することになる。

剪定した世界はこれで3つ目。しかし、唯斗だけでなく立香も、その事実との向き合い方において、始皇帝が導いてくれたことが前を向かせてくれていた。


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