水着剣豪七色勝負−3
「おや、マスターに異世界の我が王。ようこそカジノ・キャメロットへ。VIPルームへお連れします」
カジノに入ると、早速ガウェインが微笑みながら優雅に一礼した。しかし水着である。肩にタオルを羽織っただけの屈強な体がシャンデリアに照らされていた。
トリスタン、ランスロットも同様に水着姿である。
「ディーラーが水着って…」
「今回は特別な戦いです。支配人たる私が直々にディーラーをやりましょう。もちろん、ポーカーでいいですね?」
「分かった」
唯斗は円卓たちの格好に引いていたが、アーサーは動じることなくVIPルームのテーブルにつく。アルトリアが直接ディーラーをやるそうで、この部屋には誰もいないこともあってか、このテーブルだけがスポットライトで照らされている。
そのアルトリアに促されて、唯斗はアーサーの隣に座った。
「つか、金とか持ってないけど」
「ガウェイン卿、チップを」
「はっ」
そもそも唯斗たちは金など持っていない。チップと換金するにしても元手がなければ賭けにならない。
そこに、ガウェインが大量のチップを持ってきた。
「通貨は好きなものを選ぶといい。どうせ使う場所もありません、あくまでこれは勝負のための道具に過ぎないのですから」
アルトリアはあくまで、勝敗だけに拘っているようで、お金のことは気にしていない。
色とりどりのチップがあるが、その単位は、4色のみ慣習で決まっている。
白は1、赤は15、緑は25、黒は100と決められているため、白チップのレートが他の色の金額を決定する。これ以外の色は、国や地域、カジノによって異なるが、金色のものは任意の金額を書き込むためのものであるのが通例だ。
「え、マジでやんのか。さすがに俺ルール知らないし…てかアーサーは知ってんのか?」
「ルールは知っているけれど、やるのは初めてだよ。しかしそれは勝敗の言い訳にすることはない。やるからには全力だ」
「僭越ながら、私がルール面でのサポートをいたしましょう」
ガウェインは二人の背後に立ち、ルールを確認しながら進めてくれることになった。アルトリアもフェアな戦いとするべく、「では初戦はチュートリアルだな」と応じてくれた。
「まずはアンティをポットに移します。アンティは参加費用のことです。ポットはチップを置く場所を指します」
アンティはゲームに参加するための参加費であり、白チップ1枚、というような形で決められていることが多い。ここでも白チップ1枚でアンティとするらしい。
便宜的に、唯斗は白チップを1万円と考えることにした。そうでないと勝ち負けが分からない。
こう考えれば、赤チップは15万円、緑チップは25万円、黒チップは100万円となる。
唯斗とアーサーはそれぞれチップをポットに移す。続いて、アルトリアが指示を出した。
「では先にカードを配ります。今回はポピュラーなクローズドポーカー。カードを隠したまま進行するものです」
アルトリアはカードを5枚、アーサーと唯斗に配る。さすがにこの辺りからは唯斗でもルールを知っていた。
「このあと、特定の役になるのを期待してカードを交換するんだよな」
「その通りです。カードを交換する前後に2回、ベッティング・インターバルと言って、チップを賭ける、すなわちベットするタイミングがありますが、このカジノでは手軽さも重視しているため、交換後1回のみベットします」
「なるほど」
特にそろっているわけではないため、唯斗はカードを適当に交換する。結果、同じ数字のカードが2枚揃い、ワンペアとなった。
アーサーも交換を終えている。
「それではベッティング・インターバルに移る。異世界の私から」
「最初のプレイヤーは、ベットかフォールドを選びます。ベットは賭けること、フォールドはリタイアすることです。最初のベットはオープニング・ベットと言います」
「では、チュートリアルならベットとしておこう」
アーサーはとりあえず赤チップ1枚をポットに出す。現時点で掛け金は、アンティの白チップ2枚と赤チップ1枚のため、17万円と計算できる。
「ではお次はマスターです。オープニング・ベット直後の最初の1周は、レイズ、コール、フォールドのいずれかが行われます。レイズとコールはともにベットですが、レイズは前の者より大きな額を賭けること、コールは同額を賭けることです。下回る額を賭けることはできません。ベットできない場合はフォールドとなります」
「じゃあ、赤チップ2枚とかにしておくか」
「レイズですね。これで1周です。2周目からは、先ほどの選択肢に加えてチェックという選択肢が加わります。チェックは自身の掛け金を確定することですが、その掛け金が前の参加者の掛け金以上でなければできません。それ以上のベットは行いません。すべての参加者がチェックしてようやくベッティング・インターバルは終了します」
つまり、アーサーは赤チップを1枚しか出しておらず、拠出額が唯斗の赤チップ2枚に及んでいないため、チェックできない。ここで赤チップ2枚以上を出して初めて、次のターン以降にチェックができるようになる。
「…うわ、これ青天井だとすげぇ値段吊り上がるじゃん」
「当店ではノーリミットですよ、マスター」
「えげつな…」
これがギャンブルか、と末恐ろしくなる。
その後、アーサーはコール、つまり赤チップ2枚を出した。これで唯斗は自身の掛け金が前のプレイヤーと同額以上となるため、チェックできる。
とりあえずチュートリアルのため、唯斗はそのままチェックとし、アーサーも同様にチェックとして、オープンとなる。
カードオープンによって、唯斗はワンペア、アーサーは役なしという結果になったことから、77万円が唯斗のものとなる。アンティと赤チップ2枚が掛け金であるため、差し引き46万円が儲けだ。
「…なるほどな、何戦かやる場合には、あえてフォールドで損失を抑えるのか」
「さすがマスター、その通りです。カードを公開して進めるスタッドポーカーと比べると心理戦の色が薄いのがクローズドポーカーの特徴ですから、どちらかと言えば度胸試しのようなところがありますね。あくまでポーカーとは知的スポーツ、社交場です。カジノ側も儲けられないゲームですので、どうか気兼ねなく楽しんでください」