水着剣豪七色勝負−5
「ではガウェイン卿のハートのジャック・ハイ・フラッシュをもって勝者とする」
フラッシュは同じ柄で揃った5枚のことであり、その中で一番大きな数字のカードをとって〜ハイ・フラッシュと呼ぶらしい。
こちらの負けで終わってしまったわけだが、とりあえずこれで遊びは終わりだ。遊ぶにしても任務を終えてから、唯斗はそう考えて席を立とうとした。
「雨宮唯斗、どこへ行くのです?」
「どこって…オーダーに戻りに…」
「負けた分の返済はどうする?」
「………は?」
さも当然、というように言ったアルトリアに、唯斗もアーサーも動きを止めた。いったい何を言っているのか。
「…え、いや、だってただ勝敗をつけるだけって…」
「敗北した際の返済義務を免除するとは一言も言っていませんが?」
「な…っ、お前それ詐欺だろ!」
「あなたたちの確認漏れでしょう。確かめるべきことを怠り、まんまとレイズした自分たちを恨むといい」
「うぐ…」
それを言われると何も言い返せない。アーサーも負けた自覚はあるのか、反論はしなかった。
「…でも、マジで金なんて持ってねぇし…」
「ならば体で払ってもらうまで。ベディヴィエール卿」
「は、ここに」
アルトリアが手を叩くと、すぐにベディヴィエールが現れた。手にはウサ耳がある。
「そう睨むな私よ。何もいかがわしいことをしろとは言いません。ただ、このウサ耳をつけたウェイター姿でカジノ内での給仕や雑務をしてもらうだけです」
「どう見てもいかがわしいだろう」
「それではまるで私がいかがわしいかのようですね」
大変いかがわしいです。
そう思いつつも、さすがに本人を前にしてそれを口にするのは憚られる。押し黙ったところで、了承とみなし、アルトリアはウサ耳と白シャツ、黒いズボンと黒いベストを渡してくる。
しかし、それは唯斗一人分だった。
「…俺だけ?」
「ええ。さすがに異世界の私がいると、客がゲームどころではなくなりますからね。邪魔なので異世界の私は立香たちのフォローをしてやるといいでしょう。これで任務も心配ありません」
一応そこの配慮はあるかのように言っているが、どう考えても営業妨害となる美貌が邪魔だと言っていることがミソだ。
しかし離れて行動することになると気づいたアーサーはさすがに異議を申し立てる。
「私とマスターを引き離すというのかい」
「そう言っています。白チップを1万円…マスターたちの国の最高額単位の通貨で換算すれば22億1183万円の負債ですよ?それとも、たかがゲームと敗北を敗北と認めないと?それで騎士王とは名乗れまい」
「ぐ…っ、」
ワンペアのくせに10億賭けた自覚がある分、アーサーもそれ以上は反論ができない。よくもあの手札で10億など出したものだ。
ノーペアでレイズした自分のことは棚に上げながらも、唯斗は諦めてアーサーを諭す。
「…仕方ない、アーサー。立香たちを頼む。俺はここで労働に勤しむからさ」
「……、ガウェイン卿。私がそばにいられない以上、マスターの貞操を守れるのは卿だけだ。不埒な輩に指一本でも触れさせないように」
「もちろん心得ています。我が王よ、せめてマスターが我々の傍になるべくいられるような人事配置を賜りたく」
「いいだろう。なに、第一の業務は私の秘書です。マスターから、大変優秀な人物だと聞いています。客寄せ要員として卿らと絡ませつつ、基本業務は私の雑用をしてもらうとしましょう」
そうして、22億の借金を背負った唯斗はカジノ・キャメロットで身を売ることになり、アルトリアの秘書としてウサ耳執事という謎の姿で働くことで話がまとまってしまったのだった。