水着剣豪七色勝負−6


秘書と言っても、そもそもアルトリアがどういう経緯でカジノなどやっているのかも分からない。せっかくなら情報収集くらいはしておこうと、唯斗はとりあえず着替えてからアルトリアのところへ向かった。


「……ほう、意外とすんなりと着るのですね。抵抗するかと思いましたが」


支配人室に入ると、高級そうなデスクに座る水着獅子王の姿があった。
対してこちらは、シャツに黒いスラックスとベストに蝶ネクタイという格好自体は普通だが、頭に唯斗の髪の色に合わせた茶色いウサ耳がついている。
まったく抵抗がなかったと言えば嘘になる。しかし、このアルトリアのとんでもない格好や水着姿の円卓の騎士を見れば、些細なものに見えた。特にランスロットあたりと比べれば。


「あー…まぁ、立香は新宿で女装してるし。それに比べれば」


ただそれを言うのはさすがに問題がある気がしたため、唯斗は一応上司の顔を立てるためにも、別の理由をあげた。これも嘘ではない。女装に比べれば遥かにマシである。


「そうですか。本来ならバニーガールコスプレをさせるのも一興と考えていましたが…さすがに店内でエクスカリバーを抜刀されるのは困る」

「懸命な判断だな。それで?具体的になんの仕事すりゃいいんだ」

「日中は秘書です。私のスケジュール管理のほか、カジノの経理・総務一般、人理管理、仕入れや各種調達、さらには他の水着剣豪の情報も集めてもらいたい」

「……水着剣豪って、どういうものだ?」


先ほどもちらりと出てきたものだったが、改めて聞くと、アルトリアはさすがにそれくらいは話しておく気になったようだ。


「この特異点は、聖杯によってカジノの支配人に力が与えられています。サーヴァントが支配するカジノは全部で5つ、一つは規模で最大となるここ、カジノ・キャメロットです」


アルトリアの話では、まず5人の水着剣豪が支配人として5つのカジノを統治している。
刑部姫のHIMEJIサバイバルカジノ、ニトクリスのカジノ・ファラオ、メルトリリスの水天宮インヴィディア・セルペンス、ジャンヌ・ダルクのシルク・ドゥ・ルカン、そしてアルトリアのカジノ・キャメロットである。
そしてアルトリアに対して反旗を翻すことを画策しているというカジノ・DE・楽市楽座というものもあるらしい。これは信長のものと見て間違いない。

5人のカジノ支配人と2人の野良水着剣豪を加えて7人をすべて倒せば、真の水着剣豪としてこの特異点を修復できるという。

何を言っているんだと正直思わないでもないが、そういうことならそれに応じるほかない。


「…まぁ、とりあえず理解した。じゃあまずは仕事だ。何もしないってのはさすがにな。何から手をつければいい」

「話が早いのは良いことです。ではまず経理処理と仕入れ関係から。このフォルダにあります」


そう言ってアルトリアは分厚いファイルをいくつかテーブルの上にドンと置いた。その時点で唯斗は顔が引き攣る。


「…いや、手書き?」

「当然でしょう、私は5世紀の王ですよ」

「……ベディヴィエールは?」

「ベディヴィエール卿は主に私の給仕役です」

「なんでそこは史実通りなんだ…!」


唯斗はまず最初にアナログデータを電子化するという、普通にしんどい仕事に取りかかることになった。

しかもやっていくうちに、アルトリアが自分でやっていた部分の杜撰さに呆れてしまう。

どうせアグラヴェインにすべて任せきりだったのだろう。王とはそういうもので構わないが、支配人としては問題だ。
無駄を省きつつ、貸借対照表が合わない部分をすべて揃え、経理処理の原本をファイリングし、仕入れ先を見直し、一通りカジノの収支を揃えたところで、あっという間に翌日になっていた。

この労働が特異点ごと消えるという事実には気づかないふりをした方が、精神衛生上良さそうだ。


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