節目と自覚−7


「…悪い、あんま気分いいもんじゃないな」

「まさか。すべて僕が守れなかった至らなさによるものだ。君が謝るようなことではないよ。それに…」


アーサーはそこで一度言葉を止めると、左肩の傷跡に軽くキスを落とす。性的なものではないそれに目を瞬かせると、アーサーは柔らかく微笑んだ。


「…君が生き残ってくれたこと、痛みを耐えてここにいること、恐怖を圧して僕と共に歩いてくれていること。そうしたことを感じられて嬉しい」

「……俺がどれだけ傷だらけになっても、こうして触れてくれるか?」

「っ、当たり前だろう。見くびられては困る。僕は、男女どちらであっても体そのものに性的な思いは抱かない。君の肌だから、美しく思える。触れたくなる。唯斗だからこうしているんだよ」


アーサーはそう言うと、唯斗の唇にキスを施す。触れるだけのキスは、感情を伝えるためのもの。
すぐ間近に迫った翡翠の瞳は、雄弁にその愛を伝えてくれるが、アーサーはきちんと言葉にしてくれる。


「それに、これ以上、君が傷を負わないように戦うとも。彷徨海に新しいカルデアを築けたおかげで僕も万全だ、ロシアで君に叱咤されたようなことにはならない」

「…よかった。や、傷を負ってもいいとは思わないし、普通に痛いのは嫌だけど。鏡でこの傷跡見る度に、ほんの少しだけ不安だった。もちろん、アーサーがこんなこと気にしないの分かってたけどさ」

「どうしても心がそう感じてしまうのは無理もない。ふふ、でもこの黒い礼装、君の肌をより美しく見せるね。なんというか…暴きたくなる」


どうしようもない些細な不安を、アーサーは否定しなかった。その代わり、つ、と腹筋を撫でてくる。そこから腰をなぞり、改めて性的な触れ方をされることで、再び熱がぶり返す。
そのままアーサーは唯斗の腰をおもむろに鷲づかみにした。


「暴いて、触れて、感じさせて…君の魔力がすべて僕の魔力に置き換わってしまうというくらいに、君の中を僕だけで満たしたくなってしまうな」

「ッ、そ、んなん、おまえ、いつもだろ…!」

「ははは、その通りだ。まあでも安心してくれ、今日は久しぶりだからね。体に前よりも負担がかかってしまうから、1回だけで済ませよう。うん、だから決して煽らないこと。いいね?」

「……勝手に煽られてんのアーサーじゃん」

「おや、早速かい?悪い子だ」


ニヤリとアーサーにしては珍しい笑い方をするなり、その手が性急にズボンの中に差し込まれた。いつの間にかベルトを寛げられていたようで、すんなりと侵入を許す。
直接、固くなった自身を撫でられると、その刺激が以前よりもずっと激しく感じられた。立香の言うとおり、ボーダーを含め自分で処理する機会もなかったため、あまりに刺激に対して脆弱になっていた。


「ぅあッ、ちょ、やば、まって、っ、」

「ん?」


すっとぼけたような声で返事をしてから、アーサーはさらに掴んだものを扱き始める。あっという間に昂ぶるのを感じて、慌てて唯斗は右手に座標を合わせて転移術式を起動する。


「っ、ヴィアン…!」


左手の刻印が起動するのと同時に、右手に引き出しの中からダ・ヴィンチ印のローションボトルが出現する。それをアーサーに突き出した。


「唯斗…、」

「ひ、さしぶり、だから…アーサーので、イきたい…」

「ッ、」


アーサーが奥歯を噛みしめるギリッという音がここまで聞こえてきた。
フーッと長い息を吐いてから、アーサーはボトルを受け取って、そして噛みつくようなキスをしかけてきた。
強引に唇を割られ、舌が咥内で暴れるように唯斗の舌を絡め取る。


「んっ、ふ、ぅっ、」


キスの合間にズボンも下着も脱がされて、一糸まとわぬ姿となった下半身に、ローションに濡れたアーサーの手が触れる。
そこでようやく口を離されて、ギラリと光る瞳と目が合った。


「僕の鋼の理性に感謝することだ。どれだけ煽られても、今日は一度だけ。でも次は覚悟しておくように」

「え…」


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