水着剣豪七色勝負−7
翌日、朝から唯斗はカジノの賭博フロアに呼び出されていた。
なんでも、このカジノは珍しく昼間しかオープンしないらしく、夜間は完全に営業していないそうだ。
「今日はウェイター役です。お客様にお飲み物をお出しするように。あとついでに、アロハ三騎士にもあなたを『うまく使え』と申しつけています。まぁ、そのあたりは彼らがうまくやるでしょう」
「はぁ…」
アルトリアはそれだけ言うと、支配人室に戻っていった。唯斗は、すでに開店して多くの客が入っている賭博フロアを見渡して、そのロイヤルさに辟易とする。
集まる客層もまさに金持ちといった感じで、落ち着いた店内はまるで高級レストランのようでもあった。
ポーカーは軽くカーブする階段を上がった吹き抜けの2階、1階はルーレットやトランプカードなどのテーブルゲームが集まっている。
そして1階には、アロハ三騎士と呼ばれたガウェイン、ランスロット、トリスタンがいた。ガウェインとランスロットは主にディーラーをしており、トリスタンはいつも通り琴を奏でている。
バイト経験すらない唯斗だが、今回のウェイターは、客から直接注文を取るようなものではない。それはディーラーの仕事であり、ディーラーから指示されたものをバーから持って行くというスタイルだ。
ちなみに、バーにはモリアーティがいた。どうもアルトリアに敗れてバーテンダーをさせられているらしい。
「唯斗、こちらへ」
すると、ブラックジャックをやっていたガウェインに早速呼ばれた。女性客たちがうっとりとガウェインを見つめている。正直近づきたくないが、呼ばれたからにはそちらへ向かった。
「シャンパンを5名様分、頼みます」
「…、かしこまりました」
とりあえず言葉遣いくらいは整えられる。ウェイターっぽく応じると、突然、ガウェインは微笑んで唯斗の腰を抱き寄せた。
ガウェインの屈強な体に抱き寄せられ、耳元にその精悍な顔立ちが迫る。
「申し訳ありませんマスター。これも我らが王のご指示、いっときの不敬をお許しください」
小声でそう囁く。一応、ガウェインは気を遣ってくれているが、何も客の目の前でこんなことをする必要はないだろう。放っておかれた客たちが気になってちらりと見遣るが、なぜか女性客たちはこちらを凝視していた。
その視線が怖くてすぐに目を逸らし、「別にいい」とだけ小声で返してから、唯斗はバーカウンターへと向かった。
モリアーティに注文を伝えると、すぐにモリアーティはフルートグラスに黄金の酒を注いでいく。
「それにしても、客寄せパンダ役とは獅子王も考えたものだネ」
「…客寄せパンダ役?」
「そうとも。アロハ騎士と不必要に接触させることで、購買力の高い女性客を集める魂胆だろう」
「なんだそれ…」
まったく意味が分からず、本気で首をかしげると、モリアーティは苦笑する。
「いつの世も、男性同士の絡みを見て胸を高鳴らせる貴婦人はいるということサ」
改めて説明されてもいまいちよく分からなかったが、アルトリアがガウェインたちに出した指示とはそういうものであったようだ。要は、ルルハワで異常をきたした刑部姫のようなものだろう。
トレーに渡されたグラスを並べて、唯斗はガウェインのテーブルへと戻る。
客の背後から、「失礼いたします」と言いつつグラスを配置していく。すると、女性客の一人が興味津々に唯斗に話しかけてきた。
「唯斗さん、というのね。初めて見たウェイターだけれど…ええ、屈強な戦士でこそないとはいえ、とても麗しいお顔をしているわ。本当にただのウェイターさんなのかしら?」
「…?」
ディーラーのガウェインのとんでもない顔面宝具がすぐ近くにあるのに麗しい、などと言われても、ウェイター相手に世辞を言ってどうするんだ、としか思えない。
見かねたガウェインは唯斗を手招きする。
「こちらへ、唯斗」
「?はい」