水着剣豪七色勝負−8
ガウェインのそばに寄ると、今度は肩を抱き寄せられる。太い腕に抱かれ、唯斗は次はなんだとその顔を見上げる。
「さすがのご慧眼です、レディ。こちらは社会勉強中のセレブリティ、私がお仕えする方のお一人です。しかし今はウェイター、私も心を鬼にして指示を出さなければなりませんし、皆様のために身を粉にする者です」
「まぁ…そうでしたのね、ガウェイン様。あなたがお仕えするほどです、とても高貴な方なのでしょう」
「それにしてもその…とても大切に思われているのですね?」
ぽっと顔を赤らめて尋ねたドレスの女性に、ガウェインは花が咲くような、本物の笑みを浮かべた。これまでのよそ行きのものではない、心からの笑顔だ。
「…はい。命に代えてもお守りしたい方であり、そして、そんな私に、命に代えず生きて隣にいろと言ってくださるような、そんな方です」
「アッ…私これ死にましたわ……」
「私も……」
還る座のないはずの女性客が数人、退去の光に包まれて消失した。特異点だからだろうが、唯斗はそれを見てドン引きする。
「……いや何してんだアホ」
「少しやり過ぎましたね…」
だめだこの特異点早く修復しないと。そう決意を新たにしていると、今度はアルトリアがやってくる。
「…何をしているガウェイン卿」
「水着獅子王…!申し訳ありません、私の不徳の致すところ」
「…まぁいい。唯斗、仕事です。出迎えに行きますよ」
「え、分かった」
急な話だが、唯斗はアルトリアに連れられ、建物を出て正面玄関からロータリーに出る。
きらびやかな噴水が至るところに太陽の光を浴びて煌めく外に出ると、見慣れた数名の姿があった。
立香とマシュ、ジークフリート、そして水着姿の北斎と武蔵、アーサーだ。
ジークフリートはなぜか胸元の開いたシャツに眼鏡という出で立ちだった。北斎も水着とは聞いたが、まさかの四本流の剣士とは。
「あれ、唯斗!?ってアーサー、ひょっとして唯斗がいるのって…」
「…あぁ、カジノ・キャメロットだよ、藤丸君」
立香はアルトリアの後ろに控える唯斗に驚きの声を上げた。それも当然だ。
すると、立香もマシュも唯斗の頭上に目を向ける。
「…ていうか唯斗…ぷふっ…それ…」
「とてもお似合いです、かわいらしいですよ」
「……あっ」
そういえば、まだウサ耳をつけたままだった。唯斗はすっかり慣れてしまった頭のウサ耳を外そうとしたが、アルトリアに睨まれる。
「この敷地で許可なくそれを外すことは許しません」
「なんでアルトリア・ルーラーのウサ耳執事やってるの?」
それを見ていた立香は至極真っ当な質問をしてくる。アーサーから説明してないようで、アーサーは視線をそらした。
「…どっかの騎士王がな、ワンペアで10億賭けやがってな…俺は22億の借金のカタとして、ガウェインたちに体を……」
「……は?なんて?」
それに冷ややかな声を出したのはアーサーだった。言い方を間違えた。まずい、と唯斗は言い換える。
「いや、公衆の面前でちょっと体を密着させて、」
「公衆の面前で!?体を!?!?」
「おうおう、バニー執事のことはいいからヨォ!水着獅子王?とやら、この俺と勝負しナ!」
説明したかったが、アーサーが卒倒しそうになったところで北斎が話をぶった切ってアルトリアに喧嘩をふっかけてしまったため、それ以上の説明はできなくなってしまった。
武蔵からもなんだか性的な目で見られている気がするが、アーサーの視線に比べればマシだ。
いったい何をさせられているんだ、という疑念の目線は刺すようで、唯斗はそっとあらぬ方向に目を向けた。
その後、北斎と武蔵で一騎打ちの勝負が行われ、これより北斎による水着剣豪七色勝負なる戦いが始まることになった。立香はマスターとしてそれを支援するが、生憎と唯斗は借金返済までアルトリアの元で働かなければならない。
アーサーには立香のサポートをお願いしているが、これはなかなか良くない流れなのではないか、と今になって不安が増してきた唯斗だった。